18 第一回 『勇者チーム』作戦会議
(*+ - +*) < 書き溜めが多すぎる笑 まあいいことだけど。
(このエピソードを書き終わった現在【読者目線だと当時】は、12/26です。)
その日の放課後。俺の家の勉強部屋の人口密度は、かつてないほどに上昇していた。
「...狭いわね。」
本来俺が使うはずの学習机の椅子には、女王のように君臨する凛。
「へえ、このポテチ期間限定だ。」
床に座り込み、平然と俺のお菓子BOXを消費する黒崎。
「...ハルトさまの、おともだちですか?」
はじめましての凛に、話しかけるルナ。
...そして、部屋の隅に追いやられた俺。
いや、ここ俺の部屋だよな...?なんで俺が一番狭いところにいる...?
「陽斗、ビビってないでこっち座りなさいよ。」
「いやいや、おまえらが独占してるから場所がないんだよ。」
「「「...」」」
「なんで黙る!?」
なかなか場所を譲らない三人だったが、凛が渋々開けてくれたスペースになんとか座った。
「――で、改めて自己紹介しよう。今日が初対面の人もいるだろうし。...えーまず、幼馴染の凛。『勇者チーム』のマネージャーになって色々やってくれることになってる。」
「...よろしく、ちなみに名字は佐倉。」
「よろしくお願いします!」
「よろしくー」
ルナは元気に、黒崎はだるそうに返事をする。
「ルナは異世界で俺が救えなかった――と思ってた魔族。まだ慣れないことも多いだろうから、サポートしてくれると助かる。」
「ルナちゃん、よろしくね。」
「はい!凛さんのことも、たくさんおてつだいします!」
「で、黒崎。」
「陽斗の『相棒』だ。よろしく。」
「...勝手に名乗んな。」
「別にいいだろ。」
「...色々と噂は聞いてるけど......陽斗に変な影響を与えないように...。」
「はは、安心しろ。」
「できるか!」
「俺はしなくていいか。まあそんな感じで、これから『勇者チーム』として仲良くやっていこう...うん。」
段々とグダグダになってきた俺を見かねた凛が、俺から仕切り役を奪い取る。
「...一旦、陽斗は黙ってて。さて、作戦会議始めるわよ。」
凛がホワイトボード代わりにノートを広げ、机の真ん中に置く。
そこには、『作戦A』という見出しと具体的な手順が記されていた。
「まず、私のツテで渋谷の動画は『映画のプロモーションだった』ことにして、情報を流してる。...でも、これはあくまで時間稼ぎ。まだ終わってないんでしょ?世界の修復ってやつ。」
「...ああ。リリスの話によれば、あと数カ所......それも、大きいのを叩かなきゃいけない。」
「なら、これからは『チーム』で動くわよ。」
凛がノートに『【必要】境界の修復。大規模なものを数カ所。』と書き込む。
要点がまとめられていて分かりやすい。
「陽斗が戦って、黒崎くんはそれをサポート。...そのあたりは私もよく分からないけど、あんまり派手にやらないようにね。」
「...はい。」
「それと、ルナちゃん。」
「はい!」
「...うん、いい返事。ルナちゃんは、目立つための『看板娘』。ネットユーザーの興味を、渋谷の動画から『原宿系コスプレイヤーの留学生』RUNAに移り変わらせる。」
「がんばります!」
「...で、私はみんなのスケジュール管理と情報操作、あとはルナちゃんのサポートね。」
「スケジュール管理?」
「当然でしょ。あんた、来週は中間テストなんだから。勇者業で赤点だなんて、絶対に許さないわよ。」
「...やば。」
『中間テスト』という言葉に、俺と黒崎は同時に顔を引き攣らせた。
...今年の復習どころか、二年前の復習から始めないといけないかも知れない。日本で勉強した内容なんて、十年の記憶で全部吹き飛んだ気がする......。
(主様、どんまいです。)
過酷だがある意味平和といえる時間を過ごす、『勇者チーム』。
明日もこうして笑い声が響くのだろ――
――ッ!?
俺は咄嗟に窓に駆け寄り、勢いよくカーテンを開ける。
後ろでコップが倒れた音がしたが、いまはそんなことよりも、目の前の景色に思考が奪われていた。
夕焼けに染まっているはずの住宅街が、不自然な『闇』に包まれている。
「......だれか、来るぞ。この感じ――氷室でもないし、金髪野郎でもない。」
「――グハッ!?」
唐突な痛み。俺の体になにか攻撃が加えられたわけではない。
ただ、強烈な違和感を『心臓』に感じる。
(――!?主様、大丈夫ですか!!)
「あんた、どうしたのよ!?大丈夫!?」
「...大丈夫だ。」
なんとか立ち上がり、窓の外――庭の中央に立つ女の姿を視界に捉える。
漆黒のドレスに身を纏う女は、背中には崩れかけの――けれど巨大な、黒い翼の『残骸』が点滅している。
――なんだ、この既視感は。
バサ、と羽がひとつ揺れて、女が振り返る。その右手には、柄から先端まで真っ黒な槍。
「...やっと見つけたわ。......泥棒猫さん。」
女の声に反応するように、俺の『心臓』が激しい拒絶反応を起こす。
反応の元凶であるはずの彼女の瞳に映るのは、俺への恨みではない。
むしろ、深い悲しみが眠っているような瞳だった。
――わからない。こいつは一体、だれなんだ。
「ねえ、陽斗!この人知ってるの!?」
「おい、陽斗!しっかりしろ!!」
「...わからない、俺にも......ただ、俺から何かを奪い返しに来てる。わからないのに、感じるんだ.........。」
リリスの言っていた、『代償』。
俺が日本に帰るために支払った、あるいは奪った『代償』。
それが、いま、目の前にいるこいつだと、わからないままの脳が叫び続けていた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
今回の作戦会議で登場したノート、いつか再現してみたいな。それこそグッズとかで...笑
次回、陽斗の身に降り掛かった痛みと女の正体。彼女は誰で、陽斗に何が起きているのか!?
(*+ - +*) < 次の更新は、明日の朝の予定です。




