第一話
第一話
あれから何時間たっただろう
少年にふと、意識が戻った
「あれ・・・ここどこだ?」
回りを見回すが少年の知るところのどこにも該当しない
「あ、やーっと目が覚めたの?お寝坊さんっ」
ベット横のカーテンから何かが放り込まれる
・・・リンゴ?
急に投げられたが何とか両手で包むようにして受け止める
「うん、反応は良好ね。おはよう境くん」
「え、あ・・・おはようございます・・?」
投げられたリンゴを自分の横に置いた雄太はこの女医がなぜ自分の名前を知っているのかと疑問に思う
「『どうして俺の名前を知ってるんだ!?』」
少年・・・もとい境 雄太はドキッとした
もちろんそれは雄太が今考えていた事だからだ
「なんでもお見通しよぉ?今は『ここはどこだ!?どうしてこんな綺麗で可愛い女医さんと二人っきりの環境なんだ!?』とか考えたでしょ~?ふふっ褒めても何も出ないわよっ」
「綺麗で可愛いまでは考え・・」
むっとした表情でカルテか何かで叩かれてしまった
「と、冗談はさておき、貴方の事は調査済みよ。境 雄太君」
つまり名前は既に知られていたということだ
「ちょ、調査!?一気に話が飛びすぎです!つかここどこですか?!」
「そそっかしいわねぇ・・・少し落ち着きなさいな」
半ばあきれ気味でため息を漏らすが口元はどこか楽し気だ
ベッドから起き上がろうとする雄太だが、手と違って何故だか体が言う事を聞かない
「無理よ?あなた、あれだけ暴れたんだもの・・・」
雄太には暴れた、の意味が分からなかった
すると女医が頬に手を当てて小さな声で色っぽく囁いた
「覚えてないの・・・?あんなに、は、激しかったのに・・っ」
雄太の目が飛び出るかと言うほど見開かれた
「いやっ俺そんなっ!えっ・・・!?」
と、この部屋のドアが開かれていささかいかつい格好の喫煙者が入ってきて女医の頭をすぱーんと叩いた
「阿呆、ガキ相手に欲情すな」
「な!欲情なんかしてませんー!」
雄太は置いてけぼりの気分を味わいながらも2人のやり取りを眺めていた
「・・・と済まない、境でいいか?立てないだろうからこちらから来てやったぞ。聴きたい事は山ほどあるだろうがとりあえず俺の話を聞け」
「は、はい・・・」
するといかつい男性は話始めた
「まず、ここは天候荘。神奈川県の変革者を束ね、能力を悪用する輩をとりしまる、よーするに変革者専門警察兼、集合住宅だ」
一呼吸
「俺は曇りの日。ここでは天気に関したコードで呼び合う。まぁその理由は追々としてだ、お前、初めて変革の力を使った記憶はあるか?」
力
おそらくあの時バスジャックに対してつかったアレ、だろうか?
「ほんの少しなら・・・」
「うむ。そうか。簡潔にいえばお前の力は「熱」だ」
「熱・・・」
「お前の力だから細かくは知らんが、銃の引き金を引けば熱を生み出せるようだ」
「引き金・・・変革者に付きものの、制約ですか?」
制約。力を使うに当たって必要な対価、だ
変革者達はその制約を払うことで能力を使うことができるらしい
「そうだろうな。俺ら変革者は力に目覚めた時基本的には暴走する。記憶はないだろうが、お前、高速道路溶かしまくったからな?修理はまにったからそこは気にしなくていいが」
「い、いやいや・・・俺が変革者って・・・そんなわけないじゃないですか!」
信じられないと言った絶望的な顔をした雄太だが現実は残酷
受け入れられない心とは裏腹にすでに雄太は変革者として目覚めてしまっているのだ
「残念だが事実だ。そして我々はお前を仲間に迎えたい。嫌なら断ってくれてもいいが、多少の監視は覚悟してほしい。お前が犯罪者にならないとも限らんからな」
「断ります」
即答だった
しかし、迷いの意志は見られない。さらにその眼は変革者に対して明らかに憎悪の意志が込められていた
「ちょ、雄太君?もう少し考えようよ・・・?あなたの力がまたぼうそ・・」
「やめろ中野。こいつの意志だ」
雄太は、変革者になった現実を理解したくないようだ
自分が化け物になるなんて、夢にも思いたくもないのだろう
「わかった。しかし十分に動けるようになるまではここにいろよ?お前は世間的には重症で集中治療中だ。すぐ帰っては回りも怪しむ。それまで、ここの施設を自由に見てもらって構わない」
それだけ言い残すと彼は立ち去ってしまった
「俺が・・・変革者・・・」
「・・・雄太君、せっかくだしここの施設まわる?車いすくらい押すわよっ」
正直頭の中が混雑していて、そっとしておいてほしかったが気分紛らわしに出かける事にした
それに、中野の目はどこか申し訳なさそうだったからでもある
まだ2,3話会話パートですね・・・
早めに投稿しますので!