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変革者  作者: 雨の日
第一章~生まれし太陽~
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第十四話

第十四話



『鬼ごっこです!』


ざわめきが起こる

当然だろう。確かに鬼ごっこは体力を要するが、試験に向いているかと聞かれれば謎だ


『ルールは簡単!この島全土、もちろん昨日の迷路も使ってよし!空だってよし!ただし・・・』


だが雷の日の説明を聞く限り単純に追いかけあうだけでは事足りなさそうだ

一呼吸置いてルールの説明が再開する


『昨日のペアと行動を共にしてもらう!もちろん逃げる際にはぐれるのは仕方ないが、距離が離れると、これから配るアクセサリが激しく鳴る仕組みだから注意するように!』


これに一番落胆したのはやはり美咲だろう

雄太には美咲のため息が聴こえた気がした

そして、腕に鬼と書かれた腕章を付けた隊長が腕輪を配布してくる


『あ、ちなみに鬼は隊長格5名と、ラスト1時間で俺と雨、曇りが出陣する!それじゃ、いまから音楽が流れるからそのすきに隠れて!鳴りやんだら鬼行くからね!制限時間は3時間!んじゃ、音楽スタート!!』


腕輪が配り終えたころに再びアナウンスが鳴り、受検者達は一斉にその場から散って行った

雄太も美咲と共に森へと向かおうとするが美咲は別の考えをしていたようだ


「あんた、もうちょいましな考え持ちなさい。森の中なんて日頃から鍛えてる隊長達に追いかけられたら直ぐに詰むわよ」


たしかに、言われてみればそうだ

雄太は訓練として森での走り方を学んでいない

対して隊長達は森での戦闘用にフリーランニングを学んでいるはずだ


「確かに・・・でも、どこ逃げる?」


「その頭には何が入っているのかしら?綿?」


散々な言われようだ。キチンと脳みそが詰まっていると反論したいが悔しくもそんな時間があるわけではない


「なら道重は案あるのかよっ」


「あるわ。海よ」


太陽がきらきらと反射して

青く澄み渡り

遠くでイルカが跳ねただろう

そう、海――――――




「・・・海!?」


「えぇ。海って言うよりは浜辺ね。そこなら鬼を直ぐに見つけられるし、逃げる時も一直線ならわたし負けないから。あぁ、その時はあなたは吹き飛ばして運んであげるわ」


「お。おう・・・一理ある」


とりあえず、美咲に従わねば命が無い事を雄太はすでに知っているので、おとなしく着いていくことにした

だが、浜辺というのは実はかなり鬼の裏をかけるかもしれないと雄太は感心もしていた

そのことに自覚したとき激しく悔しがってもいたが・・・


浜辺に到着したが・・・


「だっれもいないな・・・」


「そうでもないわ。あそこにほら、バカが一匹」


誰もいないと思われたが美咲の指差したさきにはパラソルが見えた

しかし、受検者がこんなところでのんきにバカンスもあり得ない。ならば脱落者か?とも雄太は考えたが、それにしては人影が無さ過ぎる


「誰だろ・・・?」


「決まってるでしょ、こんなばかなことする人なんて」


ほぼそれが答えだろう


「・・・雨さんか」


自分が雨の日の教え子であることが急に恥ずかしく思えてきた


「あんた、あのバカにさんなんて付けてるの?やめときなさい」


「んーそうなんだけどさ、やっぱ一応俺の担当教師だったし・・・」


美咲の目が落胆の色に変わった


「道理であんたからもあのバカの匂いがしたわけか・・・」


「何おう!俺は比較的普通の人じゃい!」


「あなたが普通なら一瞬でわたしは僧侶にでも慣れるわね」


言いたい放題の美咲

だが、僧侶は言い過ぎだ。それに美咲も中々に毒づいた性格をしているというのに、と雄太が内心で考えていると


「・・・毒で溺れ死にたい?」


「読むなよ心を!!」


「散々言われてるなぁ新人」


何時の間に現れたのか背後にはアロハシャツにサングラス、そしてかき氷を食べる雨の日の姿があった

相変わらず気配を消すのが上手い。鬼ごっこで背後から接近されても気が付けないだろう


「雨さん・・・どこまでも夏を楽しんでますね」


「まぁな。こうでもしなきゃつまらんよ」


「あーもう!ほんとむかつく!!この天パ!こっちは必死だってのに!」


天パ、とははたして相手を怒らせるに対して適切な言葉だろうか?

答えは、否だ


「はっはっは、天パを笑うと天パに捕まるぞ~。さらに天パとはステータスさ!」


「はんっ、あんたにだけは絶対何が何でも捕まるかっての。それに天パには何の希少価値もないわよ」


明らかに一色即発

いや、雨の日は何時も通りだからまだ即発ではないにしろ、美咲の方は何故か雨の日に対して一歩も食い下がらない


「ほ、ほらとにかく今は逃げ先確認しなきゃ・・・雨さんにはばれちゃったからさ」


「安心しろ、俺はそんなインチキなんてしないさ。残り1時間で正々堂々と一から戦うぜ」


正直雄太も美咲も雨の日からは決して逃げられないと考えた

そりゃ、単純な足の速さでならば少しとは言え勝機は生まれるが

変革者ともなるとそうもいかない


「だから、お前らはとりあえずここから離れろって。流石に俺も残り1時間で鬼になるしよ」


「いわれなくても離れてやるわよ」


「じゃぁーまた移動しますか・・・」


雄太と美咲は少し作戦会議をして、結局島の反対側の、浜辺に行く事にした

最期に雄太は雨の日を振り返るがやはり優雅に海を眺め気持ちよさそうに日光浴をしていた

これなら、美咲が切れるのも無理は無い。そう思った


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