表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された蒼薔薇の子爵は、洗脳されていた婚約者を救い出し王太子にざまぁする ― 灰月王国秘史 ―  作者: ちゃーき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/6

婚約破棄と蒼い涙

※本作には婚約破棄・洗脳要素がありますが、

ヒロインの意思による裏切りやNTR描写はありません。

最終的に救済・ハッピーエンド予定です



その夜、俺は王太子に婚約者を奪われた。


夜会の中心で、すべての貴族が見ている前で。

それが、蒼薔薇の子爵セオディアス・クレイヴンの復讐の始まりだった。


▫ ▫ ▫


その夜、リリアナ・エヴェレットは夜会の光に目を細めた。


シャンデリアの煌めき。

貴族たちの華やかなドレス。

オーケストラの優雅な旋律。


すべてが、夢のような光景だった。


――けれど。


なぜか、胸の奥が重い。


「リリアナ」


名を呼ばれて振り向くと、赤毛の王太子アルベルトが立っていた。


「はい、殿下」


婚約者として、完璧な所作で一礼する。


だが、彼の表情は冷たかった。


「今夜、お前に話がある。大広間に来い」


命令口調。

そこに、かつての優しさは欠片もなかった。


嫌な胸騒ぎを覚えながらも、リリアナは頷く。


「かしこまりました……」

 


大広間は、すでに貴族たちで埋め尽くされていた。


今夜、何か重大な発表がある。


そんな噂が流れており、誰もが固唾を呑んで待っている。


そして――


リリアナは、その広間の中央に立たされていた。


無数の視線が、突き刺さる。


(……何が起こるの?)


その時。

玉座から、アルベルト王太子が立ち上がった。


「本日、余は重大な発表をする」


ざわめきが、一瞬で消える。


「セオディアス・クレイヴン子爵、前へ」


その名を聞いた瞬間、リリアナは息を呑んだ。


人垣の向こうから、一人の男が歩み出る。


黒い軍服。

漆黒の髪。

蒼白い瞳。


セオディアス・クレイヴン。


蒼薔薇の家紋を持つ名門子爵家の当主。

冷静沈着で、感情を表に出さないことで知られる青年。


――そして。


リリアナの、婚約者。


彼女は、彼が好きだった。


冷たく見えるけれど、時折見せる優しさが、彼女の心を温めてくれた。


「セオディアス・クレイヴン子爵」


アルベルトが、高らかに告げる。


「本日をもって、貴公とリリアナ・エヴェレット嬢との婚約を、破棄する」


……え?


頭が、真っ白になった。


「そして」


アルベルトは、さらに言葉を重ねる。


「余は、リリアナ・エヴェレット嬢を、余の妃として迎える」


広間がどよめいた。


「王太子が婚約者を奪うとは……」

「なんという横暴な……」


だが、誰も声を上げられない。

相手は、次期国王なのだから。


(どうして……?)


思考が追いつかない。


最近、夢と現実の境が曖昧だった。

王太子と二人きりで会った記憶があるような、ないような……。


「リリアナ嬢」


アルベルトが、手を差し出す。


「余の隣へ来なさい」


――嫌だ。


心では、はっきり拒絶している。


なのに。


足が、勝手に動いた。



(違う……これは……)


まるで糸で操られる人形のように、

リリアナは、アルベルトの隣へと歩いていく。


セオディアスは、その光景を、無表情で見ていた。


蒼い瞳には、何の感情も浮かんでいない――ように見えた。


「セオディアス・クレイヴン子爵。何か言い残すことはあるか?」


アルベルトが、勝ち誇ったように見下ろす。


セオディアスは、一礼した。


完璧な所作。

微塵の乱れもなく。


「王太子殿下のご決断、謹んで承りました」


氷のように冷たい声。


「リリアナ嬢のご多幸を、お祈り申し上げます」


そう言って、彼は踵を返した。


振り返ることもなく。


(待って……!)


叫びたかった。


(セオディアス様、待ってください……!)


けれど、声が出ない。

喉が、誰かに締め付けられているかのようで。


――ただ。


涙だけが。


静かに、頬を伝った。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

本作は婚約破棄・洗脳要素がありますが、

ヒロインの意思による裏切りやNTR描写はありません。

ざまぁと救済はきちんと用意していますので、

よろしければブックマークして続きをお待ちいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