第十一話
第十一話
奈緒美の一言は事の重大さをたった一言で示し、さらに時間がないの意味もしっかりと伝わった
だが、なぜ襲撃されているのにも関わらずこんなにもゆっくりちていられるのだろうか
今すぐにでも助太刀に行きたい晴れの日と雷火の日はうずうずと体を動かすもなぜかフレディと奈緒美の二人は黙ったままだ
そしてしびれを切らせた晴れの日がフレディに詰め寄る
「な、なら早く俺たちも行こうぜ!!なんでこんなところで立ち止まってんだ!?」
思わず言葉が荒くもなるが多少は寛大な心で受け入れてほしい。晴れの日だって言いたくて言っているわけではないのだ
ただ、一刻も早く助けに行きたいだけだ
「・・・ライ達に来るなって言われちゃったんだよ」
「雷様・・・何を考えているの・・・ッ」
口ではそう言うものの雷火の日だって内心では理解している
アナザーの目的が自分と晴れの日であるということに
だが、それでも自分たちが行くことで救える命だってあるはずなのだ
「んなこと知るかよフレディっ・・・俺は行くぞ・・・!雷さんがなんと言おうが関係ない!俺は最強の変革者なんだ・・・負けやしねぇ!誰も死なせねぇ!!強くなったんだ!!」
「・・・But」
フレディが目を合わさずに何か言おうとした瞬間、晴れの日がフレディの両肩をがっしりと掴み、しっかりと目を覗き込む
「butもbatもあるか!!仲間のピンチなんだろ!?俺は行く!!雷火!お前は!!」
「・・・当然、行くに決まってるでしょう?わたしと晴れの日が負けると思うかしら?フレディ?」
―――その熱意に折れたのは、奈緒美だった
「ふぅ・・・貴方。この子たちの思いは変えられないわ」
「・・・そうだよねー・・・仕方ないよねっ・・・!」
それにつられるようにして、フレディも渋々首を縦に振った
そして、指を一鳴らしパチンと鳴らすと突然部屋の地面や壁、全てが輝き始める
「え!?あ!?ん!?」
「熱意に負けたぜっ奴だよハレ・・・No puroblem!これは特殊転移装置!一瞬で天候荘に着けるよ!」
そんな便利な装置があるのかと感心する反面、本当に転移してくれるのか不安な気持ちもある。お決まりの展開だとこういうのは基本・・・
「・・・貴方っ!!何かが割り込んできて座標をいじり始めたわ!!」
「what!?」
・・・トラブルがつきものなのだから
「ちょっと!大丈夫なの!?」
雷火の日も心配になり声が上ずりつつある
だが、当然大丈夫なわけもなくフレディと奈緒美の額には冷や汗が流れているのが目に入る
「・・・sorry!少し座標ずれちゃってるから転移先が変わる!けど大丈夫!meがなんとかするから!」
「わたくしはここに残りますね・・・役に立てないし・・・無事で帰ってくださいね!!」
フレディも転移するらしく、ひときわ輝く場所に移動して雷火の日と晴れの日を抱き寄せる
そして奈緒美とフレディは互いに微笑み合い、両者が同時に指を鳴らした直後
三人の視界はホワイトアウトした―――
晴れの日達が目覚める少し前、天候荘にて―――・・・
「なぁ雨さん。聞いたか?北の小さな龍脈が誰かに喰われたって話」
外の喫煙所で煙草を吸う曇りの日と、その一歩外側で何かするわけでもなくただ椅子に座っている雨の日
「あぁ。まぁどーせ白雨だろー・・・」
「やはりそう考えるのが妥当か。どうする?完全に敵同士になってしまったな」
吹かした煙が空に吸い込まれ雨の日には副流煙がいかないよう曇りの日は配慮する
「いざとなりゃ、刺し違えてでもってな・・・と思ったが割と早いかも知んねーな・・・いざってのは」
会話の途中で雨の日はふと額に汗をかき始めた。だがそれは曇りの日も同じ反応だ
2人して急きょある一点の空を見つめ動きを静止する。この場には二人しかいない者の、まるで何かをじっと見つめるかのような、そんな動きだ
