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21 朝の食卓


(*+ - +*) < 結構文字数増えてきました!

     噂によると、ルナちゃんのファンが増えてるみたいです...。




激闘から一夜。


疲れ果てていたあの夜、俺とルナはそれぞれの持ち場ですぐに眠りに落ちた。

エルシィには、出張でいない母さんの部屋で過ごしてもらった。

黒崎と凛は、それぞれの家に帰った。結局、こうして二人とも朝から訪ねてきたのだけれど。


こうして、俺の家のリビングでは日本の一般的な家庭では絶対に有り得ない光景が広がっていた。



「...おかわり。この『なっとう』ってやつ、意外と美味しい。」



さも当たり前という顔で食卓の椅子に座り、凛から借りたスウェットを着たエルシィ。



「エルシィさん、混ぜすぎですよ。......あ、でも、もっと美味しそうに食べてもいいんですよ?」



エルシィの隣でニコニコと世話を焼くルナ。元・聖女と元・魔王軍幹部という、本来は交わらなかったであろう二人が和やかに会話をしていた。



「......なんかもう、この状況に突っ込むの疲れたわ。」



ソファの隅でパンを齧る黒崎が、死んだ魚のような目で食卓を眺めていた。



「...黒崎、俺もだ。......凛、どうしたんだ?そんな険しい顔しちゃって...。」



テレビの前の横に広いデスクで、凛がノートパソコンを叩きながら、俺をじっと睨んでいた。



「...どうしたんだ、じゃないわよ!昨日の夜の光!住宅街のど真ん中で、あんなサーチライトみたいな光り方して!『深夜の謎のオーロラ現象』って、もうトレンド1位よ!!」


「あはは...まあ、VFXのテストみたいなのに......。」


「無理に決まってるでしょ!?それに、聖女に、魔族に、傭兵に、勇者...どんなメンツよ!ここは異世界の出張所じゃないの!!」



凛の叫びはもっともだった。だが、俺にも言い訳はある。

一人で帰還するはずが、気づけば愉快な仲間(と聖剣)が増えていたのだ。

決して俺が望んだことではない......そもそも、ここ俺の家だから俺はノーカンでいいのでは?



(主様、弱気にならないでください。エルシィが戻ったことで私の出力は安定します。境界の『修復』も三倍ほどの速さで進みますよ。)


「...エルシィが増えたことで世界の歪みが深刻化するとかはないよな?」


(...主様、それフラグです。)


「......。」



賑やかになったなあ、と思いながら、凛のノートパソコンの画面をのぞきこむ。



「ちょ、それ、俺の家の防犯カメラ......。」


「別にいいでしょ、ちょっと映像を見てるだけ。......それより、これ見て。」



画面が切り替わり、玄関先から家の外全体へ、映る場所が変わる。



「あー......。」



そこには、俺の家を包囲する複数のパトカーが写っていた。

玄関を睨む警察の連中の中心には、氷室と思わしき人物がいる。



「...特務四課が黙ってないわ。この状況で放っておくほうがおかしいもの。」


「ですよねー...。」


「でも、さっきリリスが言ってた。陽斗はいまや『最強の防衛システム』。...交渉の余地はあるってね。」



そのとき、玄関のチャイムが鳴った。



「はーい!」



元気に出ようとするルナを制止して、俺はガチャリ、とドアを開ける。

そこにいたのは、氷室でもその部下でもなかった。



「......やっほー。朝から美味しそうな匂い。...お腹空いた。」



ツインテールを揺らし、ランドセルを背負ったリリスだ。



「なんで、ランドセル?」


「...今日は学校。」



それだけ言うと、俺を無視して勝手に上がっていった。


...ここ、俺の家だよね?なんか人口密度が勝手に増えるんだけど。



「おかえり、エルシィ。......陽斗の『重荷』もなくなって、少し世界が安定してるね。」


「......リリス。...勝手に人の食事を覗き見るとは無作法ね。」



エルシィが冷静に箸を置く。二人の間には、見えない火花が散っている。



「...まあいいじゃん。......陽斗、きみに招待状が届いてるよ。」


「招待状?」


「...そう。日本の政府じゃなくて、もっと上の連中から。」



リリスが手渡してきたのは、漆黒の封筒。


そこには、異世界の文字――アステリア文字と、日本語が重なり合う、不思議な紋章が刻印されていた。



「――『万国帰還者(ワールド・ゲート)会議(・サミット)』。......世界中の『帰還者』が集まる、初めての会議。.........会場は、東京のど真ん中だよ。」



リリスの瞳が、面白そうに細められる。



「残念ながら、きみの平和な学園生活はいつになっても始まらない。その願望は今日で諦めるといいよ......本当の物語は、ここから始まるから。」



エルシィの隣で怯えるルナと、呆れ顔の凛、警戒する黒崎。平和を満喫するはずの俺のセカンドライフは、一軒の家を飛び出し、世界の命運がかかった舞台へと引きずり出されるらしい。



「......受けて立つ。...ただし、中間テストが終わってからだ。」


「うーん、その要求は微妙かな。」


「...なんでだ?」


「『万国帰還者会議』の開催日時は、きみの中間テスト最終日――最後のテストが終わってから会議までの時間は1時間もない。」


「......まじかよ。」



俺達『勇者チーム』には、新たにエルシィが加わった。


立ちはだかる中間テストと、タイムリミットの迫る『万国帰還者会議』。


戦いは常に、日常の隣にある。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

次回、中間テストに向けた地獄の勉強会が、始まる。


(*+ - +*) < 次の更新は、明日の朝の予定です!

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