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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第十四話

第十四話


体が熱い

いや、寒いのかもしれない

自分は上を向いているのか。いや、下かもしれない。それどころか右も左も分からない

真っ暗だ

足元には闇だけ。一点の光すらない

音も聞こえない

急に何か背後にいるような気配がした

振り返るが誰もいない


「怖い・・・」


雷火の日は・・・一人孤独に闇の中

意識を失ったのか、死んだのか・・・

でも・・・なんだか何もかもどうでもよくなってきた・・・





















「らい・・・か・・・」


晴れの日の視線の先では雷火の日の槍に貫かれた手のひらから真っ赤な血が流血し、さらに服も所々返り血や本人のそれで真っ赤に染まり力なく倒れる雷火の日の姿がハッキリと映っていた

これまで、嫌われながらも共に試験を受け、コードネームを貰い、任務に赴いてきた雷火の日

期間にすれば短いが、晴れの日にとって一番新鮮でこれ以上の無い非日常のスタートを共に切った仲間だ

まさかここで、こんな形で・・・


「あ、ぁ・・・」


目の焦点が定まらない

聞こえるのは雷火の日をやった変革者たちの不敵な笑い声だけだ

それもゆっくりと近づいてくる

晴れの日は頬に涙を一筋浮かべ、大きく息を吸い、覚悟を決めた

最期は・・・男らしく散ろうと


『邪魔な壁ですねェ~、派手に壊していいデスか?』


『・・・好きにしろ』


壁の向こうから誰かの声がする

そして一帯の気温が著しく低下する

さらに、壁の向こうで明らかに大きな風が吹き荒れているのがわかる

洞窟の壁は雷火の日の本気の殴打でも粉砕不可能だった壁

何をしようというのだろうか

変革者達も思わず事の次第が気になり晴れの日に手を出さない


『んじゃ・・・遠慮なく~。てーいッ!』


『はぁ・・・またでっかいの作ったなお前・・・まぁいい。せいっ!』


突如洞窟全土が振動して壁が崩落し始める

そこから見えるのは直径二メートルは優に超える巨大なドリル状の氷と、それを覆う強風だった

その氷は今までびくともしていなかった壁をまるで豆腐のように粉々に粉砕した

あっけにとられていたのも束の間


「っおい!なんだこれ!?」


「やべぇ!!止まらないぞこれ!!」


その氷は減速することなくどんどん壁を壊す

だが晴れの日はあまりの出来事に動くことを忘れた

迫りくる氷のドリルは壁を崩落させて晴れの日に・・・

刺さることはなくほんの数センチ手前でその回転を止め役目を終えたかのように一瞬で砕け散った


「おヨ?危なかったですヨ兄ちゃん・・・」


現れたのは真っ白な髪の二人組。話し方が独特な恐らく少女と思われる方は目が赤い

だが反対に、左手に包帯を巻き、流血が激しい男の方は目が青い

2人とも服装が男っぽく、黒い

さらに二人は、飛んでいる。雷火の日のように重力反転して浮いているのではない

完全に浮遊している


「あー・・・まぁ当たらなかったから結果オーライだ」


「モ~・・・兄ちゃん・・・お、君が晴れ?であっちで倒れちゃってるのが雷火かナ」


その言葉から察するにどうやら味方のようだ

だが、どこか緊張感のない話し方にいまいち晴れの日は状況が呑み込めない

だが、二人の素性よりも先に雷火の日の危機を思い出す


「み、味方なんだよな!? 雷火が・・・あいつが・・・!」


「落ち着きなさいナ・・・」


「ひとまずコイツ等潰すぞ。雷火ってやつは晴れ、お前がここまで連れて来い」


晴れの日はうなずき、雷火の日の方を向く

その周りには非難した変革者たちが少しおびえながらも臨戦態勢に入っていた


「て、てめぇらガキじゃねぇか!!ここに何の用だ!」


そう。二人の身長はかなり低身長

見た目からもわかるが日本の人ではないのだろう


「はぁ・・・だるい。雪、左半分凍らせちゃって。右は俺やるし」


「はいナ~」


その言葉を合図に二人は手を突き出す

ただそれだけで

変革者達は何故か死を覚悟した――


「やっぱ決め台詞言いましょーヨー」


「・・・マジで?別にいいけど」


決め台詞

何のことだろう

それにしても何だか周りの気温が下がってきた・・・さらに風も強い気がする


「やたっ!えと・・・『我が眼前に映りし外道よ。その罪を嘆きあの世で詫びろ。凍れ――』」


「はぁ・・・『汝、神の御前で命を乞え。その罰を甘んじて受け入れよ。舞え――』」


兄ちゃん、と呼ばれた男の感じから察するに、これは制約ではないのだろう

恐らく雪と呼ばれた方の片割れの以降だろう

中二チックなセリフをゆっくりと二人が告げているのにも関わらず恐怖で足がすくんだのか変革者たちは何も行動を起こさずただ額に脂汗をにじませている


「『ニブル・ヘイム』」


「『ダイヤモンド・ダスト』」


その声が紡がれると同時に、宣言通り半分が一瞬で、瞬きも許されず、全身が一瞬で凍り付き、そして一瞬で粉々に砕け散った―――

さらにもう半分ではこの狭い洞窟内で小規模かつ高密度の超サイクロンが発生。周りの変革者を飲み込み、さらに小石や壁の破片を飲み込み内部でかき乱れ、変革者は息を引き取る―――


「す・・・げぇ・・・」


攻撃の美しさもさることながら、雷火の日には一切の傷なくこの場の変革者達を一掃したのだ

それも気迫で動きを封じ、一撃で葬るという荒業だ

この2人こそ、通称天候組のスプライトジェミニ

偽物妖精の双子の雪の日と嵐の日だ――――




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