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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第二十二話

第二十二話


「っつかまた広いなこの施設ってのは!」


無地で白紙の壁を眩しいとぼやきながらも捕まっている変革者を探して走り続ける二人

だが一向に新しい手掛かりは見当たらない

それに何の伏兵も潜んでいないので罠だったのかと不安にもなってきた


「ほんとだよねー・・・私もう・・・!?」


急に真顔になり足を止める霙の日。そして手で集音しながら耳を澄ませる

晴れの日も試しに目を閉じて神経を集中させる


「聞こえた?新人くん!」


「聞こえた!」


まっすぐ先から騒がしい声がする

なにか・・・助けを求めるかのような声だ


「いこう!!」


ここで聞こえるということは十中八九捕まった変革者だろう

二人は血相を変えて足音がたつことなど忘れて駆け出した

真っ白な壁が続き、進んでいるかどうかが怪しくなり疑心暗鬼になりかけたその時、急に視界の色が重々しい黒と灰色に変わる

そして二人が目にしたのは


「・・・多すぎるだろ」


「こんなに捕まってたの・・・?」


檻の中には女子供関係なく大量の変革者たちが収容されている無残な光景だった

彼らは白い実験台の服を着させられひどく痩せこけた様子で晴れの日ら2人を希望にすがる目で見つめる


「・・・っ!ここから逃げてください!どうやって入ってきたか知りませんが・・・逃げ・・・!」


捕まっている一人が助けを求めるわけでもなく、二人に逃げることを要求した

だがその言葉は最後まで紡がれず、途中で途絶えてしまった

恐怖に震え、声が出ないのだ


「・・・何者」


その刹那―――

霙の日を包む気配が変わった

今来た道を振り返り鋭い目つきで睨みつける。その先には一人の男が立っていたのだ

だが、気配がまったく感じられない。目視しているはずなのに晴れの日にはどこか夢見心地。それほどまでに気配のない人間をよく見つけられたと素直に感心する


「・・・」


返答は無い

ただ、無表情に銃を二丁こちらに向ける


「・・・?」


「逃げてください!奴はここの・・・」


バンッと鼓膜が破けるかのような膨大な音が鳴り響く

男が発砲したのだ。だが銃弾は晴れの日でもなく、霙の日でもなく、収容されていた変革者に命中した

胸の中心から真っ赤な血を溢れさせ一瞬で絶命する


「んなっ・・・!?」


あまりに急な出来事に晴れの日の思考が彼女の死を理解しきれない

だが、悠長な時間は与えられなかった。男が両の銃を乱射し始めたのだ

悔しさに目の前が思わずゆがむ晴れの日だが振り返る余裕はない。男の発砲をしゃがんでなんとかかわして、こちらも銃を取り出して熱を放ち始める


「新人くん!多分この人めちゃくちゃ強い・・・!私が抑えるから先に進んで!多分洗脳されてるだけだから変革者を探し出して!」


放たれる銃を壁を上手く変形させて防ぐ霙の日

晴れの日は力強く頷き、奥にちらっと見えた階段らしきものへと突き進む


「・・・みんな、絶対助けるからね!」


途中収容されている全員変革者の目をしっかりと見つめ聞こえるように声を発する

その言葉を聞いた変革者の目にはうっすらと涙が浮かび、希望が宿り始める


「---頼んだよ。んじゃっ私はこいつを片付けなきゃね!」


横目で晴れの日を見るが、一瞬で向き直り、男の第二派を警戒して地面に手を触れて壁を生み出す

これで完全に両断できる・・・はずだった


「おねーちゃん!そいつは爆弾も・・・」


檻の中の小さな男の子が指を指して叫ぶ

だが時すでに遅し。今度は建物全土が揺れるかのような振動がその場の全員を襲う


「・・・」


冷静で凍てついた眼は、確実に霙の日を睨んでいる

どうやらターゲットに選んだのだろう

銃の引き金を引きまくる男

それに対し霙の日は壁に手を付き、部屋を再び両断する


「みんなごめん!ちょっと騒がしくするね・・・っ」


「お、女の子一人じゃ勝てぬぞ・・・!」


一人のご老人が心配そうに声をかける

