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29/32

26 前夜


(*+ - +*) < 更新頻度落ちます...。




ジョージとの戦闘から一夜明けた翌日の放課後。

黒崎と凛はそれぞれで勉強するらしく、俺は久々に広い自室で勉強していた。


エルシィは来ていないし、ルナもいない。ひとりの自室。

異世界に行く前の頃であれば当たり前だった静寂が、なんだか寂しく思えた。



次はこのページをやろうかな...えーっと、線部①のときの主人公の気持ちだから......。



「――珍しく静かだねえ、陽斗。」



声に振り返ると、そこには窓枠に座るリリスがいた。

どうせ大した話じゃないだろうと思い、手を動かしながら話しかける。



「...リリスか。今日は何の用だ?」


「少しお話したいだけだよ。......ねえ、陽斗。君が『何を払って』この世界に戻ってきたのか...本当に分かってるの?」


「...俺の記憶と、エルシィの魂――じゃないのか?」



俺が帰ってくるために神様に払った『代償』は、エルシィの魂と、エルシィに関する俺の記憶、あと強いていえば日本で培った勉強の知識ぐらいだ。他には――ないはず。



「...甘いよ、勇者様。そんなもの等価交換にもなってない。」



リリスの瞳に、夕日の光が不気味に宿る。



「君がこの世界に持ち込んだ、『聖剣グラム』、そして数々の魔法。――本来であれば、世界の理に反するから消滅するはずのもの...。それを維持するために、君はさらに記憶の一部を差し出していた。」


「...知らなかった。」


「無理もないよ。君は記憶を失っているんだから。......でも、記憶の欠落だけじゃない。」


「...まだ、あるのか。」


「――君がこの世界で幸せを感じるたびに、この世界と異世界の『境界線』は少しずつ削れていくんだよ。君が、君自身が、自分の幸せを遠ざけている。」



リリスの言葉に、シャーペンを動かしていた陽斗の手が止まる。コンビニ飯に感動し、凛と笑い、黒崎と勉強し、ルナと食事をする。その「平和」そのものが、常に脅威を引き寄せているというのか。



「...だから、グラムが鳴いている。グラムの様子がおかしいのは、海外の連中が近づいているからじゃないよ。......君がこの世界に馴染めば馴染むほど、グラムはこの世界を異世界に塗り替えようとしちゃうんだ。」


「......つまり、サミットの連中は、それを利用しようとしてるってことか。」


「その通り。まあ、どうするかは君次第だよ。」



リリスはそう言い残すと、夕闇に溶けるように姿を消した。



「――やっぱ、そう簡単には手に入らないんだな...平和は。」




―――同日深夜、東京ドームホテル。


昨日から続いていた特務四課の取り調べを終えたジョージと、サミットの一行がホテルの最上階――スイートルームに集まっていた。窓から街の喧騒を見下ろす男たちは、それとは対照的な緊張感の中にいた。



「ジョージ、標的(ターゲット)はどうだ。」


「...生半可な気持ちでは勝てない。全勢力を注ぎ込むべきだ。」


「――そうか。それにしても、笑わせてくれるな。魔王を倒した勇者が『中学3年生』に戻って義務教育をやり直すなんて。」



ソファに座るリーダー格の男が持つグラスの中で、琥珀色の液体が凍りつく。



「...おっと。」



氷結魔法ではない。彼の纏う冷徹な魔力が、ワインをも凍らせたのだ。


部屋の一角に置かれたモニターには、陽斗がテスト勉強をしている様子の隠し撮り写真と、グラムの飛び抜けた分析データが映し出されていた。



「明日、サミットの開幕と共に『回収』を試みる。......逆らうようなら、あの少年の望む平和ごと消し飛ばして構わない。」



最新鋭のタクティカルスーツ。異世界の呪印が刻まれた銃器。


東京の夜景をバックに魔法陣が展開される一室に、恐ろしい脅威が集結していた。


翌朝の陽斗を待っているのは、中間テスト最終日と――世界の命運をかけた、最悪の「会議(サミット)」だった。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

次回、いよいよサミットが迫るテスト最終日。

今のところ、二〜三話かけて一日を描く予定です。


(*+ - +*) < 次の更新は、明日...できたらいいなって思ってます。

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