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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第二十一話

第二十一話


施設内廊下にて

霙の日と晴れの日は音をたてないように静かに、かつ素早く施設の中を練り歩く

だが、どこに行っても道の光景は変わらず、拘束されている変革者はおろか新天地も見つからない


「っくそぉ!!」


刻一刻と迫る雷火の日の死期に苛立ちを隠せない晴れの日は力に任せて壁を殴る

もちろんそんなことをしたとしても何も状況は変わらないのは十分に分かっているのだが、じっとしていられない


「ここまで走って何も見つからないわけは無いのに・・・何か見落としが・・・」


絶対に入り口の類はあるはずなのだ

なにせこの中から兵は現れるのだ。ないはずがない

だが、どこなのだろう・・・


「・・・全部壁溶かすか」


恐ろしいことを口走る晴れの日。だがもしもそんなことをすれば一瞬で組織の内部に侵入していることがバレ計画は水の泡だろう

そんなことになれば変革者の解放どころか雷火の日の命さえ救えない


「落ちついて・・・きっと打開策はあるよ!」


ガッツポーズで明るく励ます霙の日だが中々晴れの日の焦りは収まらない


「打開策があるなら早く見つけないと結局意味ないだろ!」


「怒鳴っても始まらないよ?」


思わず怒鳴る晴れの日だが、霙の日は意に介さず大人の対応で受け流す

もちろん晴れの日も悪気があって怒鳴ったわけではない。だがどうにもできないもどかしさが彼の心を焦らせる


「ごめん・・・」


深呼吸でなんとか落ち着きを取り戻そうとする晴れの日

だが心なしか足が震える

否・・・足ではない


「別にいいよ・・・って新人くん!あれ見て!!」


指さす先は晴れの日の背後。弾かれたようにして振り返るとそこには地面に穴が開きそこから螺旋階段が現れていたのだ

だからこそ、地面が揺れ、晴れの日の足が震えているように見えたのだろう

先までの暗い表情とは打って変わり、二人は一瞬顔を見合わせ互いに走り出す


「って閉まり始めたぞ!」


「急ごう新人くん!」


何故開いたのかは分からない。もしかしたら敵の策略かもしれない

だが、今いかなければきっと一生後悔するだろう

晴れの日はどこかそう感じていた


「ま、にあえぇぇえ!!」


「間に、合わせよ!」


最期の2Mを二人はスライディングで滑り込む

地面にあいた穴は二人の体を一瞬で飲み込み、それと同時にしめられてしまった


「わっ!?」


「にゅぷっ!?」


晴れの日がまず落下し、その上に霙の日がダイブを決める

奇跡的に二人に怪我などはなく、なんとか真の意味での施設突入だろう


「・・・行くか」


すぐに立ち上がり険しい顔をしながらも晴れの日は隣にいる霙の日に呼びかける


「・・・まずは変革者の場所の確認。次に大将おとすよ!」


霙の日は笑顔でそう答えた

施設、潜入開始――――









一方そのころ、収容施設のボスの部屋


「おい貴様!!襲撃を受けてるらしいぬぁ!」


目がうつろで焦点が定まっていない女性たちに囲まれながら一人の中年オヤジが座椅子に腰かけ酒を片手に怒鳴り散らす

だが太っている体のせいか、若干滑舌が悪い


「みたいだねー」


対する男はさも興味の無さそうな目でボスを見る


「この収容所は俺様に一任されているんだずぉ!貴様の作った人形どもも失敗作ばっかりだし・・・このままじゃ俺様が・・・!」


そこまで言ってボスの言葉が止まる。周りを囲む女性の一人がブドウのような果実を口に運んだからだ

なんの感動もなく怒りの形相でそれを貪り食う。口の端からは汁が垂れる


「大丈夫だよー・・・ちゃんと成功例もいるんだし、中で警備させてるからさ」


「・・・ならいーんどぁ。あ、そうだ宋。この女達色気が足りないから洗脳して色気ふやしてくれゆぉ」


ボスは警備の安全性を確認しそれだけで満足したのか、新たな洗脳要望を宋と呼ばれた男に頼む

宋はやれやれと言った顔で女性たちのもとに歩み寄り頭をつかみ、脳内に入り込んでいった――――

その顔に、まともな人格者の表情はあらず、人をただの人形としか見ていない、外道の顔だった

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