だが霙の日は笑顔で告げた


「ふふっ。私だって天候組なんだっ・・・すぐに終わらせる」


笑顔の裏に殺意が込められていたことは、本人以外には誰にも悟られることなく放たれる

霙の日の専門は潜入や潜伏。一対一の勝負での勝機は一体どれほどなのか――――

その時、作り出した壁がまたも粉々に粉砕された


「・・・いらっしゃい!」


地面をけり、まだ消えていない土煙の中に飛び込む

当然男は銃を発砲するが、霙の日に当たる気配はない

否、正確には当たっているもののダメージがないのだ


「・・・?」


無表情ではあるが手ごたえの無さに違和感を覚える男。だがそれもほんの一瞬

すぐ真下から現れた拳に完璧なタイミングで反応し、一歩下がることで回避する


「っくそー・・・」


悔しそうに舌打ちをする

よく見れば霙の日の腹部の服が固くなっていて、そこに銃弾がめり込んでいたのだ

おどいたのは男だけでなく収容されていた変革者も同じだった


「・・・」


「お?驚いちゃってる~?私はね、ものを合成することも分解することもできるんだー」


ふっふっふと自慢気に笑い、腰に手を当て指を男に突き立てる


「あなたの攻撃はぜーんぶこの服が防いじゃいます!残念!」


最強の防御服、だろうか

土煙で舞い上がった壁の破片を合成して、密度の高い防護服を作り上げたのだ

時間にすればほんの一瞬だが、出来は完璧。銃弾ごとき通用しないのだ


「さて・・・いくよ!」


無論反応は何もない

だが容赦なく霙の日は駆け出し、銃弾の嵐をまさに紙一重の動きでかわしていく

決して銃弾が見えるわけではない。長年の戦闘の勘だ


「はぁあぁっ!」


床に手を付き、地面から柱が何本も生えてきて男の体を貫くことをイメージする

その途端、地面が揺らめぎ、イメージ通りの動きで男を襲う

だが・・・


「・・・」


無言でさらに冷や汗一つかかずに、どこからか取り出した手榴弾で柱を破壊する

なんとか爆風が来ないように柱をさらに組み直し、自分の体の周りにまとわせる


「ったいなー・・・能力も使わずよくやるね・・・」


そう。男はいまだ能力らしきものを使っていないのだ

単に変革者では無いのかもしれないが、重要施設の警備に一般人など使うまい


「・・・」


答えるはずもない

無言で銃を構える。そして、突然銃弾を抜いたのだ


「・・・なに?」


疑問に思った霙の日は思わず攻撃のチャンスを逃す

だが、もしも今ここで突っ込み男の策にはまるかと考えると懸命な措置だっただろう


「・・・!!」


先まで無表情だった男の目がいきなり見開く

それだけでも十分な殺気だが、驚いたのはさらにここからだ


「銃弾・・・じゃない!!」


一瞬、結局発砲したのかと思ったのだが、どうやら発射されたのはただの銃ではないようだ

かすかに火薬の臭いが霙の日の鼻を刺激した


「空気よ!私を守って!」


合成の力で微かな風を寄せ集め突風を放つ

それが功を成し、なんとか銃弾もどきの玉は当たらなかった

だが、それだけでは済まない・・・


「おねーちゃん!そいつは銃弾の素材を変えられる・・・今避けたのは爆弾だよ!!」


どこからか少年の声が聞こえる

聞こえると同時に危機感を覚えた霙の日。それもそのはず、まさにすぐ近くには収容された変革者だ

ここで派手に戦闘すれば巻き添えを食わせてしまう


「情報ありがと!!爆弾を包め!!」


号令で猶の事集中力を引き上げ、放たれた銃弾が爆発しようと膨張している間になんとか土くれで捻りつぶし爆発は免れる

だが、一発で済むわけがない


「・・・・・・」


無言無表情の悪魔は気の向くままに、思うが儘に銃を乱射し、流れ弾が何発も収容所の変革者に当たりそうになる


「させ・・・ない!!」


能力を使い、なんとか収容されている檻を盾に変形させ、かすり傷も負わせない

だが、周りに集中するあまり、自分の体に着弾したことに気が付かなかった


「やばっ・・・!」


霙の日の体に着弾した弾が発光する・・・



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