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変革者  作者: 雨の日
EpisodeⅠ~昨日は今日の昔~
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其ノ十八

其ノ十八


「さて・・・いきなりで悪いんだが黒さん。俺は正直言って攻撃力が低い。後衛での援護に回る」


「好きにしろ」


首を左右に倒し骨をごきごきと鳴らして騒ぎを聞きつけた変革者達を前に戦闘態勢を取る黒雨の日筆頭の三人。雷雨の日は中に進撃するため、目にも留まらぬ速さで敵軍を突っ切り国会議事堂内に突入していったのが見えた

そんな中、あまり気の長くない変革者がさっそく攻撃を仕掛けてくる。それに続いて三人ほど銃器を構えて突撃姿勢を取っていた


「貴様等変革者だな!報告書にあった天候荘とやらの連中か!?」


突撃しながら質問を投げかけるが、三人は誰一人として答えるつもりはない。その代りと言っては何だが、黒雨の日が空気中に含まれる微弱かつ少量の水分を手元に一気に収束させ身の丈ほどの薙刀を生み出す


「・・・開戦、だな」


「何を・・・ぐあぁっ!?」


小さく呟くと同時に、突撃兵の剣筋の下を潜り抜け薙刀を振り上げて胴を切り裂いた。下から舞い上がる鮮血は、この戦いの火蓋には十分だ

血気盛んな変革者達はその攻撃を目にした途端血相を変え、完全に三人を敵とみなした

だが、その瞬間辺り一面が黒煙で覆い尽くされ変革者達の統率が乱れる


「な、なんだこれは!?おい!風の能力者は・・・」


「俺が何とかする・・・っうううぅ!?」


「やらせないよ?」


この煙を吹き飛ばせるであろう変革者が能力の発動に入ったその刹那、雷の日が放った落雷によりその男は全員黒こげで地に伏せた。だが、その光景も周囲には見えておらず徐々にパニックに陥る変革者達


「・・・騒いでくれるだけ狙いやすいな」


「ぐあぁっ!!」


無論、黒雨の日達にも変革者達の姿は見えていないが、これまで訓練してきた気配の感じ方で、なんとなくではあるが人の位置がわかる。さらに言えば、パニック状態で声を荒げながらわめいてくれているのでなおさら見つけやすい


「えぇい!!ガキが調子に乗ってんじゃねぇぞ!!」


「ちっ・・・風か。黒さん、雷!一旦引いてくれ!」


自分の煙が吹き飛ばされるのを感じ取った曇りの日は二人に一度撤退するように命じたが、味方に対してもあまり心を開いていない黒雨の日だけは言うことを聞かず晴れ行く煙の中一人、変革者達を切り続けていた


「黒ッ・・・曇り、できるだけ黒の周囲を隠して!あれだけ敵地に居たら狙い撃ちされちゃう!!」


「了解した」


いち早く曇りの日の合図を聞いていた雷の日は難なく逃げ延びたが、黒雨の日は完全に敵地に一人取り残されている。しかも、周りには遠近どちらの変革者もいるため、今でこそ無双状態の黒雨の日言えどすぐにやられてしまうだろう


「また煙幕ッ・・・!おい!早く吹き飛ばせ!」


「任せろ!!」


「不味い・・・雷、敵が煙幕に対して慣れてきている。通用しないぞ!」


「くそっ・・・何とかして黒を一旦引かせないと・・・」


そうこうしている間にも、黒雨の日の無双はとどまることを知らず眼前に動くものを全て切り裂き、足元には変革者達が物言わぬ屍となってつみあがっていく。だがもちろん黒雨の日言えど無傷ではない。銃弾が肩を貫き、磁場が荒れ不安定になったりもしている


