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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第十五話

第十五話


「す・・・げ・・・」


呆気にとられている晴れの日だがすぐ我に返り雷火の日を救出に駆け出す

雪の日の冷気がまだ残り少しひんやりと肌寒い

雷火の日の手から流れる血があたりに散っているのをみて晴れの日は事の重大さを再認識した


「・・・やばそうだな」


嵐の日が状況を冷静に分析するが晴れの日にはそんな余裕もない

倒れる雷火の日を抱き起すが意識はない

かろうじて息はあるがとても苦しそうだし細い

さらに体温はかなり高温だ。熱があるなんてレベルじゃない

動機も激しかった


「おヨ・・・残念ですけど敵の援軍ですネ・・・とりあえずここは引きまショ?」


「だな。奴らを潰せないのは痛いが仕方ねーな。おい、雷火をちゃんと抱きかかえろ、飛ぶぞ」


「へ!?」


言われるがままにあわてて雷火の日を抱きかかえる晴れの日

と同時にふわりと浮遊感が晴れの日を包み体が浮いた

嵐の日の能力だろうか


「お、わぁああ!?」


「大丈夫ですから落ち着いてくださいナ・・・?」


雪の日が少し呆れて物を言うが飛ぶのなんて初めての経験に晴れの日が戸惑うのも無理は無い

だが、こうしている間にも洞窟の外からはなにやら騒がしい足音と共に増援が確認できる


「・・・飛ばすぞ!」


一気に壁にあいた巨大な穴から上空に移動する

風圧で思わず目を閉じたがそれも一瞬で慣れる

舞い上がった三人は雲の下すれすれまで舞い上がり停止したのだ

眼下に広がるのは富士山。どうやら晴れの日達は富士山の中腹にある洞窟に閉じ込められていたようだ


「舌噛むぞ。口閉じとけ」


簡潔にそういい終わるが早いか嵐の日を先頭に三人と雷火の日は天候荘へと帰還していく

その速度は晴れの日がこれまで体験したどんな絶叫系よりもはるかに早く恐ろしい絶叫マシンだったらしい・・・











「戻ったか!! ・・・雷火!?」


天候荘では曇りの日が心配そうに待っていた

晴れの日が抱える雷火の日を見て一目で事の重大さを理解したのかすぐさま撫子他雨、雷の日を呼び出す


「二人ともご苦労。晴れ、お前は特にな。ここはもういい、俺たちに任せろ」


「でも・・・!」


晴れの日から雷火の日が曇りの日の腕に移される

その時すぐに三人が天候荘から出てくる

すでに無事でないことを悟っていた撫子は既に白衣だ


「いいから任せろ!・・・すまない。雪、嵐、お前らは晴れを連れて先に雷の部屋に」


「はいナ」


「了解した」


曇りの日の言葉に何の反論もなく頷く二人だが晴れの日にはそう簡単に納得がいかない

せめて、せめてパートナーとして雷火の日の行く末をそばにいたいのだ

嫌われていても、パートナーなのだから


「俺にも責任はあります!!せめて傍に・・・っ!?」


「・・・晴れ、少し落ち着けっての」


雨の日の手刀が晴れの日の意識を刈り取った

的確な一撃は、晴れの日に攻撃されたことを悟られずに繰り出された

この場の誰も雨の日の行動をせめはしない

それが正しい選択だからだ


「撫子ちゃん、雷火ちゃんは治るのか・・・?」


気を失い崩れ落ちる晴れの日を雨の日が片手で受け止め嵐の日に受け渡す

雷の日に尋ねられた撫子は聴診器や目の瞳孔チェックを済ませ、首を横に振り、ゆっくりと聴診器を外す


「手の傷と体中の打撲痕はどうにかできるわ。でも・・・」


言葉を濁す撫子


「私の能力じゃ、この『呪い』は解呪出来ないわ・・・」


呪い

あの時注射したのは劇薬でも何でもない。制約だ

本当の力は呪い、なのだろうか


「とにかく今は傷をふさぐわ・・・っ!」


撫子の能力

それは細胞の活性化だ

一瞬で対象の細胞を活性化させ、常人では即死のけがでさえふさいでしまう

それ故に救護を務めている

だが制約も大きい

使うたびにその量にあった分、自分の体が若返るのだ

そう、使い続ければいつかは―――

だが撫子は迷うことなく雷火の日の手の傷と体中の打撲を治した


「・・・呪いとはまた厄介だな」


「雷火ちゃん・・・」


曇りの日は苦悩に頭を抱え、親しい仲ともいえる雷の日は落胆する

だが、雨の日は違った


「・・・時期は早いが、こりゃ作戦始めるしかないな」


「待って! まさか乗り込むつもり・・・!?」


いつになく雨の日は真面目だ

いくら雨の日と言えど人の、仲間の生死にかかわる問題だ、当然だろう


「・・・ちょうど双子もいる。それに霙もだ。俺らは別件で動けないが、それでも十分だろ」


「無謀、ではないか?」


「・・・撫子ちゃん、雷火ちゃんに残された時間は?」


担架に乗せられ天候荘の集中治療室に連れていかれる雷火の日を見つめながら雷の日は尋ねた


「もって・・・二日」


タイムリミットは後――

二日だ

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