ミシェルの願い 1
パパを超える用心棒になって、ボスを守らなければならない。
おじいちゃんも前代ボスの用心棒だったそうだ。豪快な人で、食べ過ぎ、飲みすぎ、遊びすぎで早く亡くなったそうだけれど。
私も将来、パパやアンナみたいになるって決めていた。でもどっちかっていうと、パパよりアンナみたいにかっこよくなりたい。
パパはいつもいってた。ミシェル、俺を超える男になれ! と。
うん。パパを超える男になって、立派な用心棒になる。
パパはいつもいってた。ボスはまだ若いけれど、見どころのある立派な男だ、と。けれど、前代のボスに比べるとまだ軟弱で優しすぎるところがある、とも。見どころのある立派な男とか、よくわからないけれど、ボスが優しい男だということは覚えている。ママが死んじゃったとき、ずっと私の手を握っていてくれた。ママのことをすごい美人で優しい人だっていってくれた。
ボスは今が一番大変なときだから、しっかり守ってやらないといけない。それに、その価値のある男だ、とパパはいっていた。だから、まだ軟弱で優しすぎるボスを私が守らなければならない。きっと相当軟弱なのだろう。パパとアンナが命を張って守らなければ生きていけないほど。
でも、どうすれば、ボスを守れるのだろう? パパは強かった。体はロレンツィオに比べるとあんまり大きくなかったけど、武道は空手、剣道、柔道。射撃も上手い。その中でパパから習ったことのあるのは射撃だけだ。もっと、いろいろ教えてもらっておけばよかった。こんなに早く軟弱なボスを守らなければならなくなるなんて、思ってもみなかった。
なんだかやっぱり、涙がいっぱい出てくる。
泣かない、って決めていたのに。
パパを超える男になるって約束したのに。
やっぱり、ボスは軟弱そうだと思った。パパのお葬式のときに会ったけど、私を見たとき、泣きそうな顔をしていたのだ。きっと、パパもアンナも死んじゃってすごく不安なんだと思う。とってもハンサムだけど、泣きそうなボスの顔を見て誓った。絶対、守るって。