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変革者  作者: 雨の日
第六章~天の御心~
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第五話

第五話


「英語とか何言ってるのか分からないから嫌いよっ!」


折り紙の能力者なのか、自在に折り紙を浮かせその形を鶴や蛙、猫などに変えて襲い掛かってくる。しかもその一枚一枚は切れ味十分。触れれば身が切れるだろう

だが、フレディは避けるつもりもないようで不敵な笑みを浮かべ、拳を握りしめる


「・・・セイッ!!」


フレディが掛け声と共に分身し、四人に増えフレディを囲むようにして立ちふさがる

もちろんその分身一体一体には質量があり、しっかりと戦闘要員として成り立っているようだ

さらに言えば、その分身には痛覚が無い。だからある程度なら盾にもなるのだ


「自分を盾にするとは・・・気味の悪い奴ね・・・」


「NO!Meは気味悪くないです!!」


そこに張り合うのかと気になるところではあるが本人の問題なので気にしない方がいいだろう

とそんなことを考える暇があるわけでもなくフレディの分身に折り紙が突き刺さる。もちろん分身だから血は出ないためフレディに突き刺さった折り紙は綺麗なまま深々と体に突き刺さっていく


「・・・不気味な光景ねぇ」


「フフっ後ろに気をつけようねっ!」


「えぇっ!?」


女が声に気が付いて振り返った時にはもう遅い。すでにそこにはフレディの分身が強烈な左ストレートを繰り出していた

渾身の一撃は女の顔を見事に捉え、大きくのけぞらせる


「Next・・・!!」


さらに分身を作り出したフレディは、女の背後にまたも現れ、隙の大きい背中に右ジャブを先のマシンガン並に叩きこむ


「んぎっ!?」


ボキっと嫌な音が響き女の背骨が折れるのが聞き取れる

人間、背骨が折れて動ける者はそうそういない。もちろん変革者とはいえ相違ないのだ

つまり、今のたった一瞬でこの試合に決着がついた、と言う事だろう

女はもう戦えない。もちろん折り紙での遠距離攻撃ならばまだ戦えるもフレディの能力は地味に思えてかなりの強豪だ。女も戦意を失ったであろう


「がふっ・・・げほっ!?」


口から大量の血を吹き出し、白目を剥いて倒れる。もちろん死んではいないだろうが下手をすればこのまま天寿を全うすることになろう。しかし、敵に情けをかけて逆に返り討ちにあった仲間を過去に見たことのあるフレディはその慈愛に満ちた心を鬼に変え助ける選択肢をふるい落した


「・・・KO」


そして・・・白目を向いて倒れた女のその姿を見て呟いた一言がゴングの代わりだった

だが、さらに言えば…第二ラウンドの幕開けでもあったのだった


「・・・ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


「What!?」


フレディが霙の日を追いかけようとに駆け出そうとしたとき、壁越しに誰かの叫ぶ声が聞こえてきたのだ。もちろん壁はコンクリートで分厚い。それを貫通する声とは一体どれだけ強大な声量なのだろうか

たどり着いた答えは一つ。変革者の能力だ

そう察したときにはもう手遅れ。壁にひびが入り始め、次の瞬間には粉々に崩れ去っていた・・・


「か、はっ・・・!!」


「プリンセス!?」


崩落する壁と共に飛び込んできたのはボロボロになった巫女服に身を包み、全身血まみれの風の日だった

さらに言えば、火を噴いた後のような煙を口から漏らしながらも宙に浮きながらこちらを睨みつけている梶原も視界に飛び込む


「プリンセッ・・・ヌオォォォォォォォォォ!!」


雄叫びを上げ、持てるすべての分身を生み出し、瓦礫を殴り砕き、本体は風の日を渾身の踏ん張りで受け止めた。だが、それでも威力は止まらずフレディの体は大きく吹き飛ばされ、反対側の壁にたたきつけられる


