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変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
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第七話

第七話


「う、あう・・・」


どれくらい時間がたっただろうか

気が付くと晴れの日は雷火の日と共にどこかの洞窟の鉄製の折に入れられていた

まだふらふらする頭をゆっくりと持ち上げる


「あら、ようやくお目覚めかしら」


視界がぼんやりとしているが声とシルエットで目の前の少女が雷火の日だと理解した

膝を抱えて座り込んで、むすっとした明らかに不機嫌な顔だ。まぁこれだけの横暴に怒りを覚えないほうが無理な話だろう

さらにその手には木製の手枷が


「ここ、どこだ・・・?ってか雷火体は大丈夫なの?」


「えぇ。ただの睡眠薬だったみたい。あと、ここがどこかはわからないわ」


どこか遠い目で話す雷火の日。まさに手の打ちよう、なし。とでも言いたそうだったがここでそこまで現実的なことを言えば士気が下がるだろうと雷火の日は自重する

座っていても仕方がないと、とりあえず立ち上がろうとした晴れの日だが、何故か晴れの日は足にも木製の手錠が課せられていて、満足に足も動かなかった


「くそ!!なんだよこれ!」


「あんまりはしゃがないで。うるさいわ・・・それにしても少なくともここは奴らの手中でしょうね・・・」


奴ら。それがアナザーだとは言わずとも晴れの日には伝わっただろう

まさか初任務で死ぬのだろうか・・・しかしなぜ身元が割れたのか・・・晴れの日の脳内は疑問でいっぱいだった


「おぉ!起きたか君たち!」


檻の外からさっきのパトロールが現れた

だが今は全身スーツでTVでよく見る悪役そのもので、口調も心なしか変わっている

真の俳優はパトロールに扮していた男だったようだ


「あんた・・・!」


「そう怖い顔をするな?ちゃんと君たちのお友達も探してるからさぁ~」


「友達・・・?」


「ん?君たちが樹海で探してる友達だよ」


どういうことだろう

状況から考えると晴れの日たちの身元が割れて、それで捕縛されたのだと二人は確定していた

だが、このパトロールは友達の話は信じている

つまりはまだ、身元までは割れていないというわけだ

では何故・・・


「あぁそうそう。私たちも変革者さ、隠さなくてもいいよ?」


「・・・何を隠すっていうの」


「だから睨みなさんなって・・・君たちも変革者だろ?」


変革者であるとはやはりばれていたか


「今はいないけどここにはその人が変革者かどうか分かる奴がいてね。新幹線であっているだろう?君たちが変革者だっていうからちょーっとばかり乱暴にここに連れてこさせてもらった」


あの時、ぶつかった人だろうか?

確かに親切すぎるとは思った晴れの日

だが変に賢いところを見せては疑われる可能性もあると考えあえて何も言わない


「そこで!君たちを私たちアナザーの仲間に加えたい!折角力を授かったのにふるうところがないのは寂しいだろ?」


「おことわ・・・!」


「少し・・・整理させてほしいんですが・・・」


条件反射だろう。雷火の日が断りを入れようとするが晴れの日が横から口をはさむ

ここでもし雷火の日が、断ると、言えばどうなったものか考えたくもない

アナザーの理念などは分からないが五体満足で帰れるとは思わない


「ちょっと!!」


冷静になることを忘れてしまっている雷火の日に目くばせで合図する。落ち着け、と


「・・・いいだろう。二時間ほどあげる。ゆっくり考えてね」


危険な賭けだったがなんとかスーツの男は消えていった

すこし冷静になった雷火の日はしょぼくれる


「・・・ごめんなさい」


「いや、大丈夫だよ?さて・・・考えようか」


俯いていたので表情までは読み取れないが、声には反省の色がハッキリと見えていた。珍しいことではあるがそんなことを今は言っていられない

晴れの日は、考えようと言う。もちろんあえて脱走とかそういう単語は出さない。どこで聞かれるか分からないからだ

だからこそ二人は精いっぱい小声で会話する


「とりあえず、この手錠だよな・・・」


「えぇ・・・木だから頑張れば割れるとは思うけれど・・・」


そんなことをすれば音に感づかれて誰かしらくるだろう

幸い、警備にあたっている人は見える範囲には誰もいないのだが・・・


「銃も取られてるしな・・・てか雷火の能力は?」


雷火の日の能力はパッシブタイプ

制約を払って発動ではなく、いつでも発動が可能だ

ただし、いささか威力にかけるものが多いのが特徴だが、この際能力が使えるだけで十分に戦力となる


「使えるけれど、意味はないわ。重力じゃこれは壊しようがないし」


だが、やはり難しいようだ


「八方塞がりか・・・!」


悔しさのあまり手枷で檻を思いっきり叩く

少しばかり鈍い音が響き、手枷が少し欠けた


「ん・・・?」


その木の欠片はまっすぐで割りばしのような形をしていた

それを見た晴れの日は動きが止まった


「なによ。子供じゃないんだから木の棒なんて捨てなさい・・・」


それを拾い上げる晴れの日を見てため息とともに声を漏らす

完全に諦め気味なのか毒舌に鋭さがない

だが、そもそも晴れの日は聞いてすらいない

そしてはじけたように雷火の日に向き直りニヤリと笑いながらこう告げた


「・・・脱走するぞ!雷火!」


「・・・は?」



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