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変革者  作者: 雨の日
EpisodeⅠ~昨日は今日の昔~
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其ノ二十

其ノ二十


「さて・・・境議員さんよぉ。一人で国会内うろうろしちゃぁ危ないよ?」


「はっ!あなた達みたいな犯罪者がいなければ一人で散歩しようがカラオケ行こうが焼肉屋行こうが問題ないのよ!」


「そ、それはある意味危ない奴だ・・・」


両手を縛られ、屋上の端に追いやられながらも少し小太りの低身長な男と対峙し威厳とした態度を崩そうとしない境議員。だが、変革者が一押しでもすれば地面目がけてまっさかさま。命はないだろう


「まぁ、いい。変革者と人間の平等なんぞ腑抜けたこと抜かしやがってテメェは目障りで仕方なかったんだよ。いいか?テメェら人間と違ってな、俺ら変革者は選ばれたんだよ!神ってやつにな!各がちげぇんだよ!!」


「あなた達みたいな下衆な変革者と私達を一緒にしないでくれるかしら」


「あん!?」


その時、議員を守る盾の様に五人の変革者が降り立った

そして、戦闘の白雨の日がその長い髪をなびかせ威嚇的に組んだ腕を組み直し、男を見下すように見下ろす


「ちょうどいいわ。あなた達のボスは誰?正直この戦いもう決着つけたいのよ・・・」


すると男が突然自信たっぷりに胸を張りフンと鼻を鳴らして自分を指さした


「俺がこの作戦のボスよ!言っとくがつえぇぜ?お?やんのか?」


一同のため息が綺麗に重なり周囲の二酸化炭素濃度を上げたことなど言うまでもあるまい。五人相手にして強いなどと豪語する輩が本当に強いことなど映画俳優のジュッキ・チュンくらいしかいないだろう


「どこがどう強いのかさっぱり見当がつかないけれど、あなたがボスだというなら戦うほかないわ。覚悟なさい」


「そらぁ無理だ!俺の能力は化け物の創造!戦うこと自体は苦手なんだよーだ!!」


果たしてそれは自慢できるのかと突っ込みを入れたいところだが、敵のペースに飲まれてはならないと思いとどまり五人は応戦体制を取る


「まぁ、実はすでに召喚してんだけどな!!後ろもしっかり見張った方がいいんだぜ!!」


しまった。そう思ったときにはもう手遅れなのが戦場と言う物だ

背後に足場がないからと油断していた。その隙を突かれ、境議員の身が何か得体のしれないおぞましい生き物に引きずり込まれ、ぐしゃと言う身の毛のよだつ音を立ててその場から姿を消してしまった・・・


「しまっ・・・」


「私としたことが・・・四人とも!今はこいつを倒すことに専念!散開して攻めるわ!あの男は無視!」


「・・・おう」


「はい!」


「了解した」


三種三様の返答と共に、疲労した体に鞭うって散開し、それぞれ敵の全容がみえる位置に移動した

そして、彼らが目にした生き物は・・・獅子の頭に羊の体、蛇の尾をもついわゆるキメラだ

その大きさは議事堂の横に立っているだけで頭部がはみ出て見えることからも相当大きい


「こいつぁまた面倒な奴だなおい・・・」


「雷雨、前衛で突っ込んで!雷、頭に一発お願い。曇り、錯乱。黒はまだ動けないでしょうし程ほどに」


黒雨の日は先の戦闘で大分消耗しており、誰がどう見てもこのキメラと戦うには足で纏いだと判断するだろう

もちろん本人もしっかり理解しているので舌打ち程度に反抗し、おとなしく遠距離を構えた


「行くわよ!!」


指示通り、雷雨の日が議事堂から飛び込み持ち前の大太刀で胴を一閃。そのすぐ後に空から周囲全てを眩く照らす巨大な雷がキメラの頭部を撃つ

だが流石は神話の怪物、大したダメージにはなっていないようですぐに狙いを雷の日に定めるも、その視界に曇りの日の煙が小規模に大量に展開されうっとおしさから意識がそれる


