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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第八話

第八話


「何?あんた遂に発狂したの?」


本気で目つきが怖い

能力なしで人を心の芯から凍りつけられそうだ

だが晴れの日は負けない!


「んなわけあるか!いいから少しだけその髪ゴム貸してくれ!頼む!」


もはやあきれて物も言えなくなる雷火の日だが、嫌々で髪をまとめるゴムをすべて外す。縛りの解けた黒い髪は何の抵抗も癖もなくまっすぐに降ろされる。リンスの香りが一瞬鼻を通過する


「お、おぉ・・・」


その光景に思わず見とれる

ハーフアップの時にあった鋭い印象がなくなり、どこかお淑やかな雰囲気が出てきたからだ


「見るな変態」


だがお淑やかなのは見た目だけ。中身はいつも通りの雷火の日だった


「はい・・・っと少し借りるな!」


「いい。そのまま捨てて」


降ろした髪型と口調のギャップがすごいが気にしているほどの猶予はない

髪ゴムを受け取ると同時に晴れの日は手枷と足枷を打ち付けあい、少しずつ木の欠片を生み出していく

音があまり立たないよう静かにだ

何がしたいのか雷火の日にはさっぱり

それから五分ほどたった頃だろう

遂に晴れの日は木の欠片を十分量集めたようだ


「さて・・・みてろぉ!」


そして手枷で繋がれた手でせっせと何かを作る

何を作り上げたかと言えば・・・






「あんた、ほんとにバカなのかすごいのかわからないわ。でも今は、今だけはよくやったと言えるわね」


晴れの日の手には、即席の輪ゴム鉄砲が握られていたのだ


「これだって一応は銃だ!威力は弱いだろうけど脱出して荷物取り戻すまでは充分だろ!」


額に滲んだ汗を手の甲でふき取りぎゅっと引き金を絞り、手枷が溶けるイメージを想う

すると、じゅぅっと音を立てて手枷はゆっくりとだが燃え尽きた

確かに少し威力は下がっているがそれでも十分だ

次に足枷と雷火の日の手枷も同様にはずし、脱走準備は整った


「さて・・・ここがどこかはわからないけどとりあえず逃げよう!第一目標は・・・えぇと・・・」


「荷物、よ。わたしの警棒とあんたの銃が見つかればひとまず安心」


「よし、じゃぁ行くぞ!」


晴れの日は鉄すらも気合と時間をかけて何とか溶かし、人ひとりしゃがんでようやく通れるくらいの出口を生む

そこから二人は姿勢を低く構え静かにでる

少し離れたところでこちらに背を向けている監視役が二人いるのが雷火の日の目に留まる

一人は雷火の日の警棒を持っていて、それを使って警備しているようだ


「・・・気安くわたしの物を」


「ま、まぁまぁ・・・じゃぁ、同時に行くぞ」


背後から黒いオーラが出ているのを感じ取った晴れの日は指でカウントダウンを始め、ゼロになると同時に二人で駆け出す


「肩!足!」


まずは晴れの日

声に出して意識を高めながら熱線で打ち抜く晴れの日

だが不十分な熱のせいで貫通はしない。ただ体制が崩れただけだ


「せぇぇい!!」


崩れた体制に合わせてこぶしを振るい、顎に吸い込まれる

さらに膝蹴りも鳩尾に操出し、監視の意識を一瞬で奪い去った

唯一ともいえる近接技だ。雨の日の動きの見様見真似だがうまくいった

同時間に雷火の日は、上空から踵落とし一撃で監視の肩を粉砕したようだ

どちらもすぐに起き上っては来ないだろう


「・・・容赦ねぇ」


倒れた警備の男に同情を抱かざるを得ない


「なによ。やらなきゃやられるわよ」


確かにそうだろう

晴れの日はこの言葉で今は訓練ではないと改めて実感すると同時に、先みたいな戦い方じゃ死ぬかもしれないと自分に釘を打つ


「さて、次はあんたの銃ね。って言ってもここの連中の銃でもいいんじゃない?」


「あーそうだな。銃持ってるやついたら奪おう」


実際銃ならば何でもいいのだ

RPGだろうとマシンガンだろうと、引き金があれば、だが


「居たぞ!!脱走だ!」


その時異常に気付いた兵が何人か現れ始めた。騒ぎは小さく抑えたというのに

普通の武器を持つ者とそうでない者が一人いるということはここにいる全員が変革者ではないのだろう


「気を付けろ!奴らは変革者だ!」


「――その前に攻撃するべきだったわ」


まさに一瞬

雷火の日は既に落下を駆使して兵の後ろに回り込んでいた。長い髪が宙に揺れる

