16 凛の追及
(*+ - +*) < 今年の終わりなのに、第二章がはじまります笑 皆さんは年越しどう過ごしますか?
戦いの様子が拡散されてしまった、翌朝。
俺は登校するのをこれほど躊躇ったことはなかった。そう、俺の視界に入るスマホ画面には、ことごとく『渋谷で光を放つ剣を持つ少年』の動画が流れていたのだ。
朝、家を出る前にニュースを見たときもそうだった。
どの番組も渋谷の動画に関するニュースが放送されていたうえに、とある番組では、その場にいたという人々の証言が取り上げられていた。だから、家を出るだけでも相当の勇気が必要だった。
(主様、何を怯えているんです。魔王の軍勢を前にしても堂々としていたあの主様が...。)
「...魔王は話し合いが通じなかったから、斬るしかなかったけど......人間は違うんだよ。」
意を決して教室のドアを開ける。ガラガラ、と音がなり、全員が一斉に振り返る。
...いまのクラスメイトの気持ちを表すとすれば、「やっぱ似てるな...まあそんなわけないか...いやでも似てるな...」だろう。確信が持てないままこちらを伺うクラスメイトとは対照的に、凛はまっすぐにこちらの席に歩いてきた。
「......凛、おはよう...どうしたんだ?そんなに気合の入った顔して...。」
「ちょっと来て。」
低い声。やばい、これはガチで怒ってるときのトーンだ。
有無をいわせぬ凛に気圧され、俺は泣く泣く屋上に連行された。
***
バタン、と扉が閉まる。
凛は振り返って、スマホの画面を俺に突き付けた。
「これ。......最新のARのテスターなんだっけ?」
「えーっと、その、だな...なんというか、その......。」
「嘘つき!!!」
凛の叫びが屋上に響く。彼女の瞳には、怒りだけではなく、悲しみが浮かんでいた。
「ARで空がひび割れるわけないし、怪物が人を襲うのもありえない!......それに...これ...。」
再びスマホを突き付けられた時、凛の瞳に涙が溜まっていることに気づく。
画面は動画をスロー再生し、空の歪みを断つグラムと俺の姿が高画質で映し出されていた。
「......なんで、私のあげたキーホルダーが本物の剣になってんのよ!!」
「...え?」
不自然に抜け落ちていた十年前の記憶が蘇る。
中学1年生の時。凛が宿泊行事を休んだ俺に渡してきた、安物のキーホルダー。
神様からの『退職金』だったこれは、はじめからあったものだったのか...。
(......ようやく思い出しましたか。...私は主様の思い出の品に、意識を宿していただけなんですよ。)
情報を処理しきれない俺に、凛はさらに問い詰めてくる。
「......隠し事、多すぎるよ...数週間経って戻ってきたかと思ったら、怪物倒しちゃうし...。」
休んでいた間、なにをしていたか聞いてきた時。
『シャドウ・スパイダー』を倒した時。
ARテスターだと誤魔化した時。
積もりに積もっていた隠し事が、凛の限界を迎えたのだろう。
...これ以上、凛を傷つけるわけにはいかない。
平和を願っての嘘が、まさに今、俺の平和を壊そうとしている。
「......ごめん、凛。...全部話すよ、俺が数週間――いや、『十年間』なにをしていたか。」
『十年間』のワードに凛が顔をしかめる。
「――これは...グラムは、最新の技術じゃない。俺が異世界にいた十年間の、相棒だ。」
「...異、世界?」
「......ああ。俺は十年間、異世界で勇者をしていたんだ。」
屋上の爽やかな風が、二人の間を通り抜ける。
勇者のセカンドライフ、第二章。
凛に「本当の陽斗」を晒す、過酷で温かい始まりだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
次回、語られる勇者の十年間。
(*+ - +*) < 次の更新は、明日の朝の予定です。




