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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第二十八話

第二十八話


「こほっ・・・みんな大丈夫!?」


爆風に巻き込まれたものの、なんとか大きな傷を負うことなく難を逃れた晴れの日だが爆音で耳がやられ、一時的に音が聞こえにくくなっている

しかし風の日の言わんとすることは理解できる。手でOKサインを作り無事を示す


「俺は大丈夫です・・・それより、霙たちが心配・・・」


「みんなー!!無事―!?」


なんとも言えないジャストタイミングで霙が変革者達全員を引き連れて無傷で現れた

爆風からどうやって逃げたかまでは分からないが大方盾か何かを作ったのだろう


「無事だったみたいでよかった・・・」


風の日がほっと胸を撫で下ろす

だが、状況が飲み込めない霙の日は全く落ち着く素振りがない


「何があったの!?突然苦しくなるし爆発するし・・・」


先の殺気を思い出し自分の首を摩る霙の日

質問を受けた風の日は重そうに口をゆっくりと開き絞り出すかのように返答を口にする


「・・・白雨さん、よ」


「っ!?」


どうやら霙の日も面識があるようだ

一瞬幼く元気な活気を宿した瞳が恐怖で満たされる

ここで晴れの日もようやく聴力が戻り始めた


「その・・・さっきの女の人って・・・」


二人の会話に割って入ろうとした晴れの日だが、霙の日がそれをさせなかった。いや、正しくはそんな暇はないと叫んだのだ


「新人くん!!大変だよ!雷火ちゃんが・・・っ」


「え・・・?」


突然の呼名に思わず身が凍る

雷火の日に、何かあったのだ


「撫子ちゃんの話だと、術者が死んじゃってることで呪いが暴走し始めて、もう一刻の猶予もないみたいなの!!」


「そんなっ・・・!?」


絶望でしかない

折角任務成功したのに、ここから天候荘にまで帰ろうとなるととても間に合う距離ではないのだ

不幸にもこの場にはワープの類が使えるものも居ない

さらに、雷の日が言っていた迎えもまだくる様子はないのだ


「落ち着け・・・晴れ」


爆発で足を少し怪我した嵐の日が雪の日に肩を借りて立ち上がる


「俺の力なら解呪できる奴とお前を天候荘に連れてってやれる」


「本当!?」


「あぁ・・・だがもう貧血までの時間がない。急ぐぞ」


嵐の日の制約である流血。その代償はやはり大きいのだ

流れ続ける血は無限なわけがない

さらに日頃、お世辞にも健康的とは言えない体調管理をしている嵐の日は案外すぐに出血多量で貧血を起こしてしまうのだ


「兄ちゃん、気を付けて」


「おう」


双子の間に長い言葉はいらない

一言言葉を交わし、雪の日が嵐の日から離れる


「解呪能力持っている子はっ?」


居てもたってもいられない晴れの日が少し苛立って叫ぶ。だが案の定変革者達の子供たちがおびえてしまい、誰も名乗り出てこない


「落ち着きなさいナ・・・さて、解呪の力もってる子はどーこっかナ?」


敬礼のようなポーズであたりをぐるりと見渡す雪の日

子供に恐怖心を与えないようにだ。その甲斐あって今度は一人の子供が手を挙げた


「僕・・・できるよ・・・?」


「オ!ボクができるのですカ!じゃぁお願いがありマス!お友達がね、呪われちゃったノ。助けられるかナ?」


子供の扱いに慣れているのかすっかり心を開かせた雪の日

雷火の日救出のため説得をしてくれる


「いーよ!僕がんばる!」


了承は得られた

嵐の日に目くばせで合図すると、嵐の日はコクリと小さく頷き、自身とその子供と晴れの日の体を宙に浮かせ始めた


「おわっと・・・」


三回目なので少しは耐性がある晴れの日だが、子供はそうもいかないはず

心配になった晴れの日は子供に声をかけようと口を開く・・・が


「すっごーい!飛んでる!飛んでるー!」


どうやら心配はいらないようだ

収容され、爆発をまじかで経験したというのに肝が座っている。将来有望だ


「新人くーん!!私たちも後から行くからー!」


「嵐。間に合わなかったらどうなるかわかってるわよねー?」


「兄ちゃん、ファイトです・・・」


三種三様の送り出しを背に、嵐の日は風の日の言葉に恐怖を感じながら最高速度にまで加速し、マッハを超える速度で天候荘へと向かったいった








同時刻、天候荘


「くそっ・・・間に合ってくれ・・・」


「無暗に壁殴るなって雷。待つしかねーよ」


自分たちの任務を終え、一足早く天候荘に戻っていた2人

