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変革者  作者: 雨の日
第五章~舞うに舞う大和の心~
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第一話

第五章~舞うに舞う大和の心~


第一話


「えー・・・っと」


「どうぞ寛いでください?我が家のようなものだとお思いになってくださって結構ですよ!いえ、むしろ我が家だと思って!」


「・・・では、遠慮なく失礼するわ」


さて、晴れの日達は今どこで何をしているのかというと、雨の日、撫子と曇りの日と一緒にフレディの部屋にきており、そこでフレディの奥さんからの手厚い歓迎を受けているのだ

その原因は、晴れの日達が名古屋から天候荘に戻った時、すなわち二日前に遡る―――




天候荘についてまず出迎えてくれたのはフレディだったのだ

どうやら雷の日と曇りの日は別の地方での任務がはいっており出迎えられないらしい

そして晴れの日達の無事を一目で感じ取ったフレディはそのがっしりとした腕で雷火の日と晴れの日をまとめて強く抱きしめたのだった


「ちょ、フレディ!?」


「ハレー!ライカー!無事でよかったよー!!I am happy!」


フレディも不安だったのだろう。安心感からか若干大げさすぎる出迎えにくすぐったい思いを抱えつつ二人はフレディの腕に自分の腕をからめてここに居る証明をし、帰ってきたという実感がわいてくる

だが、徐々にフレディの感情が高まり、腕がぎりぎりと閉まってきた。すると当然・・・


「ふ、れでぃ・・・!くるっくるしっ!」


「oh!Sorry!!」


雷火の日が必死に声を捻りだすとフレディも気が付いたらしく

慌てて手を放す


「ごほ、ごほっ・・・大丈夫だよ・・・ただいま、フレディ」


喉元を摩りながら晴れの日がフレディにそう告げた時、頭上に何やら不穏な気配がしたのを、晴れの日だけでなく、雷火の日も感じた

不穏、と言っても敵ではない・・・そう


「あっぶねーぞ~?」


「へぶっ!?」


「だからあぶねーって言ったのによ・・・」


雨の日だ

撫子を抱きかかえ、自力で飛んで帰ったのだろうか。いや、上空から落下してきたということは確実にそうだろう

そして、気配を感じたのも反応も遅かった晴れの日は残念ながらその下敷きになってしまい、ビタンっと地に這いつくばる


「・・・アメ、ナデシコ、おかえり?」


「ただいまフレディ!ごめんね晴れの日君・・・」


「いいのよ、この程度がお似合いだわ」


それぞれがいつものような調子で、フレディはとても安心した

天候荘に来て長いフレディは、戦闘に行ったもののその悲惨さに心が病んでしまった少年少女もたくさん知っている

だからこそ、今のこの普通の状況がうれしいのだ


「ドンマイ、晴れ。まぁ主に俺のせいだがな!」


「おい雨さん!?」


がばっと起き上り抗議した晴れの日だが、雨の日だけでなく全員にスルーされる


「・・・なぁフレディ、お前の嫁さんに晴れと雷火の診断頼めるか?事情は後で話す・・・撫子が、だけど」


「え!?私!? もうっ・・・しょうがないなぁ・・・どう、フレディ?」


大きく欠伸をしながらそれなりに大事な案件をそれなりのトーンで話す雨の日に撫子は肩を落としつつも嫌な顔せず首を縦に振る

だが、そもそも晴れの日と雷火の日はじぶんたちのあの現象についてまだ何もわからないのだ

確かに記憶は一時途切れていたし、雷火の日においてはなにやら不穏な言葉も残された

気にはなるも、現実味が少ない謎なのは確かだ


「んー・・・OKだよ!ただ調子の良い時がうれしいな!最近sickも軽くなってきてるしね!」


「わりぃな。そっちが日取り決めてくれて構わねーから、頼むわ」


「OK OK」





そして・・・今日

晴れの日達はフレディ夫妻のお部屋にお邪魔しているのだ

そもそもフレディに奥さんがいたことも驚きだが、それ以上に驚いたのはその美貌と立ち振る舞いだった


「ふふっ、こんなにたくさんのお客さんは久しぶりですね貴方・・・とっても楽しいわ」


「funなのはいいけど、体気をつけてね?」


どうやらフレディは過保護気質のようだ

二人の素晴らしいもてなしの対応に少したじろぎながらも晴れの日は差し出された茶菓子を口に運ぶ

部屋の内装は比較的和風・・・いや、かなり和風だ

通された部屋がまず和室で、青畳の良い香りがする


「大丈夫ですよ?あ、足元ごめんなさい」


だが、少し気になるところが一点

フレディの奥さんは、両足全く動かず、まるで棒のようにやせ細っている。部屋着なのかどうだかは分からないが、着ている着物の裾でうまく隠してはいるものの時折見える足にはなんの生気も感じられないのだ

それに・・・極め付けとして車いすに乗っている


「・・・昔事故で、らしいぞ」


不思議そうな目で見ていたのがばれたのか、そっと雨の日が耳打ちして来る

当然大事に言う必要のないことなので、晴れの日は一人胸の中にそのことをしまうだけだった


「ね、何か手伝いましょーか奈緒美さん!」


撫子が親しげにフレディの奥さん、名前を奈緒美というらしい。に話しかける

だが、奈緒美はにこりと微笑み撫子の手伝いをそっと断る


「いいえ、久しぶりのお客さんですもの、一人でやらせてください」


「は~い!じゃぁおとなしく座ってますね!」


「やけに親しそうじゃない撫子」


雷火の日が正座で疲れて若干崩れてきていた足を組直して尋ねる


「まぁ、色々とお世話になったからねぇ~・・・」


「・・・何が、と聞いたら面倒な案件の気がしてならないから遠慮しておくわね」


遠い目をする撫子に絡むと面倒なことになりかねないと雷火の日が勝手に判断し、会話を切り上げた

丁度その時、四人の前の平机にお茶が出される

茶道のお茶、つまりは抹茶だ

独特の苦みと甘味のある抹茶は好きな人と嫌いな人がわかれやすい飲み物であり、晴れの日は未経験で、一度飲んでみたかったと思っていたので実にうれしい

その様子を少しハラハラした様子で見守るフレディを見ると、晴れの日は少し口元が緩む


「ん?どーしたハレ?」


どうやら視線に気づいたようだ


「いや・・・仲のいい夫婦だなっさ」


「あら、嬉しいわ。ですってよ貴方!」


爽やかすぎる笑みでフレディに微笑みかける奈緒美の姿はさながら天使のようだ

フレディもとんだ色男だったようで、内心少し嫉妬する晴れの日


「yes!your my best partner!」


「こらこら貴方ったら!ふふっ!」


「え、えー・・・と・・・」


突然二人だけの世界に入り始めたフレディ夫妻についていけずおどおどと行き場を失う

だが、そこに思わぬ救いの手が現れた


「おーいお二人さん・・・そろそろ本題に入ってもいいかの?」


「・・・sorry!」


「あら、ごめんなさい・・・」


やれやれとため息を漏らす雨の日とそれをあははと苦笑う撫子

意外と甘い抹茶に謎の頷きを繰り返す雷火の日、とてんでまとまりのない連中ではあるが、少しは真面目に話を始めないといけない事を思い、ようやく話が本題に入ろうとしていた・・・


「えぇ、と確か晴れちゃんと雷火ちゃんの・・・心を覗けばいいのですよね?」


「・・・ま、そゆことだ」


「・・・what?」


急に話が飛んだ様だ

晴れの日の素っ頓狂な声が、室内に木霊する

そして、雷火の日もまた首を傾げるのだった

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