まっとうでない生活 2
やった! ついに、ついにボスが認めてくれた。
渋々、という感じだったけれど。
それにしても。
思い出すと、顔が赤くなってしまう。
黒のスーツ姿のボスにハグされて、指先にキスされただけなのに。
ちょっとだけ、アンナみたいになった気分だった。
実際は車検よろしく点検されていただけだったけれど。
「ロレンツィオ、私、ボスに認めてもらえた。好きにしていいって。あ、それから、ごめんなさい。勝手にロレンツィオの書類、偽造して。どうしても土日に出かけたくて・・・」
家にもどり、スーツを脱ぎ、襟元を緩めてくつろいでいたロレンツィオは苦笑いした。
「ずっと知っていたよ。暗殺専門武道教師の老師と武器商人ブルーのところに行っているのは」
私は心底驚いた。
「一応これでも後見人なのでね。老師もブルーもその筋では有名人でね。そこに可愛い女の子が出入りしているとなれば、嫌でも噂は広まる。老師とブルーにコンタクトをとって、ミシェルの無事は確認していた。ミシェル、俺はよく考えろといったはずだ。俺がミシェルの歳の頃にはすでに自分の運命を選択していたし、危ない橋も渡っていた。だからミシェルがどんな道を選ぼうと否定する気はない」
「じゃあ、私のパートナーになってくれるの?」
「いいだろう。アンナには遠く及ばないが素質は十二分にある。サポートしてほしいならしてやる。だが、ミシェル、お前は何がしたいんだ? ボスから暗殺の依頼がお前にくることはないだろう。最近そういう事件の処理の仕方は流行らない。ボスのそばにいたいなら尚更だ。人を殺せば極刑は当たり前だ。今は銃跡で簡単に犯人は割り出せる。お前は既にブルーの所で有名人だ。警察もバカじゃない。それとも、ボディーガードをしたいのか? その体で? ボスの身長をわかっていっているんだろうな? それともこれからあと30cmでかくなってくれるのか? それとも単純に俺の妻になりたいのか? それなら今すぐ抱いてやる。ボスはお前に甘いが、俺はそこまで甘くない」
私はただ硬直して突っ立っていた。
ロレンツィオは私を一瞥するとソファから立ち上がった。
扉が閉まる音を背中で聞いていた。
私はその日いつまでも眠れなかった。
何度も何度も寝返りをうった。
読んでくださって、どうもありがとうございます。