表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/18

9 ツインテール襲来


(*+ - +*) < メリークリスマス!




「......開けていただけますね?」


画面越しに映る、冷徹な氷室の目。


怯えるルナを後ろに庇いながら、俺はドアノブに手をかける。



「やめておいたほうが良い。こいつら、令状なしで踏み込んできてるんだぜ。」



声に振り返ると、窓枠にもたれる黒崎の姿があった。



「......しれっと不法侵入してるおまえの方がやばいと思うけど?」


「まあまあ、いいじゃん。」


「...話し合えば、帰ってくれるさ。なんたってここは日本なんだから。」



(.........根拠のない自信...昔から変わらないですね。)



「......幻聴か。」



覚悟を決めて、ゆっくりとドアを開ける。先日の黒スーツの集団――氷室率いる特務四課と、中央でタブレットを操作する、女の子の姿があった。



「おー、いたいた。伝説の勇者、天宮陽斗さん?笑 おひさー」



「......は?」



腰まで届く長いツインテールに、フリルの付いた可愛らしいワンピース。

明らかに小学生と分かる、幼い少女。陽斗には、全く覚えがなかった。


「......わからん...親戚か...?」


「彼女は我々の『特別顧問』だ。君たちのようなイレギュラーを管理するための、な。」


少女――リリスは、俺をまじまじと見つめ、キャンディをぺろりと舐めた。


「......はは、相変わらず脳筋の顔だ。隣の聖剣ちゃんも泣いてるよ?『キーホルダー扱いされて屈辱ですぅー』って。」


(!? 主様、この少女は私の声が聞こえているのですか!?)


戦闘に備えてと思い、念の為に持ってきていたスクールバッグが、動揺に揺れる。


「なにいってるんだ?これは日本の最新技術でボイスが.........。」



「......ぷっ............あははははは!!...傑作だ!ねえ、こいつやっぱり馬鹿だよ。面白すぎるから、今日は見逃しちゃおうよぉ。」


俺の発言が余程面白かったのか、いつまでもクスクスと笑っている。

まだ信じられないけど......グラム、まじでごめん。


(主様、本当に、呆れてしまいますよ。あそこまでして気付かないだなんて...。)


一方の氷室は困惑の表情を浮かべている。


「しかし、リリス様...『被検体09』の回収命令が......。」


「...命令?そんなの私が"書き換えた"し。今この瞬間から、ルナちゃんは脳筋勇者さまの『観察対象』ね。それとも、文句あるの?」


リリスが手のひらをヒラヒラと振ると、氷室は悔しげに唇を噛んだ。


...どうしてルナの名前を知っているんだ、という困惑はありつつ、リリスから放たれる魔素を見ていると、当然のことに思われる。彼女から放たれる魔力の密度は、俺でさえも驚くほどだ。


「まあ...リリス様がそうおっしゃるなら......。天宮陽斗、今日のところは特別です。行くわよ。」


「「はっ!」」


氷室は力任せに言い捨てると、部下とともに玄関から離れていく。

よくわからないが、ボイス機能の話で助かったみたいだ。


「...行かないのか?」


玄関に残るリリスに声をかける。

リリスはクスクスと笑いながら、こちらに手を招いてきた。

いいから来い、と言っているようだ。



一歩前に出ると、長いツインテールを揺らしながら背伸びをし、俺の耳元でこう言った。



「......いい?...『門』が開いたのは君が帰ってきたからじゃない。...君を帰すために、誰かが『無理やりこじ開けた』んだよ。.........その代償が、そろそろ来るかもねぇ。」



「...代償?おい、どういう意味だ。」


問い詰める俺に、リリスは「...さーぁね。」と煙に巻く。

ぴょこ、ぴょこ、とスキップをして、彼女は氷室の方へ行ってしまった


「.........なんなんだ、あの子。」


「あいつ、神みたいな匂いがするぜ...。」


黒崎が戦慄したように呟く。



リリスが残した不穏なヒント。


俺の背後では、「私、ルナです! おてつだいします!」と慣れないエプロン姿でルナが張り切っている。


......母さんが困惑してるから、あとで上手く説明しないとな...。


勇者のセカンドライフは、息をつく暇もなく、進んでいく。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

次回、ルナとの休日。


(*+ - +*) < 次の更新は、明日の朝、8:00予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