第十八話
第十八話
一歩、また一歩と歩み寄る雷の日にたじろぐ2人
まさに万事休すだ
「ら、雷様・・・見逃してくれたりしませんかね・・・?」
「んー・・・駄目かな?ごめんね美咲ちゃん!」
両手を顔の前で合わせる雷の日。まぁ試験官として当然の行動だろう
だがその仕草からでも雷の日の余裕が伝わってくる
雄太たちは冷や汗すら掻いているというのに
「雷さん・・・本気で追いかけてきます?逃げたら・・・」
じりじりと近寄ってくる雷の日に対して雄太と美咲はゆっくりとポジションを整えていく
「走りは本気だけど能力はそんなつかわないよ~本気出したら鬼ごっこどころじゃなくなっちゃうしね」
少しだけ肩の力が抜けた雄太
もし能力を使われたらひとたまりもない
「それをきけて安心しました。道重!」
「命令しないで!」
だが、能力を使えないのであれば少なくともチャンスはある
そう思いながらも美咲は警棒で天井を思いっきり叩きつける
それにより天井が崩れ川の水が流れこんで・・・
こなかった
そう、水は一滴も垂れてくることはなかったのだ
「な・・・!?」
「あちゃー・・・そういう作戦だったか!考えたね~でも、ごめんな?川の水は凍っちゃってるんだ」
この川は相当大きい
それを全て凍らせるなどかなりの実力者だ
「てなわけで降参してくれるかなっ」
雷の日は2人目掛けて遂に走り寄った
しかしここで負けるわけにはいかない2人は示し合わせた訳でもないが同じ目的を見出した
雄太は雷の日の進行方向の足元に両手の銃から一斉に熱線を放ち大きな落とし穴を作った
しかし天候荘トップがこんな即席罠に引っかかるはずもなくまんまと飛び越える
が、それも考えてある
「雷様!ごめんなさい!!」
美咲は腰に収納してあった長い紐を投げつける
そしてそれはまるで意志を持つかのように雷の日にまとまりつく
「あ!やべぇ!?」
「ほんとごめんなさい!!」
あの強気な美咲がなんども謝りながら紐に練りこんである自分の体組織へかかる重力を引きあげた
その結果――
「のぉぉぉぉぉ!?」
雷の日は成す術もなく落とし穴に落ちて行った
なにせ空中で突然重りをつけられたのだ。落ちないほうがありえない
だがもし本気で能力使われたらこんな穴直ぐに出られるだろうが試験だから能力はさほど使わない、というハンデを利用した方法だった
「ごめんなさぁい・・・」
「いつまであやまってんのさ・・・ほらここは捕まるかもしれないから一旦外でよ」
美咲はいまだに雷の日に対する攻撃を悔やんでいた
これが世に聞くツンデレなのだろうか・・・
穴からでて残りの時間をやり過ごそうとした瞬間だった
ピーピピーピーピピー!
美咲の腕時計が鳴り響く
「うおっ?」
「・・・終わった」
「へ?」
「終わったわ!逃げ切れたのよわたし!」
そこに達が入らないのは美咲の性格からしてあきらめている雄太
だが、それでも喜びを感じるには十分だ
「そうみたいだね・・・っと」
声の主は雷の日
タイムアップと同時に能力を開放して穴から一瞬で脱出したのだ
もし能力ありで鬼ごっこしたらと思うとぞっとした雄太だった
「いや~やられたな・・・それにしてもおめでと2人共!とりあえず今から駐屯地まで戻ってそこでまた指示出すよ!じゃね!」
言い終わると雷の日は指を一回鳴らして、自分の体を稲妻にし、穴から出て行った
「す、すげぇ・・・変化できるのか・・・」
「はぁ?あんた何当り前の事言ってるの?雷様をなめないでよね」
さっきまでの歓喜はどこへやら
「え!?な、なめてるわけじゃ・・・」
しかし雷の日の事に関してはこれまで以上に融通が利かない美咲に雄太はただただ罵倒されるだけであった
第二試験鬼ごっこ
雄太美咲ペア、クリア―――――