「俺の雷でも限界がある・・・ッての!」


両手同時の雷操作はまだ不安定の雷の日は一人ずつ確実に落雷を浴びせ、黒雨の日程ではないが敵の数を減らしている

だが、未だ溢れることの終わりを知らない変革者達はどこからともなく現れその数を増やし、徐々に雷の日曇りの日と黒雨の日の距離も離されていく


「ガキが一人になったぞ!そっちの二人を抑えとけ!!」


「黒さ・・・っくぅ!」


助けに行きたい気持ちは山々だが、曇りの日と雷の日を囲むようにして変革者が立ち並び自由に身動きが取れない。能力の殺傷能力が低い曇りの日は雷の日の雷だけが頼りだ


「曇り、俺がコイツら倒すからその隙に安全な場所まで走ってくれ!!」


「んなっ・・・雷はどうする気だ」


「俺は戦えるから大丈夫!曇りには、遠くから煙幕を頼みたい!!」


悔しいが、確かに曇りの日は戦力的に考えて避難しておいてほしい面子だ

だが、それは曇りの日のプライドが許さない。変革者としては年上の雷の日だが、実年齢では年下。そんな彼に守られるなど性分に合わないのだ


「・・・安心しろ。俺も戦えるさ」


雷の日が攻撃をさばきながら直線状に雷を放ち数人を焼き払う。だが、その間にも変革者の猛攻は止まらず、少しずつ被弾が増えてきた

当然反撃の出来ない曇りの日は持ち前の拳のみで対抗し、一瞬の隙の間に煙草を咥え引火させ大きく息を吸い込みイメージを高める


「く、曇り!!前!!」


肩に攻撃を受け反動で膝をついた雷の日が曇りの日に迫った剣を目撃し思わず叫んだ

だが、曇りの日は避けようとはせず代わりに左手を突き出した


「弾けっ・・・!!」


「な、なんだこの煙!?かてぇぞ!?」


足元から曇りの日を包むようにして巻き上がった煙は鉄の様に固く変革者の振り下ろした剣をガキンと甲高い高温をまき散らしながらいとも簡単に弾き飛ばしたのだ

流石の変革者もこれには動揺したのか全員の動きが一瞬止まった


「・・・俺も成長したって事みたいだな!!」


突き出した拳をグッと握りつぶすと曇りの日を中心に鋼鉄化した煙が二人を囲む変革者にまるで大砲の様に放たれ全員まとめて吹き飛ばす


「曇り・・・それって・・・性質変化か!!」


「みたいだ・・・まだ勝手が分からないが、これで俺も役に立てそうだな」


「うん・・・ってそんな場合じゃない!黒が!!」


その場で倒れる変革者達を顧みた二人は少し離れたところで繰り広げられている戦地に視線を向けた

するとその中心からは鮮血が舞い、能力の余波か水も巻き上がる

そして聞こえるのは黒雨の日の雄叫び


「白さんはまだだし・・・曇り!強行突破で黒と合流しよう!」


「了解した!」


雷の日の能力では黒雨の日を巻き込む可能性が有るので曇りの日が直径5メートルほどの煙の塊をつくる。その間にも変革者は二人を殺そうと襲って来るが、雷の日の的確な落雷により何人たりとも寄せ付けない


「よし、準備OKだ」


「OK!やっちゃえ曇りぃ!!」


巨大な雷柱を迫りくる変革者に容赦なく叩き落とす雷の日は背中越しに曇りの日に合図を送りそれを受けた曇りの日が煙を回転を加えながら撃ち、黒雨の日に迫る変革者をまるでボウリングの様に弾き飛ばした


「煙・・・っつつ」


「大丈夫か黒さん!」


「・・・余計なお世話だ。それより白の奴はまだか」


雷の日に肩を支えられ額から流れる血に目を細めながらも周囲を見渡す。だが白雨の日らしき姿はどこにも見えない

しかし遠くの方で何か暴れる気配がすることから白雨の日も交戦中なのだろう


「かなりの数倒したな黒さん・・・でもそんな怪我じゃぁもう無理か?」


「はっ・・・ほざけ・・・まだまだ余裕だっての」


「ならいいけどっ・・・と曇り!上!」


不穏な気配を感じ反射的に叫んだ直後、三人を真っ黒な影が多い、まるで槍のように降り注ぎだした

それをわずかな時間内での判断で曇りの日が鋼鉄の煙でガードする


「いい反応ですこと」


「・・・今の攻撃、影ね」


たった一撃で能力の正体を見破ったのは黒雨の日でも雷の日でも曇りの日でもない

そう、白雨の日だ

全身返り血で真っ赤な女性がまっすぐに背筋を伸ばし周囲に水を漂わせて三人の背後にいつの間にか立っていた


「白さん、ようやく合流できた・・・!」


「お待たせ。あら、黒ったら大怪我ねぇ、相変わらず単独行動?」


「うっせ・・・」


白雨の日の登場で四対一の状況になったにも関わらず、敵の表情には笑みしか浮かんでいないではないか


「あはっ・・・四人も同時にたたかえる・・・」


「・・・気味が悪いわね。あなた達三人は少し休んでなさい?曇り、あなた性質変化に目覚めたみたいね。一応、おめでとう」


「お、おう・・・」


目の色が獲物を狙う獅子の女性からお祝いの言葉を貰って素直に喜べる人は果たしてこの世に居るのだろうか。ふとそんなことを考えた曇りの日は反応に困りながらも一応返答しておいた


「・・・ワタシね、真っ赤な服がだぁいすきなの」


と、いきなり敵が語り始めた


「でも・・・売ってなかった・・・だからあなたの血で真っ赤に染めてほしいなぁぁっ」


「ふぅ・・・気持ちの悪い女・・・名前は?」


「杏・・・よ。あなた達の名前は興味無いの。ワタシはただ・・・快楽したいだけ・・・あはっ」


振り上げた手に呼応し、地面から木の影がせり上がり白雨の日目がけて突き出すも、鋼鉄化した水がそれを弾き、二人の熾烈な戦いが幕を開けた


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