其ノ四
其ノ四
「雷様、入りますよー?」
ドアをノックしてノブを回す
しっかりと手入れされている木製の扉はきしむ音一つなくすんなりと開いた
室内には既に雷の日、雨の日、曇りの日。それからいつ到着したのか荒天組の三人も茶色い大人数が座れる長ソファーに座っていた
「雷火、晴れ、久しいな」
久しぶりの再会である曇りの日が旧友とあったかのような笑みで二人を迎えて、右手を指し伸ばしてきた
当然拒む理由もない二人は曇りの日の元まで歩み寄りその手を交互に握り握手を交わした
「よし、これで全員揃ったね。ごめんね二人とも、いきなり呼び出して」
「いえ、問題ないですよ」
申し訳なさそうにする表情は一切変わっていないんだなと不変の事実に少しうれしく思った晴れの日がソファに腰を下ろしながら言葉を返す
「晴れ!雷火ねーちゃ、やほー!」
「天泣・・・俺のことは呼び捨て相変わらずだな」
「晴れは晴れなの!!」
天泣の日は元気いっぱいに手を振って二人に笑顔を振りまくが、なぜか一年前から晴れの日だけは呼び捨てなのだ
本人に理由を聞いてみたことはあるのだが、なんとなく的な返答しか得られず渋々晴れの日も諦めることにしたとかなんとか
「天泣、今から大事なおはなしおはなしだからしーっ!」
玉霰の日が口元に人差し指を充て、天泣の日もそれに習ってお口チャックの真似をして口をふさいだ
それを微笑みながら見ていた雷の日は咳を一払いしたのちゆっくりと口を開いた
「晴れと雷火ちゃんは知らないかもしれないけど、ラストワンについて、ようやく全貌が掴めた」
ラストワン
これまで名前しか出てこなかった代物だが、ここにきて紐解かれることとなる
「らすとわん??」
当然、身に覚えのない雷火の日は首を傾げたが、なぜか晴れの日の反応は違った
「あれ、どっかで聞いたことあるな」
「まじか晴れ。俺がずっと極秘で調べてきたモンだぞ?」
「うん・・・でもなんか昔に聞いたことがあるような・・・ごめん、思い出せないや」
全員の視線が晴れの日に一瞬集まっていたのに耐えられなくなったのか晴れの日は思い出すことを止めてお手上げといいたげな両手を上げた
だが誰もそれを咎めようとはせず、ただ次の言葉を待った
「雷火ちゃんは初耳かな?えと、まずラストワンっていうのは正直言ってこれまですべてが謎だったんだ。効力だけはなんとなく分かっていたんだけど使い方とかが、ね。でも需要なのはそこじゃない。ラストワンこそがアナザーの最終目的だってこと」
最終目的
つまりはアニメの魔王の野望でたとえれば世界征服、だ
アナザーはラストワンなるもので何をしようとしているのか。それも分かったのだろうか。それより、ラストワンの力とは何なのか
「ま、とりあえずいきなりで訳分かんねぇだろうが聞くだけ聞いてくれや」
雷の日に代わって次は雨の日が話始めた
「ラストワン。名前には意味はないと思ってくれ。便宜上そう呼んでるだけだ。んで、まずはその力なんだがな・・・この世とはまた別の世界へのゲート、らしい」
この世とはまた別の世界へのゲート
正直言って意味不明だ
だが、それが当然の反応だと雨の日が乾いた笑みを漏らし、さらにこう続けた
「まぁ、誰が作ったのかは不明だが、ソレは今活動していない。だが、発動条件があってな、太陽系すべての惑星が一直線に並ぶ惑星直列の時、だ。しかもそれはもうすぐだって噂だぜ」
「つーまりはもうすぐアナザーとあたしらの全面戦争ってか?つかそもそもラストワンってのはどんな見た目なんだよ」
「風花、いいこと聞いてくれた。全面戦争は否定できないし確率としちゃかかなりたけぇ。んで形の方なんだが、実はまだ分からない。アナザーが持っているのかも知れないが今のところそんな情報はない」
「情報って、アナザーに天候荘の誰かが密偵に行っているというわけかしら?」
雷火の日が気になる疑問を隙を見つけて投げてみた
だが、雨の日と雷の日、それから曇りの日の三人はその質問が来ることを嫌がっていたようで眉をしかめた
「ごめんね雷火ちゃん、密偵の仕事だから誰とかどうとかは言えないんだ・・・あ、一応いって置くと霙ちゃんじゃないから安心して」
霙の日ではない。という事実を耳にした途端、若干雷火の日の緊張がほぐれた気がする
なんだかんだ仲のいい彼女たち二人。雷火の日はいつも霙の日に対して塩対応気味ではあるが心中ではしっかり友として認めているようだ
「ん、まぁそりゃ答えられないわよね。ごめんなさい、話続けて」
「よし。んでラストワンの力は別次元とかパラレルワールドへいけるって認識で十分だ。問題はその用途だ。やつら世界征服でも企んでいるのか知らねーが、別世界から軍隊要因を捕まえようって魂胆だ」
そして一呼吸開けて最後の言葉をこの場にいる全員の胸に突き立てた
「止めるぞ。なんとしてでも。そのためにはまず、デュラハンとシルヴァ、お前たちの正体について聞きたい。晴れと雷火、悪いんだが二人を出してくれないか?」
「ん、わかった」
晴れの日が目を閉じ、雷火の日もおとなしく従う
数秒の沈黙の後、2人が目を覚ました時その眼に宿る魂は晴れの日と雷火の日で無く、デュラハンとシルヴァだった
「・・・単刀直入に聞こう。お前たちの正体は」
身体を彼らの預けている間、二人の意識は睡眠状態に近いものとなり、会話は一切聞こえていない
それを、雨の日達は利用したのだ
つまり・・・彼らにはきかせられない、聞かせたくない、事実を隠すために―――