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変革者  作者: 雨の日
EpisodeⅠ~昨日は今日の昔~
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其ノ十九

其ノ十九


「影・・・それに質量を持たせるって訳ね」


大きく後ろに跳び、つい先まで居た場所に影が深々と突き刺さる

その光景を額に汗を流しつつ見ていた白雨の日はニヤリと口角を上げ、久しぶりの強敵に胸を弾ませた


「そこまでわかるんだぁ・・・凄い凄いっ・・・けど死んじゃえぇぇ!!」


両手を胸の前でクロスさせ突き出す。その動きに合わせてか、杏の影が逆巻く炎のように白雨の日目がけて螺旋状に襲い掛かってきた

しかし威力こそ恐ろしいが白雨の日の水の前ではまあまあ中堅レベルなのだろう


「直線的・・・まるでうちの真っ黒クロ助さんね」


ふぅ、と軽くため息をついた白雨の日は一切動じず一切動くことなく意志の力だけで水を動かし、見事に弾き飛ばした


「面倒な水・・・でも、それがまたイイィっ!」


「イカレちゃってるわね・・・まぁいいわ。影使いなんて聞くだけで強そうな敵、好きよ」


杏は影を自在に操り、白雨の日は水を自在に操る

互いにその場から一歩も動かないタイプの変革者であるため、展開される闘いは能力同士の打ち合いだ

何匹もの龍となった影が鋭い牙を剥くものの、白雨の日の生み出す朱雀がまるで燃やすかのように影を消し飛ばし、杏を襲う


「・・・これが、白の本気」


雷の日に肩を貸してもらいながらうっすらと映るその眼でしっかりと白雨の日の戦いを目に焼き付けその正確さ、技術の高さに感動さえ覚える


「ふふっ、黒。よく見てなさい?同じ水使いとして」


「・・・俺は形質派だ」


「おっと、それもそうね」


目にも留まらぬ攻防であるというのにも関わらず、白雨の日は余裕で満ちているようにしか思えない

だがそれも、すぐに打ち砕かれることとなった

陽が雲に隠れてしまったのだ。そう、つまりは一面陰でおおわれる・・・


「・・・あは。いい気分ぅ」


狂気に満ち溢れたその笑顔が周囲全ての影を支配し、イカの巨大触手を生み出すまでそう時間はかからなかった


「あー・・・これは不味いわね」


「みてぇだな?」


その時、図太く低く、落ち着いた声が聞こえ周辺の影が数本黒いちりとなって砕けたのだ

当然、正体は


「雷雨・・・共闘お願いできるかしら?」


そう、雷雨の日だ

その手に自分の背丈を軽く超える大太刀を軽々と持ち、上から目線のおなじみ態度で白雨の日の提案を笑みで応える


「うぅぅっ・・・また一人敵がふぅえた!!あははっ・・・!!」


「うへぇ・・・気持ちワリィ敵さんだなぁおい」


「そうなのよね・・・雷雨、私が触手防ぐから本体をお願い」


「あいよっ!」


それを合図に雷雨の日は一気に駆け出し、それに伴って触手も四方八方から襲い掛かる。だが、雷雨の日はその触手には目もくれずただ一直線に杏の元へと走り続ける。その表情には余裕の笑顔さえ浮かんでいるのだ

もちろん、それは白雨の日に対する絶対的な信頼であり、白雨の日も信頼にこたえることなど容易い。宣言通りに白雨の日は触手に対抗する、似たような触手を産み、襲い掛かる触手の動きを止め、まるで蛇が締め上げるように巻き付きそのまま砕く


「え、あ、ちょ・・・影が!?」


「嬢ちゃーん・・・影の力良い能力なのにこんな国会転覆なんぞに使うなよぉ持ったい・・・ねっ!!」


大きく体を捻り生まれた円運動により空気すら切り裂く大太刀が杏の体を、盾となった影毎切り裂き、鮮血で周囲を赤く染め上げた

その一撃。それでこの戦いに勝敗が着いたのだ


「流石ね。助かったわ」


「なぁに、きにすんなっての。それより!白露、霖、霧の三人が今中で人質になってる議員を探してんだがよ、なにせ数が多くてな・・・お前さん達も中に来てくれねぇか?」


指揮官でもある白雨の日は少し考えるようなそぶりを見せ、沈黙が生まれたがすぐに答えを出した


「そうね。外はもう雑魚ばかりでしょうし。黒、雷、曇り、中の制圧に向かうわ。でも消耗してるだろうから後ろからの援護に徹して」


白雨の日の言葉に少々口惜しさを抱えながらも三人はうなずき、雷雨の日を筆頭にして国会議事堂の内部へと歩みを進めていった





内部は既に火の海。壁には変革者の物か議員の物かも分からない血液で赤く染まり、死体の匂いがひどく鼻を突く


「この戦い、どうなれば俺たちの勝ちになるんだ・・・」


曇りの日がぽつりとつぶやき、それが聞こえたのか白雨の日が答えた


「そうね・・・敵の総大将を倒すのがセオリーだけれど、正直誰がボスか見当もつかない。一応の目標としては議員の全退避かしら」


「おっと、全員止まれ」


雷雨の日が手で四人を制し、曲がり角からそっと奥の通路を覗く

その視線の先には敵の変革者が議員三人に向けて不吉な力を溜めはじめているではないか


「黒、お前さん動けるか?」


「あ、あぁ・・・一応は」


「うし、俺は右の二人をやるからお前さんは左の男頼む。行くぞ・・・3,2、GO」


合図に合わせ、黒雨の日は薙刀を生み出し廊下に飛び出す

一歩遅れて雷雨の日も続き、変革者達が気付くより早くその命を一撃で刈り取り寸でのところ議員の救出に成功したのだ


「良い動きだったぞ」


「うっせ」


「あ、あの!」


薙刀を消し、雷雨の日は大太刀をどこか異次元にでもしまうように消し去り助けた議員の安否を確認し始める。その一人が切羽詰った顔で二人に迫り、震える唇を必死に動かし言葉を紡いだ


「俺らは味方だ、安心しな」


「い、いえ・・・ちが、ちがくて・・・おく、お、おくじょうで・・・境議員・・・が」


「二人ともっ!!急いで屋上に行くわよ!!」


議員が屋上を示した時だった。白雨の日が何を感じたか、窓から上を見上げ今にも屋上から突き落とされそうな議員を一人見つけたのだ


「乗れ!」


機転を利かせた曇りの日が窓の外に五人が十分に乗れるほどの大きさの雲を産み、飛び乗った

それに続いて他の面々も次々と飛び移り最後に雷雨の日が飛び乗ったのを確認すると屋上目掛け一気に急上昇していった




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