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すれ違い 1

 ボスのバカ。おたんこなす。

 どんなに私が成長したか説明しても、聞いてもくれなかった。

 射撃の腕前をみてほしいといっても、銃にすら触らせてくれなかった。

 お前は子供だ、そればっか。

 頭から私を子供扱いして。

 これじゃ、用心棒なんて無理に違いない。


 確かにボスは軟弱そうじゃなくなったけど、そういう意味では用心棒の必要性は減ったのかもしれないけど、人の話をまともにきけない所とか、頑固なところとか、全体的に子供っぽい。庇護が必要なのはボスの方だと思う。現に、セルジオやロレンツィオがお守りしてるわけだし。


 私一人増えたところで、セルジオもロレンツィオも助かるだけで、困ることなんかない。足手まといにもならないと思う、たぶん。ロレンツィオの話だと、最近は以前に比べ大分マシになったけれど、この間も車に乗り込むときに襲われかけたらしい。私だったらボスが来る前に駐車場のチェックぐらいするし、危険なやつは始末する。


 もういい。私はボスの家を出ることにした。

 だって、ボスの家にいたら、五月蠅いことこの上ない。

 自分が子供のくせして、まるで私を小さな子供扱い。

 銃には1ミリも触らせてもらえないし、武術の稽古もダメ。これではせっかく鍛えた体も勘もなまってしまう。


 語学はかろうじていいけれど、「夜間飛行」を原文で読むってどうなの?

 超もれそうです! の方がだんぜんマシ。

 ピアノの練習とかどうでもいい。

 あるのも知らなかったけれど、やけに立派なグランドピアノが置いてあって、やることがないなら練習しろという。


 エリーゼのために? 私はボスのためにいるんですけど?

 敵をやっつけて、ピアノを棺桶のかわりにするっていうなら話はわかるけど、っていったら、お父さんはそんな物騒な娘に育てた覚えはない! だって。けど、そんな娘に育っちゃってるんですよ、こっちは。とっとと私に護られていればいいものを、お嬢教育。なぜ?


 おまけに車の運転もダメってどういうこと? 車なんて誰だって運転するでしょ。イマドキ、猫だって運転する! といってやったら、猫は運転しないと冷静に返された。お前はまだ免許をもっていないはずだって。「免許なんて車を運転できるようになってからとりにいった方が安上がりだ」ってパパもいってた。そういったら、前のパパの言ったことは忘れなさいといった。


 この言葉に私はキレちゃったのである。

 パパはパパだ。私のパパは一人しかいない。ボスはパパじゃない!


 絶対にいってはいけないことを、ついいってしまった。

「軟弱な子供のくせに! 大人しく私に護られていればいいのよ!!」

 ・・・いくらなんでも言い過ぎた。

 ボスに対してあまりにも失礼だった。


 でも、口から出てしまった言葉はもう戻せない。

 私は、ボスの家を出て、ロレンツィオのところに戻った。


 ロレンツィオのところに戻っても、しばらくボスの顔が頭を離れなかった。

 最後の一言を言っちゃった後のボスの顔。

 傷ついた子供の顔をしていた。

 護らなければならない人を傷つけるなんて。


 頭を撫でてくれたボスの手の温もりとか、優しい綺麗な笑顔とか、思い出したくないのに思い出す。


 やっぱり、癇癪をおこさなければよかった。あんなこと、いわなければよかった。そうしたら、少なくとも、ボスのそばにいられたのに。そうすれば、ボスを護るチャンスだって、きっとあったのに。



エリーゼのために(ピアノ曲名)


いつもありがとうございます。

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