「・・・Oh、プリンセス・・・Are you ok・・・?」


呼吸はある。ただ意識が朦朧としていた風の日はフレディのその声にゆっくりと目を開き、辛そうにせき込む


「まだ・・・戦えるわ・・・私を置いて・・・フレディは・・・逃げな・・・っ」


だが、フレディは首を縦に振ろうとは決してしない。むしろ、風の日を降ろした後、自分もファイティングポーズをとり戦うつもりなのだ

先の戦闘では楽に勝てたものの、梶原は明らかに核が違うのだ。もちろんフレディだってそれくらいのことは理解している


「プリンセス、Meだって戦えるさ!無我も使えるんだよ!」


これには風の日も驚いた。だが長年の修行で風の日はようやく数十分もの連続使用を可能にした上級者の技を、食堂のお兄さんが使えるというのだから驚くのも無理はない

だがそれでも不安の拭えない風の日はフレディの前に立ち、フラフラのその足でしっかりと仁王立つ


「・・・でも無理はしないでちょーだい!」


「You・・・too!!」


拳を握りしめたフレディは宙に浮く梶原を睨み、風の日と共に対峙する

お互いに放つ殺気は濃く、殺戮のみを結果として求める戦場がそこにはあった


「二人になろうとも結果は同じ・・・二人纏めて殺してやんよぉぉぉぉぉぉ!!」


非戦闘時からは想像もつかないキャラの豹変だが、天候荘の変革者達にそれを知るすべはない

だからこそ、本気でぶつかり合えるのだ


「無我―――!」


風の日が無我を発動し、身にまとう空気に純度が増す

だが、どうやら無我を使えるのは天候荘のメンツだけではないようだ・・・


「折角だから使おうかね・・・無我ァ!」


「え・・・!?」


なんと、梶原も無我を発動したのだ。もちろん、偽物などではない完璧な無我を

当然そのことに驚愕する二人だが、今は戦闘中。アニメや漫画と違って敵は待つことなど知らない

それを教えるかのように梶原はてにもつマラカスを軽く振った。すると中に入っている小さな粒が音を生み、それを梶原の義手が増幅し、能力となって襲い掛かる

イメージは鷲。急降下するかのように襲いくる攻撃に風の日とフレディは一瞬で舌打ちが重なる


「無我・・・!!」


そこでようやくフレディも無我を発動し、目にも留まらぬ早業で崩壊した壁から外に飛び出す

だがここは二階。そんなことをすれば無事では済まないのだ。と誰もが考えただろう

しかし彼らは変革者。この程度のダメージを防げないような者はいないのだ


「風、そこから奴の腕を狙えるか?恐らくそこがアンプ的役割を担っているはずだ」


「!?え、えぇ・・・」


分身に着地を手伝ってもらいなんの衝撃もなく着地に成功したフレディが発した言葉は日本人そのもの。これも無我の効果なのだろうか?

今までの訛りも陽気もなく、渋い男性のオーラ全開だ


「・・・腕を狙っても無駄無駄ァ!!」


いつの間に持ち替えたのか、その手にはシンバルが握られており、見えないはずの風の日の鎌鼬を全てシンバルの音でかき消してしまった

その精密性、発動のタイミング

正直侮っていたかも知れない


「風、オレが前衛を行く。援護は頼んだ」


「わ、わかった!」


なんとなしに調子が狂うが、無我を発動したフレディの動きは雷、雨、曇りの三人に負けず劣らずの素晴らしい動きだ

上空から降り注ぐ音玉の嵐を流れるような動きで全て躱し、時たまに現れる巨大な音塊は分身フレディがその拳で砕く


「45°上二時の方向に一撃!!」


フレディの進行方向に分身を二人創り、自身の足場に使う。そして分身フレディが差し出した手に乗り、2人係で上に投げ飛ばす

その高さは上空の梶原に匹敵するほどで、拳が届く範囲にまで追い込んだ


「邪魔邪魔ァァ!!」


狂ったように叫びながら梶原は目と鼻の先に現れたフレディ目がけて何も持たない両手を突き出した

すると、機械の駆動音が響き、手首からマシンガンが現れる


「上空なら逃げ場ねーなおい!!」


「フレディっ!!」


だが、フレディの狙いはまさしくそれだった

梶原の視線が一か所に集まったその刹那を狙い、背後にもう一人のフレディが現れる。しかしこれは分身ではない

こっちこそが本体だ


「いつの間に!?」


放った弾丸が分身フレディを煙となって消し去り、心に隙が生まれた瞬間フレディの左ストレートが梶原のガードした右手に叩き込まれる。その衝撃で梶原は、先にフレディが指示した45°右の上空に飛ばされる


「流石フレディ・・・あうっ・・・」


フレディの予想通りの結果になったことに感心しつつも渾身の一撃を霞む視界の中放つ

何とか視界に梶原を捉え、的を絞るも若干狙いが狂った


「ガタ来てんじゃないのぉ?」


それは百も承知。梶原は腕から謎の音、恐らくは内蔵された楽器から衝撃を生み、風の日の鎌鼬を消してしまう

渾身の力だというのに、消費した体力は大きく一撃に乗る威力がか細いのだ


「あ、くぅぅっ」


「プリンセス!!」


やはり無理をしていたようだ

膝の力が抜け、その場に崩れる。フレディはすぐさま駆け寄り風の日の安否を確認しようとするが、梶原の無情な一撃が放たれる


「・・・もう飽きてきたわ。白様のいいつけもあるしね、血だけ貰って帰りますかな」


「血・・・?」


謎の言葉に引っかかるフレディだったが、そんな疑問を抱いて居られるほど余裕はない様子

梶原が取り出した楽器は大太鼓

つまりは巨大なバズーカのようなものだ。そんなものを放たれては風の日はもう持たないだろう

先から肩での呼吸が止まない

しかも、その状況を見たフレディはつい無我がとけてしまっている。流石に連続での発動はキツイのが無我と言う物。自分の失態に唇を噛みしめながらも風の日を抱き起す


「プリンセス!走れる!?」


「ははっ・・・ごめんフレディ。もう無理、かな・・・」


「んじゃ、死ね――――」












「貴方・・・無事でいて・・・っ」


胸騒ぎの止まらない奈緒美は一人、天候荘のある方を眺めてただただ愛する旦那の無事を神様に祈る事しか出来ないのであった―――


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