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22 迫る二つの壁


(*+ - +*) < たくさんのPVありがとうございます...!!




「いいか、陽斗。英語は暗記じゃねえ、気合だ。この単語の並びを、敵の陣形だと思えばいい。」


「黒崎、それは無理があると思う。俺が異世界で放っていたのはあくまで『概念』なんだ。」


「いやそういうことじゃなくて...このままだと赤点どころか一点も取れないぞ。」



黒崎は頭を抱えていた。悪い噂も流れる不良の黒崎だが、意外にも勉強には強かった。

そして現在、陽斗の家庭教師として勉強を教えている。一方の陽斗は、シャーペンを回しながら、魔王の軍勢と戦ったときよりも疲れ切った表情をしていた。



「ハルト、疲れてるね。聖級回復魔法(ハイ・ヒール)をかける?」


「エルシィ...精神疲労には効かないっていつも言ってただろ。...あと、その姿で魔導書読まないでくれ。絵面が混乱する。」



法衣の上にエプロンを身に着けたエルシィは、近所のアパートで一人暮らしを始めた。どうやって戸籍を取ったのか、そもそもお金はどこから出てるのか...など、気になることは多いけれど、教えてくれなかった。......結局、今日も天宮家に来ているわけだけど。



「魔導書じゃなくてレシピ。ハルト、これ使っていい?」



一瞬エルシィの領域だと錯覚させるくらい、自然とキッチンに立つエルシィがフライパンを掲げてこちらに問いかけてくる。日本の「効率的な家庭生活」に感動したエルシィは、料理にハマっている。



「...しれっとキッチン立ってるけど、明日から母さん帰ってくるからね?」



どんどん緩んでいく勉強会の雰囲気。すかさず、凛がテーブルを叩く。



「陽斗、集中して!!...エルシィさん、申し訳ないけど勉強の邪魔はしないでくれる?」


「怖いなあ。仲良くしましょうよ、凛さん♪」


「...なんなのよ、もう......!」



凛がエルシィを睨み、エルシィはにこにこと凛を見る。

それがヒロイン争いであることに、陽斗は気づいていない。



「...そんなことより!東京のサミットでは世界各国の人達が集まるんだから、英語くらい話せないと失礼でしょ?」


「それは......たしかに。」


「だったら、さっさと覚えて。」


「...はい。」



スマホをいじるルナが視界に入る。

基本的に留守番を命じられているので、ルナはすっかりSNSに依存してしまった。



――ピロン♪



「ん?」



陽斗のスマホから通知音が鳴る。メールの送り主は、氷室だった。



『天宮陽斗くん。サミットに出席する海外の『帰還者』数名が、予定を早めて極秘入国した。目的はきみの持つキーホルダー――聖剣グラムの"鑑定"だと思われる。該当者は東京ドームホテルに宿泊している模様。周囲の警戒を怠らぬように。』



陽斗は画面を閉じ、窓の外に視線を投げた。


都心方向には"洗練されすぎた魔素のうねり"が確認できる。『索敵スキル』の範囲外ではあるが、そこに()()()()()()()()()が潜んでいることは確かだった。



(海外の勇者...魂を切り売りして力を得た、規格外の連中か...。)



魔王を倒した俺にすら匹敵する、あるいは「現代の技術」と「魔法」を融合させた未知の強者が、この街の平穏を脅かそうとしている。



「陽斗、どこ見てるの?次、この問題!」


「あ、ああ...二次関数か。こいつはどうすれば死ぬんだ?」


「死なないよ!解くの!」



世界を揺るがすサミットの足音と、数日後に迫った「赤点回避」のための死闘。


最強勇者のもとに、二つの壁が同時に迫ろうとしていた。




最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

次回、あと1回、勉強会が続きます。


(*+ - +*) < 次の更新は、明日の朝の予定です。

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