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ボスの思い 4

 なぜかわからないけど、突然ボスの家に呼ばれることになった。これからは、ボスの家で暮らすという。これは、あれに違いない。ボスが私を認めてくれたのだ。用心棒として。


 どうしよう? 銃はどれにしよう?

 サブマシンガンのスコルピオンはさすがにまずいだろう。テロリストみたいだし。

 パパの形見の中から一番軽く扱いやすい拳銃を選ぶ。パパの拳銃は西部劇に出てくるような回転弾倉式のリボルバーがほとんどだけれど、オートマチックもある。本当はリボルバーが好きだけど、連射するなら、発射、廃莢、給弾が自動で行われるオートマチックのやつがいいだろう。ライフルも後でもっていこう。

 腰のホルスターに手をやり、銃を引き抜く。OK。


「ロレンツィオ、今までありがとう。これからは、ボスの用心棒としてがんばるからね!」

私は嬉しくて嬉しくて、ロレンツィオにぴょんと抱き着いた。ロレンツィオはなぜか微妙な表情をして、いや、とか、まあ、とか曖昧な返事をした。


 すごく久しぶりにボスに会うので緊張している。だって、ついにボスを護るという大役を任されるのだ。本当はすぐに護りたかったけれど、準備が必要だったのだ。


 ボスはわざわざ玄関口まで迎えに出てくれた。

 射程距離に危険がないかチェック。もちろん、この建物は厳重な警備がされているのだけれど。

「ミシェル、久しぶりだ。あれ? また少し大きくなったかな?」


 ボスが笑っている。ボスの笑顔は、なんていうのか綺麗でドキドキする。

 でも、前みたいに不安そうな顔じゃない。ひょっとして、私がモタモタしているうちに、軟弱ではなくなってしまったのだろうか? もし、そうなら、私は用済みなのだろうか・・・?


「ミシェル? さあ、入って」

 ボスの大きな手が私の肩を押した。

 ボスの大きな手。よく覚えている。一度目はママが死んじゃったとき、私の手をにぎってくれた手。二度目はパパが死んじゃったとき、私の肩においた手。


「ボス、よろしくお願いします。ボスの用心棒として、役目を果たします」

 私がボスに向かっていうと、ボスはため息をついて私をみた。

「ミシェル? ロレンツィオから何もきいていないのか?」

 何のことだろう?


「まず、その銃をわたしなさい」

 私はのろのろと銃をボスにわたした。

「ホルスターもはずしなさい」

 腰につけてあったホルスターをはずす。


「これは、必要ない」

 ボスはきっぱりというと、パパの形見の銃を机に置いた。

 私は銃とボスの顔を交互にみる。

 自分が必要ないといわれているようでショックだった。


「コロシとか、用心棒とか、そんなもの私には必要ない」

 ボスは私を見下ろしてそういった。

 かつての不安そうな、泣きそうな表情は全くなかった。

 ボスはもう軟弱でなくなった。だから私は必要ない、ということ?


 私はにぎりしめている自分の手が冷たくなるのを感じた。

 私がずっと、がんばってきた射撃とか、全くの無駄、そういうこと?

 泣きそうになるのをなんとかこらえた。

 必要ないといわれてもボスの前で泣くわけにはいかない。


 でもボスの表情は私を拒絶しているものではなく、困惑する。

 とても優しい目をしている。

 やっぱりボスは綺麗だと思った。


「こっちにおいで」

 ボスにひきよせられ、気が付いたら腕の中にいた。

「寂しい思いをさせたね。ロレンツィオに任せていたのがいけなかった。これからは、私をアキラの代わりだと思ってくれていい。お父さんだと思ってくれていいんだよ。ちゃんと守ってあげるから。ミシェルが望むなら、高校や大学に行くといい。そうだな、安全な日本とかいう国の大学へ留学してもいい」

 ボスは私の頭をなでながら、そういった。


 なぜ、アキラの代わりにボスを護るはずが、ボスがアキラの代わりになることになっているのだろう? 

 なんのためにボスから遠く離れた日本とかいう安全な大学へ留学しなくてはならないのだろう? 

 さっぱりわけがわからない。


「ボスと呼ぶのもやめてくれ。お父さんでいい。いやだったら、カルロでもカルロおじさんでもいい」

 お父さん?! 私はボスの腕の中で頭をなでなでされ、居心地の悪い思いをしていた。これではまるで・・・小さな子供だ。ボスをお父さんとよぶには若すぎるし、それに、腕の中で頭なでなでなんて、パパにもされた覚えがない。ボスは私をパパが恋しい小さな何もできない子供かなんかと間違えている。


 こんなに頑張っているのにどうしてわかってもらえないんだろう?


読んでくださった方、ありがとうございます。

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