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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第二十六話

第二十六話


場は晴れの日と宋のいる間


「ひ、ひぃぃぃ!!」


目には殺意の光しか宿っていない晴れの日

握りしめた拳銃の存在がやけにはっきりと伝わってくる。いや、違う

戦闘に関するすべての感覚が上昇している気がする

空気の流れ、体の感覚、敵の動き―――


「お前は・・・許さない・・・!」


一歩、また一歩と近づいていく

怒りに沸騰した血はそうそう収まらないだろう。頭では冷静になることを訴えるが、理性が効かない


「あぁ・・・や、やれ・・・!そいつを止めろ!!」


晴れの日に短刀を溶かされた変革者が武器も能力もなくただ宋の命令に従い襲ってくる

一応は戦闘の訓練を積んでいるようで、しっかりと型にはまった動きをしている

だが今の晴れの日には、その動きでさえスローモーションに見える

蹴りあげを繰り出す変革者を背中越しに感覚で理解し、振り返ることなく右に体を傾ける

その動きだけで変革者の足は空を蹴る結果となったのだ

全力で放ったけりがかわされ戸惑うと同時に隙が生まれる


「おとなしくしてろっ!!」


その場で片足を軸に半回転

そして熱線で変革者の両足を貫く。焦げたかのような刺激臭が充満しつつ、変革者の倒れ込む音が部屋に木霊する


「・・・ごめん。洗脳されてるだけなのにな」


敵とはいえ、操られているだけなのだ

死んではいないものの、足はもう二度度使い物にはならないかもしれない


「お、お、俺が悪かった!全部解除する!金か!?金もやるよ!!だから頼む・・・」


その場で一瞬で土下座する宋

だがそんな安っぽいものに晴れの日は興味等ない

今目に宿るのは殺意

この怒りは宋を殺すまでおさまりはしないだろう


「頼むから・・・なに?」


目は、一切笑っていない


「み、見逃して・・・ふぇぶっ!?」


この期に及んで命乞い

晴れの日の決意は固まった。宋を、殺すと―――

命乞いの言葉を言い終える前に晴れの日の膝蹴りが宋の顔面に吸い込まれる


「な、なぁ頼むか・・・っは!?」


それでもまだ命乞う宋にもう一撃膝蹴りを。今度は腹に叩き込む

どのみち、宋を殺すなりすれば洗脳は解ける。それに金に興味はない


「お前は同じ事を言ってきた人たちに・・・何をしたっていうんだ!!」


ついに銃口を宋の眉間に突き付けた


「あ・・・うあうあうぁぅ」


目が震え腰が砕けるほど恐怖を味わい、全身から汗が噴き出す宋

それほどまでに晴れの日の形相は恐ろしい

事項自得と言えばそれまでだが、それにしても同情したくなるほどの光景だった


「殺しただろ・・・?全員・・・!!」


「すみませんすみませんすみまんせんすみません!!!」


「謝ったって・・・手遅れなんだよっ!!寅春!!」


引き金に指をかける


「死ね―――」


「うぅぅあうあうううあぅぅうあぁぁ!?」


「うおぉぉぉぉおおおお!!!」


晴れの日の叫び声が木霊して空気が震えている

目に宿るのは純粋な怒りと殺意。我を忘れたかのように引き金にかける指に力を入れていく。あとほんの数センチで熱が放たれる――――

その時

なんの前触れもなく建物も震えだした


「・・・!?」


思わず力が抜けあたりに目をやる

その隙を最後のチャンスと見た宋はゴキブリも驚く瞬足の逃げ足で晴れの日の目を盗み物陰に隠れ、裏にあると思われる隠し通路に逃げ込もうとする


「この野郎!!待て・・・っわわ!?」


慌てて追いかけようとするが地面が揺れて思うように足に力が入らない

思わずしゃがみ込み両手足を地面に着け体制を安定させる


「・・・ぷはっ」


「ありゃぁー・・・やりすぎでしたネ」


そんな声が聞こえた気がする

いや、確実に聞こえた。晴れの日の頭上から・・・


「雪!?嵐!?」


拳の形をした超巨大な氷に乗って何食わぬ顔でこちらを見下ろしている

氷が砕いたこの施設の残骸には洗脳されたと思われる変革者達の亡骸や負傷者たちが有象無象に散らかっていた


「お、晴れじゃねーか。こんなとこで何してんだ?捕まっている変革者達はどうした?」


自分たちが壊した施設など気にも留めず、しかもこれだけの力を使った後だというのにもかかわらずほとんど疲労の色は感じられない


「え、あ、霙が今多分解放してるはずだけど・・・」


思わず開いた口がふさがらなくなる

同じ変革者だからこそわかる、このスタミナの無尽蔵が

晴れの日は今現在ですら少し疲れを感じているというのに・・・

また、雪の日も同様に涼しい顔だった

流石は妖精と謳われるだけのことはあるようだ。もちろん、拳の氷で施設を崩落させるなど偽物妖精もいいところだ


「そうですカ!ならもう解放されているでしょうネ!」


雪の日が嬉々とした表情で飛び跳ねる

それほどまでに霙の日に対して全幅の信頼を置いているようだ

変革者との戦闘だからこそ少しばかり晴れの日の心には不安が残るが、雪の日と嵐の日の余裕そうな表情を見るとどこかほっとする


「・・・って、宋の奴どこ行った!?」


悠長に会話していたがそもそも宋を殺し損ねていることに気が付く

先までの目付きではなくなっているもののやはり殺意はあるようだ

だが、またしても嵐の日が晴れの日を制する


「宋ってのが誰かはしらねーが、今の俺たちの目標は解放と雷火の救出だぞ。忘れるな」


ぴしゃりと言い放ち自分と雪の日を風で包み始める


「そーですヨ!それにどこに伏兵がいるかもですシ、早く変革者達連れて帰りまショ!」


悔しいが、見失ってしまった以上ここのボスと宋は諦めるほかないだろう

嵐の日の能力が晴れの日にもかかり、足が宙に浮く


「わかった・・・早く戻ろう!!」


その言葉を合図に晴れの日は嵐の日によって上空にまで一気に加速して飛び出した

一度経験しているがやはり慣れない。恐怖で目を閉じてしまう晴れの日

だが、ほんの一瞬で二人のいる高さまで飛び上がり緩やかな速度で三人で地上に向かっていく


「・・・ね、洗脳されてた変革者って」


「・・・ほとんどの人たちがもう人として成り立っていなかったので楽にしましたヨ」


雪の日が少し間をあけてから呟くように答える

褒められたことではないかも知れないが、仕方のないことなのかもしれない。晴れの日も洗脳された変革者に会ってはいるが、やはり宋を倒さないことには救えない命なのだろうと悔しさで唇をかみしめる

それを見た嵐の日が叱咤するように口を開いた


「お前は人を殺すことにまだためらいがあるみたいだな。悪いとは言わないが、覚悟ってもんは必要だ。特に、助けるべき相手をよく考えて、救える命だけを救おうと努力しとけ」


「嵐・・・」


視線こそ合わせないが嵐の日の言わんとする言葉がしっかりと晴れの日には理解できた


「さて、もうすぐ地上デスネ!霙と合流して姫とも合流しまショ!」


偽物妖精の双子の銀色にも似た髪が太陽の光を反射させて綺麗に輝く

風の日は無事だろうか、と晴れの日は無事を祈る

だが、これで雷火の日を救えることは確実。一段落、だ


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