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変革者  作者: 雨の日
第一章~生まれし太陽~
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第二話

第二話


「さて、どこがいい?」


「どこ、と言われましてもここ何もわかりませんよ・・・」


女医、中野 舞はそれもそうね、と微笑んで雄太の体をどこかへ運んだ

エレベーターに乗り、途中で飲み物をもらい、体育館のような場所に連れて行かれる

だが体育館にしては設備が頑丈そうだ


「ここは・・・?」


「見てればわかるわよっ!」


少し興奮気味の中野。仕方なく雄太も体育館の中を覗き込む

すると入り口から雄太と同い年位の男女がぞろぞろと入ってきた

そこにはさっきの曇りの日の姿も・・・


「ふふっ、ここは訓練場よ~?さっきのいかつい人、曇りの日さんが仕切ってやるの。まぁ、見ててみなさいな~」


そう言って中野も座った



それとほとんど同時に曇りの日は煙草を吸いだした

それに続いて何人かも不思議な動きを始めた

帽子をかぶったり、片目を閉じたりと、だ


「あれは制約・・・?」


「そうよ!これから模擬戦みたいね~!」


と、

曇りの両手から真っ赤な煙が現れ、まるで生きているかのように動きだし、少年少女に襲いかかる

それを一人の男の子が耳を引っ張り暴風を生み煙を飛ばす

しかし散ったはずの煙は再び集まり、しかもさっきより大きくなってその少年を包んだ


「あ・・・」


雄太が食い入るように見ていると隣でふふッと中野が笑った、が雄太には聞こえていない

煙に取り込まれた少年とその周辺の少年少女だが、なかから巨大化した一人の少女が現れ煙を手ではじく

そして、その肩に乗っていた少年が手裏剣を投げた

しかし、曇りの日の黒い煙に弾かれる。その煙はまるで鉄の様に光沢をもっていた


「す、すごい・・・」


「ふふっ。さーてっそろそろ次行くわよっ!」


「え!?まだ終わってな・・・いえ、行きましょう」


いつの間にかCGの様な現実離れした戦いを見る事に没頭していた雄太は自分が今の模擬戦にのめり込んでいることを自覚して我に返りこの場を後にした






「・・・どう?これでここの施設ぜんぶよ~」


あらかた全ての施設を見終えると、すでに時間は夕刻だった


「ひろいですね・・・っというか、今日会った人って全員・・」


「変革者よ。わたしもふくめてねんっ」


茶目っけたぷりに答えた

星の一つや二つは舞っただろう


「そう・・ですよね」


この時雄太は、変革者に対する化け物と言う意識を変えつつあった

今日出会った変革者はみな、普通の人となんら変わらない・・・ただ、少し力があるだけだ

迷子になって泣いていた小さな子供

どうでもいい他愛無い話で盛り上がる男子たち

おいしそうにデザートをほおばる女の子

みんな、普通なのだ・・・












「ん、と・・・お世話になりました」


あれから二日雄太の体は全快し普通の生活が余裕でこなせる様になった

そしていよいよ退院(?)の時。雄太の退院を祝ってか惜しんでか、この二日間に出会った大半の人たちが見送りに来てくれた


「えと・・・ありがとうございました」


「いえいえ~また雄太君とは会える気がするわっ。近いうちに、ね?」


なんだか怪しい含み笑いを添えられて、雄太は迎のタクシーに乗り込み自宅へと帰るのだった







「はいよ。ここでいいかい?」


タクシーは雄太自宅のすぐ目の前に停車した


「あ、はい」


多少の距離はあったが思いのほか家から天候荘は近かった。数十分も経たないうちに家に着いた

運転手に頭を軽く下げお礼を告げ、我が家のドアを開ける


「ただいま、父さん・・・・それと母さんも」


雄太はリビングで新聞を読んでいた父親と、仏壇に飾ってある遺影に自分の帰宅を報告した


「雄太!帰ったか!よかった・・・変革者のバスジャックだってな?よく無事で帰ってきてくれたよ!」


強烈なハグ


「お、おう・・・ただいま」


内心・・・複雑な気持ちだ

雄太の母親は元政治家、いや、生前は政治家を務め、おもに変革者に対する問題を中心として考えていた。特に平等社会を謳っていた

しかしある日政索に不満をもったのか変革者のひとりが、母親の一人の時を狙って暗殺を企てたのだった

その結果雄太は父子家庭で育つことになった


「大丈夫か・・・?なんだか顔色が暗いぞ?」


「あ、ううん・・・ここんとこ色々あってさ、変革者ってなんだろうなぁ。って」


「そんなの簡単だ」


案外即答してきた事に雄太はどきっとした

ここで憎むべき相手などと言われたら自分はここにはいられない

そう考えたのだ

しかし答えは思いの外のものだった


「ただ普通の人間だ。ちょっといろんな事が出来るだけの、な」


そう言いながらこめかみを抑える父

と、部屋の電気が一斉に付いたり消えたりして点滅し始めた


「・・・っえ!父さん!?」


「だから言っただろう?ただの普通の、人間だ」


この時雄太は自分が変革者である事に対する恐怖心を忘れる事が出来たのだった


「・・・父さん。大事な話があるんだ」


「・・・あぁ。わかっているとも。是非聞かせてくれ。どんな力を授かったんだ――?」


意を決して、雄太は自分の置かれた状況を

父に告げる事にした――――――

もちろん、父は驚きも軽蔑もせず、むしろ力を授かったことに喜びさえ見せたのだった

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