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変革者  作者: 雨の日
EpisodeⅠ~昨日は今日の昔~
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其ノ十五

其ノ十五


「未成年の俺らがはいるのも変な感じだな」


「まぁふつうはお前さんたちは縁のない場所だもんな。それよりほれ黒、雷、お前さん達だけでいってこい。こんくらい余裕だろっ?」


顎を摩りながらニヤリと挑発する雷雨の日に対抗するように黒雨の日も乾いた笑みを漏らして振り返ることなく歩き始めた


「はっ余裕すぎて欠伸が止まんねーよ」


「ちょ、黒!一人で行かないでよ!?」


置いていかれそうになった雷の日も慌てて黒雨の日の後を追い、クラブハウスへと駆けて行った

その様子を一人車から見ていた雷雨の日は二人の成長を心のどこかで寂しくも思いながら任務に対する心配もしていた





店内に入る際未成年お断りと追い返されるかと不安になっていた雷の日だったが、存外このあたりも治安が荒れているらしくすんなり入店することができた

それにしても、店内はいたって平和で変革者が暴れた後など微塵もないようだ

根本的に場所が違うのではないかと思うほどにぎわうこの店では、ミラーボルが回り曲に合わせて狂ったように踊る人や男を口説こうとする魔性の女やらでごった返していた


「どうしようか・・・これじゃ変革者見つけられないよ」


「・・・・・・それっぽい奴をしらみつぶし、だな」


苦虫を噛みしめたような渋い顔で黒雨の日が呟いた時だった

視界の端に一人の男が映ったのだ。二階にいるその男は両隣の男に背中を叩かれ手に持った煙草を苦しそうに握っている

そして、目が虚ろだ。変革者として目覚めている可能性が高い


「おい!アイツじゃないか!?」


もし黒雨の日の予想が当たっているのなら一刻を争う事態だ。能力がなんであるかは分かっていないがもし殺傷能力の高い能力だった場合、店内の人間全員が死に晒されてしまう可能性が有るのだ


「黒、階段が右に!!」


雷の日が指を指しながら店内のBGMに負けない声で叫んだ

だが、階段を見つけたとしても、人が多すぎて身動きが不自由過ぎる。それに二人は体格こそ鍛えているからしっかりしているものの基礎的なサイズは子供なのだ。周囲の大人の圧には勝てない


「くっ・・・ダメだ黒・・・進めない!」


「・・・ったく、いいか見とけ。こーやるんだよ!!」


押しのけて進もうと試みた雷の日は大人の圧に弾かれる。それを見かねた黒雨の日が一つの暴挙に乗り出したのだ

その方法とは至ってシンプル。目の前で気分よくお酒を飲んでいる男の後頭部を思いっきり殴り飛ばしたのだ


「ってぇな!!何しやがるてめぇ!!」


当然男はぶち切れ、犯人が誰かなんて探すこともせず、真っ先に後ろに居た太った男に殴りかかったではないか

するとどうだ。やれ喧嘩だと言わんばかりになんにも関係のない人たちまで隣の人を殴ったりつかみ合ったりして店内はまさに無法地帯の闘技場状態だ


「・・・今のうちに進むぞ」


「う、うん・・・っわぁ!?」


「ガキィ!!」


その時、喧嘩の流れ弾に雷の日が絡まれ肩をグッと掴まれて無理やり体を反転させられた。とっさのことで変な声をあげてしまったがすぐに頭を冷やし、男の拳が雷の日に届くより早く指を鳴らし意識を刈り取る程度の微量の電流を男の全身に流し、なんとか窮地を脱した


