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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第二十七話

第二十七話


嵐の日の能力で何とか崩落した施設から脱出する三人

宋やボスを取り逃したのは痛いが、それを差し引いてもこの任務達成の及ぼすアナザーに対する打撃は大きいだろう

このまま帰還すれば雷火の日の呪いも解呪され、万々歳・・・のはずだ。だが心のどこかでまだ不安が残る


「死ねぇぇぇぇえええ!!!」


地上に飛び出した三人がまず目にしたのは、風の日と梶原の激戦の幕引きだった

ボロボロになったバイオリンを投げ捨てる梶原。どうやら風の日の鎌鼬が切り裂いた様子。梶原の手は既に血まみれだ


「これで終わりにしてやるよぉ・・・」


目が逝っている。理性なんてもうないだろう。梶原を突き動かすのはただの殺意だ

もちろん風の日もそれをきちんと理解して、勝負がついたと言わんばかりの表情だ


「あら、奥義?私にはきかにゃいわ!」


やはり、猫のコスプレと猫語というのは違和感でしかない。命を懸けた戦いをして疲れ切った晴れの日の心に少しばかり穏やかな気分が広がる


「あー・・・あぁぁー・・・っあぁぁぁぁぁああーーーー・・・・!!」


突然叫びだした梶原の声のボリュームが徐々に上がる

ただの叫びのはずだが、空気がピリピリと張り詰めていく


「へぇ・・・最後は声にゃんだ」


どこか余裕そうな風の日

晴れの日達三人は地上に降り立ち、一歩離れたところから2人の戦いを眺める

だが、張り詰める空気に晴れの日の心拍数は跳ね上がる


「あぁぁっぁあああああぁああっぁあああ!!!」


思わずその場にいた風の日以外全員が耳を覆いふさぐ。それでも耳が痛いと思う程の大声量。だが徐々にその声は収束されていく

そしてその声は全て梶原の口元に収束され、巨大な一つの衝撃派となって風の日目がけて一直線に放たれる

速度はもちろん音速。いくら風の日と言えどさすがに無傷ではすむまい

地面をえぐり、空気を弾き、目で追うことすらままならない音塊が襲い掛かる―――


「―――無我」


晴れの日には風の日がなんていったのか聞き取れなかった。いや、そんな余裕すらなかったといったほうが正しいのかも知れない

だが風の日の口が笑っていたのは確かに見えたことだった


「く、ぅうっ!?風さん!!」


音塊が直撃した。土埃を巻き上げ、あたりの様子が一切分からなくなってしまう。離れた位置に居たというのに攻撃の余波が晴れの日らにも襲い掛かった

最期に見えた風の日は、避けるそぶりも見せずなんの対策もなく直撃を受けてしまったのだ

おもわず駆け出しそうになるが雪の日に腕をつかまれる


「まぁまぁ、大丈夫ですかラ」


「そんなわけ・・・!」


流石に今度ばかりは落ち着けない

腕を振りほどこうとじたばたと動くが、そんな晴れの日の鼻先を何か鋭いものが恐ろしい速度で通り過ぎて行ったのを感じ、思わず動きを止めた


「・・・流石俺の師匠」


ニヤリと笑う嵐の日

晴れの日はますます現状が分からない

だが、すぐにその答えは見えてくることになる


「ぎ・・・やぁああぁあああ!?」


突然梶原が先の大声にも負けず劣らぬほどの悲鳴を上げた

土埃が徐々に晴れる


「よくも・・・よくもぉぉぉ!!」


「にゃによ、避けない方が悪いのよ」


肩にかかる髪をかき上げ後ろに流しながら、何の傷も負っていない風の日が土埃の中から現れる


「風さん!!」


「ん、みんな無事ね?といことは任務完了かにゃ?」


「無視するな・・・ごふぅっ!?」


梶原の存在を思い出し晴れの日は視線を梶原に向ける

その眼に映ったのは、両手を肩から切り落とされ、地面と服を真っ赤に染め上げた梶原の姿だった


「死なないよーにしてあげたんだから、もう諦めたら?」


用済み、と言わんばかりに猫耳や尻尾を外し始める

見ての通りではあるが勝負は付いた。ほんの一瞬のことで何が起きたのか理解が追い付かないが、腕を切り落とされてはもう何もできまい


「ふざけるな・・・まだ、だぁぁあ!!」


「はぁ・・・雪の日、凍らせちゃ・・・!?」


全員の動きが止まった

否、正確には無理やりと停止させられたのだ。動きたくても動けない


「・・・ふふっ」


視線が頭上に集まる


「・・・な、なんだこの殺気」


呼吸が止まりそうになる

それは、この場にいない霙の日も感じていた


「な、なにこの苦しい感じ・・・!?」


「お、ねぇちゃん・・・」


「苦しいよ・・・!!」


純粋な子供は特に影響があるようだ。せき込み、苦しむ

だが、これはただの殺気

有害な毒物は何もないのだ


「体が・・・動かない・・・」


視線の先には太陽に照らされ、頭上に突如として現れたヘリコプター

そこに乗っている一人の女性。真っ黒な髪を胸まで垂らし、少しだけ垂れた目を不敵に笑わせ、艶のある唇は口角が上がっている

それだけで、晴れの日は身動き一つ取れないのだ


「殺音ちゃん、その怪我痛そうね・・・あたし心配よ。早くもどってらっしゃい?」


「し、白雨様・・・!?」


白雨。しろさめと呼ばれたその女性はまるで演劇でもするかのような大げさな言動で殺気を消し去る

その瞬間、全員の体に自由が戻る


「運び屋。殺音を回収しなさい」


短く命令するとなんの能力化は分からないが梶原が一瞬でヘリコプター内に転送された


「し、白さん!」


「あら、姫ちゃん!大きくなったわねぇ!元気かしら?」


「元気も何も・・・っ」


「ふふ・・・ごめんなさい。無駄話はまた今度の方がいいかしら?それじゃ、あたしはこれで失礼するわ。邪魔してごめんなさい?じゃね~」


ヘリコプターが上昇し始めた

だが風の日、雪の日、嵐の日三人は飛び立とうとする白雨の下へ駆け寄ろうとする


「白さん!逃げるつもりですカ!」


「戻ってこい白さん!!」


どうやら二人にも面識があるようだ

だが、白雨はただほほ笑むだけで何も言わず立ち去って行った

ただ一つ、何かのスイッチを押して―――


「白さ・・・!?まずい全員伏せて!!」


風の日の叫び声よりも早く

施設は巨大な火柱を生み出しながら

爆発した―――



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