まっとうな生活 1
「全寮制の女子高?」
私は絶句した。
昔、マフィア関係者の子供達がさらわれて人質になる事件が相次ぎ、それ以来学校にいってない。家庭教師をつけて適当に勉強してきただけだった。
「それ、入るの? っていうか、入れるの?」
「コネでなんとでもなるらしいな。ミシェルも賢いし。とにかく、ボスの命令だ」
ロレンツィオがすまなそうな顔をしている。
そうきたか。敵も然るものである。
こうなれば、こちらも意地だ。死んでも用心棒になってやる。全寮制の高校生活とやらは別に嫌ではない。少し、興味もある。
けれど、私から射撃や武道や用心棒を取り上げるために、そこまでする?
あの、最後のひどい私の捨て台詞へのあてつけだろうか。
・・・考えたこともなかったけれど、私の存在は迷惑だったのだろうか?
ロレンツィオも、ボスも私が迷惑だったのだろうか?
少し、いや、かなり不安になった。
「ロレンツィオ、私がいると迷惑・・・?」
思ったことはすぐ口から出てしまう。
「まさか。迷惑だなんて思ったことは一度もない。ミシェルがいてくれると楽しいよ。でも、そうだな。同じ年頃の人と一緒に生活するのも悪くないと思うよ。いろいろな世界があることを知った方がいいかもしれない。暫く、ここから、この世界から離れてみるといい」
ロレンツィオは絶対に嘘はいわない。
だから、迷惑では、ない。
ただ、少しここから離れて別の世界で暮らした方がいい、そういうことだ。
ロレンツィオとボスが全寮制の高校にいけ、というなら私はそれに従うしかない。
「ロレンツィオ。もし、もしも・・・、3年間ちゃんと高校にいって、戻ってきて、そのとき私が・・・、ロレンツィオのパートナーにふさわしかったら、パートナーにしてもらえる?」
私は勇気をふりしぼっていった。
ロレンツィオはじっと私の目をみていった。
「・・・いいよ。3年間、よく考えるといい。人を守るといいながら、自分の命を懸けるということがどういうことなのか。俺は・・・ミシェル、やはりお前に平和な世界で生きてほしいと思っている。・・・アンナやアキラのように死んでほしくないと思っている。ミシェル、愛しているよ」
ロレンツィオはそういって私をギュッとハグしてくれた。
読んでくださった方、どうもありがとうございます。