「・・・大丈夫か」


「うん。急ごう!」


人の波という波をかき分けて二人は階段をどんどん昇っていく。だが、タイミングは少し遅かったらしく、能力の暴走が本格的に始まってしまったようだ


「く・・・る、しぃ!」


「なにこ・・の、けむ・・・り!」


突然男の周辺の人たちが呼吸困難のような症状になり始めたではないか。さらに付け加えると、煙が黙々と広がっている


「煙だけにもくもくってか・・・下らねぇ。おい、天井吹き飛ばせるか?」


「えぇっ!?天井を!?」


階段の途中、まだ煙が来ていない場所で一旦立ち止まり黒雨の日が恐ろしいことをさらっと言ったのだ

だが、雷の日も理由は分かっている。煙を外に逃すためだろう。だからこそ、大きくため息をついた雷の日は仕方なく天井目がけて指を鳴らした

周囲の目を引き付け、全員の喧嘩が一瞬で静まり返る。そして、見上げた先には今までの天井でなく星空が見えるではないか


「よくやった。んじゃ、あいつは俺が・・・」


軽くねぎらいの言葉をかけた黒雨の日は殺傷能力を抑えた薙刀を担ぎ階段を踏みしめはじめた。だが、相手は暴走状態の変革者。どんな行動をとるか分かったもんじゃない、だから黒雨の日もゆっくりと忍び寄る


「煙・・・か・・・窒息と目くらましだけ気をつけなきゃな」


冷静の敵の分析を成した黒雨の日は煙を吸い込まないよう覚悟を決め大きく息を吸い込み肺に酸素を充満させた


「・・・ッ」


「気づかれたッ!?」


一瞬の隙を突いて一撃で終わらせようと考えていた黒雨の日だったが男が気付く方が少し早かったようだ。虚ろの目が黒雨の日を確実に捉え脱力した手で煙草を咥え、周囲の煙全てを黒雨の日に向けて突撃させたのだ


「危ない黒っ・・・邪魔だこの煙ィィ!!」


煙相手に雷が効くのかどうかは疑問だが物は試しと雷の日は両手の指を盛大に鳴らし黒雨の日の目と鼻の先から煙に向けて雷柱を二本打ち出したのだ

両手の発動は不安定だが、なんとかその雷柱は煙とぶつかり合い、お互いに力がはじけ消散した。雷の日の攻撃は無駄ではなかったのだ

そして、生まれた隙と道を見逃さなかった黒雨の日は手に持った薙刀の塚の先を握りしめやり投げの要領で晴れた煙の中を男の足目がけて投げ放った


「殺しはしねぇさ・・・!」


薙刀が男の太ももに触れたその瞬間・・・水が周囲から集まりだし薙刀もろとも男を飲み込み水の檻に閉じ込めて窒息による意識不明でなんとか強引に能力の暴走を抑え込み、捕獲することに成功したのだ


「ふぅ・・・よし、引き上げるぞ」


水の檻を解除し意識を失った男を担ぎ上げて黒雨の日は雷の日に顎で出口を差した後周囲のポカンとしている一般人に向けて軽くガンを飛ばしたのだ

すると目の前で道をふさぐようにして寝転がっていた者たちは皆一瞬で道を空け、まさに大名行列のような光景が出来上がり、二人はその道を通り雷雨の日のまつ車へと帰還したのだった





「おー早かったな。そいつが変革者か?」


「まぁな」


「あの・・・天井・・・」


どかっと乱暴に車の後部に男を押し込み黒雨の日はいち早く運転席の隣に座った

雷の日は、壊してしまった店の天井の事を心配そうに雷雨の日に打ち明けようとした・・・のだが


「天井なぁ・・・お前さん、壊すならもっと派手に壊さなきゃなぁ。俺ぁ昔ビル一個倒壊させたぞ!がっはっはっは!!」


ぐしゃぐしゃと雷の日の頭を乱暴に撫で、大笑いしてから雷雨の日も乗車するように促した


「さーて、一仕事終わったことだし、かえりやすか!!」


「う、うん!」


「・・・疲れた。寝る」


アクセル全開、危険運転。まさに適当な男ではあるが頼りがいのある父親のような雷雨の日は我が弟子の成長を微笑ましく思いながら口角を上げ、天候荘へと向かう車を走らせるのであった



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