「水圧でいけるかしら・・・」


ぼそりと呟いた白雨の日がキメラの全身をすっぽり覆うほどの水球を落とし、その体を包み込み、能力で水圧を高めていく

水中ではキメラの苦しそうな声が聞こえてくることからダメージはあるようだ、が。キメラの怪力は白雨の日の制御のキャパシティをはるかに超え、水の檻をぶち破って外にとびだし耳を劈く雄叫びを上げた


「グルァァァァァァァァ!!」


「うっせぇな・・・!」


屋上、と言うよりかは屋根の上から黒雨の日が高速回転する手裏剣を投げつけ、顎を切り裂く


「ルァァッ!?」


顎にいきなり不快を感じ、キメラは思わず雄叫びを止め、数歩後ずさった

それを好機とみなした雷雨の日が足元に駆け寄り、深々と大太刀でその獣の足を深々と貫いた


「もういっちょ・・・んな!?」


「ルァァン!!」


大太刀を引き抜き、血しぶきが地面に落ちるより早く次の斬撃を繰り出そうと動いた雷雨の日の姿をキメラは嗅覚で察し、刺された方とは逆の足で思いっきり叩いた

その攻撃を全身に受け、衝撃で意識が吹きとびまるでおもちゃのように体が宙を舞い、議事堂の壁に穴をあけ、さらに扉さえも破壊してようやく停止した。もちろん、生死さえ怪しい


「雷雨!!」


真っ先に叫んだのは黒雨の日だった

滅多に感情を大きくあらわさない黒雨の日が叫んだことに一瞬周りは驚いたが、雷雨の日の戦闘不能を目の当たりにしたあの瞬間にこのキメラに対する警戒心をさらに引き上げていたので、すぐにキメラに向き直る


「黒、雷雨の事が心配なのはわかるけれど今はキメラが先決よ」


「・・・分かってる」


雷が落雷や麻痺でキメラに対し攻撃するもむなしく、効果的なダメージは正直見込めない

この面子で一番の一撃あたりの破壊力を持つ雷の日の攻撃がダメとなると正直打つ手がないのだ

だが、ここで諦めては議員や議事堂だけでなく近隣に住む一般人にも被害が出るだろう

それは絶対に回避せねばならない


「グルルルルルル・・・」


低く唸り、誰から殺すか狙いを定めるキメラに冷や汗を流す黒雨の日を沈む夕焼けが紅く照らす


「・・・黒、辛いでしょうけど少し動けるかしら。もうすぐ日が暮れて月が出るわ、白露が動き出す。それまで時間を稼いで」


「・・・俺は俺のやりたいように動く」


「ちょ、黒!!」


白雨の日の指示に従うことに嫌気がさしたのか屋上から跳び、薙刀を構えてキメラ目がけて切りかかる

その光景を見た曇りの日と雷の日はやれやれまたかという気持ちでいっぱいだったらしい

だが、それでも仲間であることには変わりない。しっかりと援護するつもりだ


「白ちゃ―ん!」


「白露!!もうすぐ月が出るわ!そしたらあなたの力であのキメラ、吹き飛ばすわよ!」


白露の日。天候荘に所属している変革者で、性別は不明

何が不明なのかというと、陽のあるうちは女の子なのだが、日が暮れると同時に性格が男になるのだ

それ故、どちらが真の性別なのか誰も知らない。服装も両性着れるもので顔も中性的。まさに謎だ

だがその力は月明かりの元で使える稀有な力で

片手で受けた攻撃を全て吸収し、倍にして逆手からエネルギー体として扱える強力なものなのだ


「りょーかいりょーかい!!で、黒ちゃんは相変わらず一匹狼?」


雷の日、曇りの日が黒雨の日に合わせて援護を送る中、自由奔放にキメラを切り続ける黒雨の日の姿を見た白雨の日はふぅ、とため息をついて首を縦に振った


「大変だね・・・それじゃあたいは月あかりのいい場所に行くから!また後で!」


そう言って走り出した白露の日に軽く手を振った白雨の日はキメラに向き直り水での応戦を開始した


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