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変革者  作者: 雨の日
第四章~雨降リシ夜二~
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第二十六話

第二十六話


それから晴れの日達御一行は、名古屋城に背を向けて、天候荘の人員との合流地点へと向かう

その道中、聞きたいことを我慢できず晴れの日が疑問をぶつけた


「・・・雨さん、色々聞きたいんだけどさ、その、白雨との事・・・とか」


晴れの日が聞きたいこととは自分の不思議な現象の事ではない。なにせ本人は全くもって記憶が無いのだからそもそも自分の人格が変わったこと自体知らない

それはともかくとして、今の問いに対して反応したのは雨の日ではなく、撫子だった


「雨様・・・話してもいいんじゃない・・・?」


若干不安げな光を宿す目が雨の日に注がれ、その視線から逃げるように頭を掻く雨の日は、ため息を軽く落としゆっくりと口を開いた


「・・・晴れと雷火のアレの方が今は問題だろーが、まぁいいや」


そして、雨の日の口から白雨について語られる


「アイツは、天候荘の創設者であり、元最強であり、俺と、まぁなんちゃって元恋人だ。ほれ、それっぽい事言ってたろ?」


半ば飛びかけていた意識の中ではあったが確かに思い返してみれば、白雨は雨の日に対して何やら意味深な言葉を投げかけたり、異質な気にかけをしたりと思い当たる点が多い

晴れの日と雷火の日は、そんなことを思いながらも口をはさむことなく黙って耳を傾ける


「俺とアイツは、黒雨の日と白雨の日でコンビ組んでて、白黒の悪夢とか言われてたんよ。まぁ十年以上前だけどな。んで、ある日裏切った」


曲がり角を曲がった六人に眩しい朝日が差し込み思わず全員目を覆う

小鳥が飛び立ち、つい先まで生死をかけた戦いがあった近くだとは到底思えないのどかさと静けさだ


「裏切ったって、前にも言ってた気がするんだけど、具体的にはどういう・・・?」


「・・・ある日アイツと俺はある土地の調査に行ったんよ、なんか遺跡的な?いまでいえば龍脈の可能性が有ると事ってこと。んでそこで今でこそアナザーって名前だけど当時はまだ無名の組織と出くわしてよぉ」


そこで言葉を一度切り、足を止めて少し先の合流場所に見える生還者の数を見て若干気が凹んだ雨の日だが、その背中を撫子が優しく微笑みながらポンッと叩き励ます

そして再び口を開き歩き出した


「俺はそこまでで記憶が途切れてる。まー多分やられたな~・・・でもアイツは違った。俺が気が付いたときすでにアナザーはいなくなっててアイツだけが残ってた。んで、俺にこういってきたんよ・・・」


