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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第十一話

第十一話


「槍で貫かれる感想を聞きたいねぇお嬢さ・・・ん!」


「はっ・・・!お断りよ!」


一人の変革者が両手の指を合わせ、その中心から一本の槍を打ち出す

速度は充分速い。さらに直線的な動きで空を裂いている

目視はできても反応は厳しそうなほどだ。だが槍がいくら早くても熱の速度にも威力にも遠く及ばない

打ち出された槍が雷火の日に届く寸前、晴れの日の援護で槍は一瞬にしてドロドロになる


「溶けた!?」


「ドロドロしてて気持ちが悪いわ・・・返してあげる!」


警棒をバット代わりにドロドロに溶けた槍を打ち返す

直線的に飛ぶ槍の残骸は打ち出した本人にベクトルを変えて直撃し、持ち主にまで熱が伝熱し、触れたところが焼けはじめ、一瞬で全身を飲み込む


「ふむ・・・中々のコンビだ。加減なしでいい。壁の多少の破損も仕方ない。全力で消せ」


命燃え尽きた仲間には見向きもせず平然と晴れの日達の動きを見つめている

そうやら仲間意識など言葉すら知らないようだ

ボスが一言そういうと、本人は一歩下がり代わりに多くの変革者が前に出てくる


「ギア・オン!」


叫んだ一人の小柄な男が通常の人間以上の速さで突進して来る。いや、むしろ滑空している

そしてその背後からさらに立て続けにガラスのようなきらきらと光る刃物も襲いくるのが晴れの日にはしっかり見えた


「俺は一歩下がって遠距離を落とす。雷火はあの小柄な奴頼む!」


「落としきれなかったらあんたを堕とす!!」


相変わらず物騒な物言いだ

だが、雷火の日にはそれくらいがちょうどいい


「きえぇぇぇ!!」


さっきまで雷火に向けて突進していた小柄な男の姿が消える。正確には高速移動のせいで消えたように見えたのだ

晴れの日は意識を浮遊する刃物に向けていたため、どこにいるのか見失ってしまったが、雷火の日にはキチンと見えていた


「・・・五月蠅い。キモイわ」


どこに動いたかと言えば、頭上だ

小柄な男はその速度を活かし天井に舞い、頭上を取った気でいたのだ

だが雷火にはお見通し

重力を反転させ跳ね上がり警棒で鳩尾を貫く


「な・・・にっ・・・!?」


自信があった攻撃が看破され、さらには一撃で意識を刈り取られるほどのダメージを負わされた変革者は悔しさで顔を染め上げる


「援護!刃物!」


声だけで晴れの日に行動を示す


「分かってる!」


刃物が回転し始め、チェーンソーにも似た音を立てる

そしてその音が聞こえるがいなや、熱が放たれる


「悪いけど・・・溶けてくれ!!」


引き金を引き、晴れの日は横一直線に熱線が出るように意識した

一斉に放たれた刃物は当然横から見れば一直線。晴れの日の目論見通りすべてが一斉に溶ける


「よくやったわ」


刃物が宙から溶け落ちたのを確認すると雷火の日は隙の空いた変革者の集団目がけて高速落下していく

比喩ではない。文字通り、自身の体重を500KGほどにまで増大させ落下し突っ込んだのだ。その威力は隕石さながらだ


「うおぉ!?」


「正気か!?」


当然突撃されることは想定外だった変革者たちは戸惑い一歩下がる

その結果どうなるか。雷火の日を中心に円ができる

そう。意識は中心の雷火の日に向けられる。それはつまり晴れの日に背を向けているということだ

もちろんボスでさえ例外ではない


「う、おぉぉぉぉぉ!!」


指を限界まで素早く動かす

一回の発砲により熱線は一回

つまり全員を一度に倒せない。だが手前にいる奴ら位は倒して雷火の日の逃げ道を作らなければならない


「く!?陽動だ!全員回避!」


流石はボス。寸でのところでこの行動の意味に気が付く

だが晴れの日は既に引き金を引いている

銃口から鉄をも溶かす熱線が一番手前にいる変革者の胸部を溶かし、服が余波で燃え尽きる

おそらく、いや確実に生きていないだろう

一瞬激しい後悔と吐き気に襲われ口になにか酢のような感覚が這い上がるがなんとか抑え込む。だが晴れの日の瞼にはハッキリと人を殺してしまった後悔の念がこびりつく


「まずい!!下手すれば一撃で死ぬ!私がここは防ぐから今のうちにその女を!」


そういいながらも口笛を吹き、晴れの日の二撃目の攻撃以降を完璧に防いでくる

悔しいが晴れの日にはこの防御を砕く力はない。それに人をあやめた恐怖が手を震わせた


「雷火!大丈夫か!」


「・・・できれば早く」


いつになく弱気だ

どうやら雷火の日も半ばヤケクソでの突撃だったのか、逃げ道を考えていなかったのだ

やはり戦闘経験の無さがこういうところで足を引っ張る

だが晴れの日には人殺しの重圧がかかり動きが少しだけ固くなる


「分かった!!っそぉ・・・どけやぁぁ!!」


「どけと・・・言われて・・・どく・・・か・・・!」


手先が若干振るえおぼつかないとはいえ、ボスの口笛の繰り出すタイミングが絶妙なのだ

晴れの日も相手のリズムを崩そうと打ち出すタイミングをずらすがそれでも完璧に合わせてくるのだ


「・・・畜生!でも・・・すぅ・・・はぁ・・・俺だって負けてらんねーんだよ」


深呼吸で呼吸を整えたのち低く唸る

その覇気の籠った声に少し後ずさりたくなる気持ちに襲われるボス

一瞬だけ晴れの日の空気が変わったのを感じ疑問に襲われた―――


「・・・?」



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