ベッドで暴れる雷火の日を、心を鬼にしてなんとか縛りつけ、治療室にフレディと撫子を残し天候荘の入り口で晴れの日達の帰還を待っていた


「分かってるけど!!でも・・・」


雨の日だって苛ただしい気持ちは同じだ

だがここで力任せに壁を殴ったところで何も変わりはしない


「さっき霙から連絡があったじゃねーか。嵐ならすぐに戻ってこれんだろ?」


「・・・くっ」


それでもやはり焦りは消えない

それほどまでに雷火の日にかけられた呪いの暴走はすさまじかったのだ

治療室の中は大半が壊れ、破損し、その場にフレディがいなければ部屋一つは余裕で消えていただろう


「・・・ほれ、見てみろ雷。来たぜ」


ニヤっと口角を上げ、戦士の帰還を指さす


「雨さぁぁん!!」


「おせーぞ晴れ!!遅刻はダメだろーが遅刻はっ」


「ちょ、んなこと言ってる場合じゃない!!嵐がもう限界で落ち・・・そ・・・うぁあわっゎあああ!?」


よく見ると、すでに嵐の日の顔色は蒼白。血が足りないことは明白だ

つまり、能力が切れ、空から落下してくることになる

幸い、もう地面は近いが、受け身の取れないであろう子供にとっては十分に恐怖だ


「雷!子供を!俺は嵐!」


「うん!!」


姿勢を低くし、一気に加速する二人。なんの能力も使っていないことが不思議に思えるほどの瞬足で、嵐の日と子供の落下予測地点にたどり着く

そして両手を大きく広げ、受け止める


「って俺はぁぁぁ・・・・アベシッ!?」


誰にも受け止めてもらえず、晴れの日は無様に地面に不時着した

だが、雨の日、雷の日は全く意に介さない


「雨!俺は先に行く!嵐を休ませたら早く来いよ!!」


「分かった!坊主、頑張れよ?」


肩に嵐の日を担ぎ、子供に向かって親指を立てる

子供も、少しは状況が掴めたのか、雷の日に抱えられながら雨の日に向かって親指を立て返す


「・・・さて、間に合えばいいんだがな」


「あ、めさん・・・俺は・・・」


プルプルと震える手で助けを求める晴れの日だが、雨の日は手を差し出すことはしなかった

かわりに


「ほれ、立て。雷火の復活だぞ?見に行ってやれ」


「スルーして落としたのはそっちじゃん・・・」











「撫子ちゃん!連れてきたよ!」


「雷!その子がっ?」


ベッドでは雷火の日が今にも死にそうなつらそうな形相で暴れている

縛られているから周りに被害はないが、子供が怖がるのには十分だ

案の定、子供は身をすくめ雷の日にしがみ付いてしまった


「や、やっぱり怖いよぉ・・・ぐすっ・・・」


まだ無垢の少年。怖さには勝てない


「大丈夫だよ!!ほら、頑張って!」


雷の日が抱えた手を放し、引き離そうとするが、余計に強く握り返される

だが、こうしている間にも死へのカウントダウンは加速している


「お姉さんと一緒にならいけるかなボク!ほら!」


優しく微笑み、手を差し出す撫子。だが子供はその手をつかむことなく首を横に振ってしまった

今にも泣き出しそうだ


「も~・・・You達は子供心知らないんですか!meに任せなさい!」


フレディが撫子を押しのけて、雷の日にしがみ付く子供の耳下で何かを囁く

ほんの一言だけ囁いたというのに、子供は笑顔になり、雷の日から飛び降りてフレディと共に暴走状態の雷火の日の近くにまで歩み寄る


「フレディ!?どうやって・・・」


「シー・・・」


ウインクしながら唇に指をやる

また一つ謎が増えた気がする・・・


「よし・・・僕がやるんだ・・・悪者をやっつけるんだー!!」


両手を前に突き出し、雷火の日の体が光りだす

能力を使用しているのだ


「始まったか・・・」


「雷火!!」


ようやくそこへ雨の日と晴れの日が合流した

息を切らした晴れの日は食い入るように身を乗り出すが雨の日に軽く抑えられる


「食らえ悪者!ちょーすーぱーはいぱーぱわー!!」


いかにも子供らしい技名を叫んだと同時に、全員が目を覆い隠すほどの光が部屋を満たす


「雷・・・火・・・!!」


そして数秒でその光はきえさり、ベッドには穏やかな顔をして眠っている雷火の日の姿があった

全くもって暴れる気配はない

ゆっくりと警戒しながらも撫子が雷火の日に近づき、脈や呼吸を測る


「撫子ちゃん・・・雷火ちゃんは・・・?」


雷の日が心から心配した声を出す

聴診器を耳から外した撫子は満面の笑みを浮かべて、こう告げた


「―――もう大丈夫よ」


治療室で大歓声があがり、解呪した子供が高々と胴上げされたのは、もういうまでもないだろう

だが何にせよ



雷火の日は助かった

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