だがそれに気づいていたものは一人も居なかった


「なに!?ヘンドリック!」


「御意!」


警棒を振り下ろす雷火の日だが、それは青い鏡のようなもので弾かれる

変革者だ


「お返しいたす。リフレクション!」


鏡が光り、雷火の日めがけて放たれる

間一髪でよけるが、ついさっきまでたっていた場所は大きく陥没していた


「ふむ。中々の動き」


「カウンター・・・っ!こいつはわたしがやるわ!あんたは他をお願い!」


戦力から考えても正しい判断だ

今の晴れの日は輪ゴム鉄砲。雑魚がぎりぎり倒せるレベルだ


「OK!さて、銃持ってる奴は・・・いねぇし!」


「なにをゴチャゴチャと!やれお前ら!殺しても構わん!」


兵の装備を見渡してみたのだが、この狭い洞窟にもかかわらずほとんどが剣士だ

残念極まりないが晴れの日お目当ての銃は一丁もない


「ったく!ちょっと熱いけどがまんしてくれよ!!」


手作り感満載の銃の引き金を引き、熱を生み死なない程度で燃やす

一番接近していた男の足をまず燃やした

体制を崩し、そのまま後ろから来た兵ともみ合いになり将棋倒しになる兵士たち

そのすきに少しだけ後ろに下がり優位な距離感をとった


「お前らぐずぐずしてないでさっさとやらんか!!相手は変革者と言えど子供だぞ!」


「子供だからってなめんなよ!?」


再び引き金を引き武具を無効化しにかかる。兵は転倒しているため武器を狙うことなど容易い。溶かすまではいかないが刃こぼれを起こさせるには十分だ


「くっ!!使えん奴らめ!」


「仲間を見捨てて逃げるのか!?」


威嚇射撃に一発逃げ道の岩に熱線を放つ


「あひぃぃ!?」


あり得ないほど臆病だ

小隊のボス各の男は結局一歩も動くことなく、晴れの日の能力におびえて戦意喪失

また、将棋倒しになった兵も武器を失い、さらに目の前に自分を殺すことのできる変革者がいる恐怖で完全に戦意を喪失していた


「っと・・・案外骨なしだなぁ」


しれっと気を抜いた晴れの日だが、すぐ近くに響いた爆発音で雷火の日のことを思い出す


「あんたねぇ!!少しは手伝え!!」


案の定怒られる

だがいつものように言い返している暇はない

古風な話し方の変革者は鏡のようなものを宙に浮かせ、雷火の日の攻撃した衝撃をすべて吸収、さらにカウンターして来る厄介な奴だ。苦虫をかみつぶしたような顔で応戦する雷火の日だが、確実に押されている


「・・・倒す算段が見つからないの。あんたの熱で何とかできない!?」


そう叫びながらも攻撃を繰り出し続ける雷火の日

だが、晴れの日の熱は残念ながら操作性も欠ける。なにせ即席の銃だ

雷火の日と交戦中の変革者相手にあてられはしないだろう

それに、ダメージがどこまで通用するかもわからない


「なにぼーっとしてんの!?このバカ!いいから打てっての!」


「あーもう!うるせぇ!どうなっても知らんぞ!!」


「む。何やら不穏な気配」


ヤケクソになって銃を構える

どうやら変革者も晴れの日の居場所に感づいたようで横目で確認してきた


「一瞬だ!チャンスも一度だぞ!」


雷火の日にはこれだけ言えばわかるだろう、と晴れの日はごく簡潔に伝言する

もちろん、変革者も、二人が何か企んでいることには気が付いただろうが、晴れの日の能力をちゃんと見ていない分判断が遅くなる

そこを晴れの日は狙った。片目を閉じ限界まで集中力を高める

そしてあえて、鏡を打つ


「反射しやがれぇぇ!!」


「んなっ!?」


晴れの日の熱は光らせることもできる

それを利用して鏡に当て反射させ目くらましをたくらんだのだ


「まぶっ・・・まぁいいわ!」


目を閉じてしまった変革者。もちろん余波が雷火の日にもある

もちろんそれが大きな隙になるのは重々承知だが、やはり変革者いえども自分の目の保護に本能は動くようだ

雷火の日は細めで敵の体を捉え、大きく警棒を振り上げ頭上から大きく振り下ろす


「殺しはしないわ・・・でも、潰れなさい!!」


「ぐべらぁっ!?」


重さ500kgを超える威力が脳天に響き、死んだとしか思えない大音量で変革者は地面に埋まり、顔だけがはみ出ていた・・・


「さ、さすがっす・・・じゃあ・・・次行きましょうか・・・」


やはり雷火の日の戦闘スタイルは恐ろしいの一言に尽きる―――

この時晴れの日は大きく深いため息をついた



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