其ノ二十ニ
其ノ二十二
「あぁもうお前らこえぇよマジで!おいら死ぬかと思った・・・」
もう動けないほどに力を使い切った彼らはその場に座り込んだが、白露の日ただ一人はキメラを見下ろしその手に超圧縮された力の塊を握りしめて大きく振りかぶっていた
「白露・・・止めはあなたに譲るわ。思いっきりやっちゃって」
「あいよっとぉぉぉぉぉぉ!!」
美しいフォームで投げられた力の塊はまっすぐにキメラの眉間に突き刺さり、視界が真っ白に塗りつぶされるほどの光量と脳内に直接鳴り響くかのような轟音を生み、キメラの全身を力の渦が飲み込んだ
「がふっ・・・ぅぅるぅ・・・」
時間にして一秒。だがたったその一秒でキメラの全身は真っ黒に変色し、後ろ足だけで立ち上がったまま白目をむいてピクリともしなくなった
その挙動を確認した白露の日は舌で唇を軽く舐め、振り返りグッと親指を立てた戦いの勝利を告げた
これで・・・戦いは終わった
「・・・いや!まだだ!」
キメラの目に黒目が戻ったことを雷の日が視界の端でとらえ、震える声で叫んだ
「まじかよ・・・あの犬っころ本気で不死身なんじゃねぇか・・・」
「いいえ。確かに弱ってるわ・・・あと一撃何かあれば・・・きっと・・・」
だが、ここに居る白露の日以外の変革者はもう戦えるほどの気力が残っていない
このままキメラが議事堂に体当たりでもして崩落させれば全員巻き込まれてゲームオーバーだ
「黒ォ!コイツ斬れぇぇぇぇ!!!」
下から聞こえた渋い声に思わず体が反応し、残るわずかな力で下から投げられた銀色の巨大なカプセル型の物体をキメラのすぐ目の前で薙刀で切り裂く
その瞬間、中から嫌なガスの臭いが溢れ出てきた
とっさに黒雨の日は息を止め自分の体を水で覆い、身の安全を確保する
「今の声・・・雷雨さん・・・っ」
雷の日には声の主が分かり、生きていたことに歓喜を現す。だが、今投げたものが何なのか、それに気づいたのは曇りの日だった
「L・・・P・・・ガス・・・なるほど!!白雨、俺らも水で包め!!」
「・・・なるほどね!!いいわよ、やりなさい!!」
白雨の日に意図が伝わると同時に曇りの日はポケットからライターを取り出し火を付けたまま思いっきり投げた
その火は、LPガスボンベから漏れたガスに引火し、キメラの目と鼻の先で大爆発を巻き起こす―――
「が、あぁぁぁぁぁぁぁうぅぅぅぅ!?」
さらに、離れた位置から雷雨の日が次々とガスボンベを投げ込み、ますます爆発は過激化し、ついにはキメラの原型すら残さず木端微塵の肉塊へと変貌させてしまった
「・・・今度こそ、おわ、り?」
「あったりめぇよお前さん達、時間かかって悪かったな。中々義足の元にするものが見つからなくてな・・・」
義足
そう、雷雨の日の右足は・・・銀色の義足へと変わり果てていたのだ
「お、おい雷雨!お前その足・・・!」
「落ち着け黒。俺の能力忘れたか?目に映るもののコピーだ。あのキメラに吹き飛ばされた時によ、足が瓦礫に挟まっちまってなぁ。仕方ねぇからぶった斬ってパソコン探して義足検索してきたんよ」
自分の足を切り落とし、さらに義足を作り装着しガスボンベを持ってきた雷雨の日
その行動を聞いた彼らは、自分たちの怪我や議事堂の被害よりもなにより、雷雨の日の生存を喜んだ―――