表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変革者  作者: 雨の日
第二章~偽物妖精の双子~
29/174

第五話


第五話


「はぁ・・・長旅になるとは思わなかったわ・・・」


時は初任務へ出発の日

場所は新幹線乗り場


「しょうがないだろ?最後に見つかったのが富士山の麓ってんだから・・・」


任務の内容はこうだ

まず、最後に亮が目撃された富士山麓に向い手がかりを探す

そこでもし亮を発見したら捕獲。最悪の場合その場で処罰すること

危険を感じたらその場で帰還すること


「はぁ・・・ワープできる変革者がうちにいないのが残念でならないわ」


初の任務で人の死を委ねなれるとはかなり酷ではあるが避けて通れぬ道だ。腹を括るしかないのだろうか

だが晴れの日は死に対して母親のこともあり、あまりすぐには割り切れない


「まぁまぁ・・・新幹線だって一瞬で着くだろ?」


「あんたと隣ってのが嫌なのよ」


少しばかり憂鬱な晴れの日と違い、今日も毒舌は絶好調のようだ

二人の立つホームに新幹線が爽快な風と共に現れる


「さて、乗りますか」


「そうね・・・はぁ・・・」


そして二人を乗せた新幹線が富士山目指して進みだすのであった

はてさて、初任務の行く末やいかに・・・








「うぅ・・・新幹線初めてだけど、匂いやべぇ・・・無理」


「ちょっと、隣で吐いたりしないでよ!」


思いのほか新幹線の中というのは独特な香りで、匂いに敏感な人には少しきついであろう

晴れの日もどうやらこのにおいがだめなようで、すでにグロッキーだ


「はぁ・・・まったく情けないわね・・・手洗いでも行って来たら?」


吐くわけではないが手洗いとは不思議なもので、なぜかこういう時はどこか安心できる場所なのだ


「わかった・・・ちょっと前ごめん・・・」


晴れの日が窓側なので必然的に雷火の日の前を通ることになる

だが、珍しく雷火の日は罵倒せずすんなり足を引いてくれた。思うに、根はやさしいところもあるのではないか


「あ、そこ荷物気を付けて」


「え!?うわぁっ!!」


いや、やはり優しさの対極にいる女だ。こちらを見ることもなく涼しい顔で告げる雷火

晴れの日は雷火の日の用意したトラップと思わしきもの(ただのカバン)に引っかかりバランスを崩した

案の定、廊下側に上体が倒れこむ


「おっとぉ・・・大丈夫かい?」


その時奇跡的に後ろから歩いてきた男に支えられなんとか倒れずに済んだ


「す、すみません・・・うぅっぷ・・・」


「あー君酔っちゃった?大丈夫かい?トイレまで運ぶよ・・・」


親切な男性は晴れの日の肩を持ち歩きを支えながらトイレへと運んでくれた

その一部始終を雷火の日は情けないと言いたげな目を横目にやり、自分は持参した本に目をむけるのだった







「助かりました・・・」


「いいってことよ!それにしても・・・はいちまったほうが楽かもしれんぞ?まぁお大事にな!」


なんとかトイレまでたどり着けた

途中大きく新幹線が揺れ意識が遠のいたが何とか耐える

ここまで運んできた男は気前よく笑って自分の席に戻っていく

しかし晴れの日にその後ろ姿を眺めるほど余裕はない。急いで手洗いのドアを開け放ち、中に入り鍵を閉める

そしてその後・・・静岡県に着くまで晴れの日が席に戻ることはなかった







「あんた、乗り物弱いとはね・・・」


「う、うるせぇ・・・匂いがダメだったんだよ・・・」


少し酔いが残っているようだ

足元がおぼつかない。それに空腹も交じり余計に気分が悪い


「はぁ・・とりあえず、お昼の時間だしそこの蕎麦屋にでもいきましょう」


雷火の日の先導で駅のすぐ近くにある蕎麦屋に立ち寄ることになった

そこでようやく、晴れの日の酔いも少し落ち着きなんとか通常の体調になった


「うお!蕎麦うめぇ!」


「ほんとね・・・おいしいわ」


以外にも雷火の日も賛同し、二人は満足げに富士山麓に向かうことにした




だが、富士山の麓と言えば・・・


「樹海・・・だよな」


「樹海ね」


そう。自殺の名所としても知られる樹海だ

方位磁石も使えなくなる、というのは実は迷信の樹海だ


「さて、と。樹海だろうが何だろうがかんけーねーな!さっさと深髪ってやつを見つけるぜ!」


ぐっと握りこぶしを作る

だが無駄なテンションの高さにあきれたのか雷火の日は少しため息を吐いた


「言っておくけど、あんまりはしゃぎ過ぎてアナザーとかいう組織に見つかるのは勘弁よ?」


鋭い目つきで晴れの日を睨むが、それもほんの一瞬

二人の頭上すぐ近くの木の上に何かが着地する音が聞こえたのだ

それも、人並みに大きい音だ

2人は一瞬で反応し、近くの草陰に身をひそめ、気配を消す・・・

だが、明らかに音の主は木から降り、こちらに向かって歩いてきていた・・・

一歩、また一歩・・・

的確に晴れの日の隠れた草陰に忍び寄っている――・・・






「ここかァ・・・っ!!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