「・・・」


晴れの日と雷火の日が固唾をのむ


「『人間は滅ぶべき、変革者こそ真実よ』ってな」


「それはつまりどういう意味よ」


雷火の日にはなんのことやらさっぱりな様子だが、雨の日本人も意味が分からないのか肩を竦め、首を横に振るだけだった


「聞きたかったんだがな、俺がその言葉を信じられないとでも言いそうな顔をしたんだと。そしてらあいつは俺を半殺しに切りさいて消えた。それっきりだ」


大分話が飛び飛びではあったが雨の日にしては細かい話だったと思う

だが、一体白雨が何を思って裏切ったのか、そしてあの言葉の真意とは何か

この時はまだ、誰にも知りえないことでしかなかった・・・


「・・・では次に二人の謎の現象について考えた方がよいのでハ?」


ほとんど徹夜のこの状況下というのは、双子にとっては地獄でしかないだろう

特にこの2人は夜早いというのに、夜中の戦闘は体力的にも厳しいものだ

それなのに真面目なことを言っていることを考慮するに、やはり晴れの日と雷火の日の現象は第一に考えるべき課題なのだろう


「雨様、ここはあの人に頼む方がいいんじゃない?ほら、私達じゃ手におえない感じだったし・・・」


「あー・・・そだな。正直俺もわっけわかんねーし、めんどいのはパスだ!」


「流石だな・・・無気力政権名乗るだけはある」


貧血と低血圧で瀕死の嵐の日だが震える声でか細く笑い、雪の日に体重を預けつつヨタヨタと歩く

その光景を苦笑いで流す晴れの日、そしてようやく合流地点にたどり着いた

そこにはすでに迎えとしてヘリが大量に止まっていたり舞い降りてきたり舞い上がっていたりと、大忙しだ

中には大けがをしたものも見える

そんな中、晴れの日は一人の男を見かけた、そう。夜中に助けたあの男だ


「あ・・・君はあの時の!」


「よかった・・・生きていたんですね!!」


怪我がひどいのか座ったまま動こうとはしないその男の元に晴れの日は駆け寄る

そして再会できたことを喜び、なんとか動く左手を差し出してきた男と握手を交わす


「あぁ、おかげさまでね!!でも・・・もう一人は、その・・・」


戦地の新人とはいえ、察しはついた

もう一人は、もうこの世にはいないのだ


「そう・・・ですか・・・」


「でも君が気に病むことはないんだよ!むしろ胸を張ってくれ!!晴れの日・・・くん?」


俯き下唇を噛む中、突然名前を呼ばれはじけるように顔を上げた

名乗った覚えはないというのになぜ名前が分かったのだろうか


「なぜ、って顔しているね?有名だよ、君。最強の変革者を目指すって公言した強者ってね」


思いのほか晴れの日の目標は色々な人に知れ渡っているようだ


「俺なんか・・・まだまだ弱いです。最強なんて程遠くて・・・」


自虐的になる晴れの日を励ましたのは、背後からの声だった


「あら、諦めるのかしら?」


雷火の日だ


「諦めるとかじゃないけど・・・さっきの闘いだって、俺ら完敗だったじゃねーか」


振り返らずとも声で分かる

確かに晴れの日の言う通り、先の結と解との戦闘はボロ負け。お世辞にもいい戦いとは言えないものだったのだ

だが、雷火の日はちがう思いだった


「完敗ね。だから何よ。そんなこと言ったら、わたしたち一生負けられない人生になるわよ?そんな人生無理よ無理。負けも勝ちも表裏一体。そんな世界よ、ここは」


「・・・いいこと言うね君。ほら、彼女の言う通りさ。上でどんな戦いがあったかは知らないけど、君は生きている。それだけで十分さ」


その言葉を言い終えると、男は救護班に念力らしき能力で持ち上げられて、護送ヘリに乗せられて行ってしまった

最期に、親指を立てて力強く笑って・・・






その一方、撫子は雪の日と嵐の日の身を案じ、本人たちの大丈夫という意向を遮って護送ヘリに半ば強引に詰め込んでいた

医務担当の撫子としては、戦地は今この場なのだ

スイッチの入った撫子はたとえ双子であっても太刀打ちできず、なすすべなくヘリで天候荘まであっという間に運ばれていくのであった


その傍ら、雨の日が比較的軽症な変革者を集め、天候荘に戻ってからの過ごし方、及び休暇を与えていた

もちろん、制作は雷の日だ。雨の日はそれをただ読んでいるに過ぎない


「・・・by雷の日。ほれ!解散!」


雨の日が解散の指示を出すと、その場に居た全員がいつもの雨の日の緩いテンションに緊張の糸をほぐす

そして、生きた心地を取り戻し、若干ではあるが笑顔を取り戻す者もいた

だが・・・


「・・・ぐすっ・・・おねぇちゃん・・・」


姉と共に任務に就いたのだろうか

歳自体はそこまで幼くない者の、やはりまだ未成年に見える少女が名古屋城の方を向き、泣いているのが晴れの日の目に留まる


「だいじょ・・・雷火?」


「・・・適任がいるわ」


その少女に何か声をかけようと思った晴れの日だが雷火の日に肩を掴まれ動きが止まる

そしてその目の前を撫子が通る


「大丈夫?」


「ひっく・・・撫子さん・・・お姉ちゃんが、ぐす・・・おねえちゃんがぁ・・・!」


大泣きし始めてしまった

しかし撫子は臆することも引き下がることもせず一歩歩み寄り、両手で優しく少女を包み込んで頭をなでてやる

すると少女は声の限り泣き始める


「やだよぉぉぉ!!おねーちゃんと離れたく、離れたくないよぉぉっ!!うわぁぁぁぁっ!!」


「・・・」


撫子は、ただただ頭を撫で続ける

だが、晴れの日と雷火の日は眺める事しかできない

・・・どれだけ時間が経ったのだろうか。少女はついに泣きつかれと戦闘の疲れで撫子の腕の中眠ってしまったようだ


「・・・この子、お願いします」


そっと救護隊に渡し、天候荘へと送り届ける

そして、撫子は名古屋城の方を見て亡くなった戦士たちを思い、その眼に涙を浮かべた


「・・・お前が気にすることじゃないさ」


「雨様・・・」


その頭に雨の日の手が添えられる。そしてその手を放そうとしたとき、撫子が雨の日の胴に手を回し抱き付く

一瞬何事かと思ったが、微かに聞こえる嗚咽から察し、何も言わずに、先に撫子がしていたようにただ黙って撫子の頭をなでてやる雨の日


「・・・晴れの日、行きましょうか」


「そうだな」


ヘリに乗り、朝焼けの中

名古屋での決戦の幕がゆっくりと降りる―――





変革者第四章~雨降リシ夜二~


名残惜しくもこれにて完結―――

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