「・・・大きく出たなアイツらも」
曇りの日が煙草を灰皿に押しつけて消火し、新たに新しい煙草に火を付けてため息と共に煙を吐き出す
そしてそのまま喫煙所から出てきて椅子に座る雨の日の少し前に立つ
「とりあえず、ここは頼むわ。俺は撫子のとこ行ってくる」
「任せろ雨さん。っそれより撫子だけじゃなく、他の奴も頼むぞ?」
互いに視線を交えることなく背中で語り合う。ひらひらと雨の日は右手を顔の横で振り、言葉なく返事したその次の瞬間
ついさっきまで見つめていた空が突如巨大な音波によってまるでガラスのように崩落した―――
「ステルスで攻撃とは考えたな・・・でも俺には意味なき事だ」
何も見えないその空間目がけて曇りの日は紫いろの如何にも毒らしい煙を放つ
と、その瞬間音波と煙がぶつかり合い、互いに消散した
「アナザー総動員って訳じゃなさそうだな。ふっ・・・俺らも舐められたものだ」
改めて煙草を吸い、肺に煙を満たしそれを勢いよく吹きだす
その煙が曇りの日の視界を一瞬遮り、すぐに晴れた時
目の前約50m付近に大量のアナザー所属の変革者が各々武器を構えていた
「我等アナザー特攻隊!天候荘の愚民ども!貴様らは完全に包囲されている!おとなしく投降すれば命まではとらなぶぇっ!?」
言葉が最後まで発せられなかったのは、鉄に近い、もしくはそれ以上の強度を持つ煙を曇りの日が大声で叫ぶその男に投げつけたからだ
その煙は見事に額にヒットし、その男は大きく後ろに飛んだ
「投降するような魂の持ち主を捜してんなら他所をおすすめしよう。ここは戦士が集う場だ。貴様らアナザーにやられる訳がないさ」
煙草を突き出し顎を突き出し見下しながらも挑発する曇りの日
恐らく先程男が叫んでいたことは事実だろう。すでに天候荘の周りに大量の人の気配がしている
「・・・残念、交渉決裂だな」
誰かが言ったのを曇りの日は笑って受け流す
「わざわざ来てもらったのに悪いな・・・ここで貴様ら全員死んでくれ」
真っ黒な煙が一瞬で曇りの日もろとも一帯を包み込む――――
その頃、はるか上空では・・・
「ぬおぉぉぉぉおおお!?」
「ハレ!ライカ!座標がだいぶ空になっちゃったね!でも大丈夫!たった100m!」
転移装置の座標をいじられた晴れの日達が転移させられたのは天候荘はるか上空、100m付近のところだった
三人はパラシュートもなく、ただただ自由落下し、重力の加速度に従ってどんどん加速していく
まるで地球が迫ってくるようだ
「わたしはどうとでもなるわ!それより!晴れの日をお願いフレディ!」
「OK・・・でもmeじゃなくて受け止めるのはクモリに任せるよ!!」
先から自信満々だったフレディだが、どうやら秘策は曇りの日の様だ
だが確かに曇りの日の能力ならば100mから落下しようともしっかりとキャッチしてくれそうだと安心する
「・・・っ!雷火見えるか!?天候荘の周り・・・っ!」
「えぇウザいくらいに居るわ・・・中に入られるのも時間の問題ね」
上空からだとよく見える。天候荘をぐるりと囲むようにアナザーたちは包囲網を敷いており、じりじりと迫っているのだ
もちろん、天候荘の中から変革者達がその進軍を食い止めるために現れるも、人数の差や、天候荘に居る非戦闘員の退路の確保など、不利的条件が多いのか押され気味だ。それに一か所すでに突破されつつある
「・・・フレディ!俺と雷火で中に入ってアナザーから天候荘を守る!できるだけ離れないでくれよ!?」
「・・・ok!」
とりあえずの目標は決まった
体を上手く折りたたみ加速しながらも晴れの日はその突破されつつある場所を目指した
「間に合え・・・頼む・・・俺はみんなを、みんなを守るんだぁぁぁ!!」
変革者第五章~舞うに舞う大和の心~
終幕・・・からの次章へと続く




