ボスの思い 3
「ミシェルは絶対にお前には、嫁にやらん!! カタギの男に嫁がせる!!!」
気が付くと、私は興奮して立ち上がり、叫んでいた。
やはり横でセルジオが笑い悶えている。
こともあろうに、ミシェルがロレンツィオのパートナーになると言い出したらしいのだ。アンナに憧れているのはわかるが、だからといってなにもロレンツィオの嫁なんかになる必要があるだろうか? いや、ない。
ロレンツィオは苦笑いをしながら葉巻をくわえた。
「嫁というより、俺とタッグをくんで、ボス、あなたを護りたいそうですよ。いやはや。」
なんという健気な・・・?
こう、胸にじんとくる・・・? じゃなくて。
「まだ、あの子はそんなことをいっているのか。ロレンツィオ、お前がついていながら、なんだ。まっとうな子に育てるんじゃなかったのか?」
ロレンツィオは首をすくめていった。
「あの子の父親役は無理です。はじめから私をボスを守る仲間とか先輩ぐらいにしかみていない。あるいはコロシを教えてくれる先生、とか? それだけ父親面するなら、あなたが育てればいい。もう、結構育っちゃってますけど?」
ミシェルはいつのまにか14歳になっていた。お誕生日を祝ってやればよかった。
忙しくて、忘れていた・・・じゃなくて。
あの子には、そう、コロシの先生とかそんな物騒なものではなく、やっぱり愛情あふれる父親が必要なのだ。
「あ、でも。アキラが父親らしいことするとこも、みたことないですけどね? 射撃の手ほどきとかはやってましたよ。スプーンより先に水鉄砲もたせていたし。あと、トレーニングとかいって、マラソンさせたり、走っている車からパチンコでリンゴ落とさせたり。そうそう、車の運転もやらせてました」
ロレンツィオはそういうと葉巻の煙を盛大に吐き出した。
のおおおお!
ミシェル。
アキラにロレンツィオにアンナ。あの面子に育てられてまともに育つはずがなかった。せめて母親が生きていればよかったが、まだミシェルが幼いときに亡くなってしまっている。ミシェルの母親は美人だった。ミシェルも母親似の美人になるに違いない、って、そうじゃなくて。
「わかった。私が引き取る。私がミシェルを立派に成人させてみせる。そして、カタギの男のところに嫁にやるのだ。」
セルジオが爆笑していた。
「ボス、無理です。ミシェルは誰にも嫁にやらないってごねるにきまっている」
そういって、ぐひゃひゃひゃ! と、変な笑い声をあげていた。