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魔王、擬態、そして虚死砲

勇者レンと聖女リンカは、女魔王に挑む。しかしその真の姿は

――筋骨隆々のおじさんだった。

ギャップ全開の死闘の結末は!?

魔王は悠然と歩み寄り、低く唸るように告げた。

「小娘……お前の力は確かに脅威だ。

だがな、勇者とてこの程度。

二人揃ったところで、まだ俺の足元にも及ばん」


レンは血を吐きながらも剣を突き立て、立ち上がった。

「……うるせぇよ。足元に届かなくても、

 俺は……絶対に、引かねぇ!」

リンカも震える声で叫ぶ。

「そうよ! 私たちはまだ負けない! 

 あなたを倒して、この世界を救うんだから!」


リンカが手を掲げると、魔王城の瘴気を押しのけて巨大な光の柱が聖女を包み込む。


「神の薬指っ!」リンカの前に巨大な指が現れると、

勢いよく魔王に発射される。

「すごいなっ」

「本当は神の右腕が召喚されるはずだったの。

 私のレベルが足りなくて、ごめんなさい」

「十分だろ!」

聖なる指先が魔王に直撃すると、

広間に新たな輝きが満ちた。


女魔王の片腕は落ち、真っ黒な血が噴き出している。

消し飛ばされて瘴気を再度練り上げながら、

リンカを憎々しげに睨みつけた。


「ほぅ……これは……面白くなってきたじゃねぇか」

魔王は腕を生やすと、黒き魔力をさらに高め、

全身を覆う鎧のような炎をまとった。

「勇者よ、聖女よ……

 その力、どこまで伸びるか見せてもらおうか!

 本当の俺の姿でな!

 女魔王は唇を吊り上げた。


その身体を覆っていた艶やかな女性の姿が崩れ落ちる。

煌びやかな衣装が黒炎に焼かれ、肉体が歪む。

やがて炎の中から現れたのは――


筋骨隆々の、どう見ても「おじさん」だった。

「うおおおおおおっ!!」

「……え、えぇぇぇぇ!?」リンカが目を丸くする。

「お、おじさん……? いや、魔王……?」


おじさん魔王は胸毛を揺らし、

地響きのような声で叫んだ。

「これが俺の真の姿だァ!

西川剛章(たけあき)の名を心に刻んで死にゆくがよい」

圧倒的な威圧感。

だが、レンは剣を構えつつも、顔をしかめてつぶやく。

「……なんか戦いやすくなったな」

「えっ!? なんで!?」リンカが慌てて聞く。

「いや、女の姿してると、

ちょっと斬りにくかったんだよ。

気を遣うっていうか……」

「レン……あなた……」

だがレンの剣は、確かに軽くなった。


本気の魔王――だが姿が「おじさん」になったことで、

レンは迷いなく斬りかかれる。

「ハァッ!」

光の刃が走り、魔王の肩口をかすめた。

血飛沫が舞う。


「ぐぬぅ……! まさかこの俺が……!」

「よし! 効いてるぞリンカ!」

「すごい……本気の魔王相手に!」

リンカは祈りを捧げ、

さらにレンを包む結界を強化した。

黄金の光がレンの背を押す。


魔王――いや、おじさん魔王は全身から黒炎を噴き出す。

「だが!まだだ! 俺の力はこんなものではないッ!」


レンは剣を構えるが、黒炎の勢いに吹き飛ばされる。

「ぐっ……うわああっ!」

「レン!」

壁を砕いて倒れ込んだレンの前に、

おじさん魔王が迫る。

巨大な拳が振り下ろされ、床が抉れる。

間一髪、リンカが結界を張って救い出した。

「大丈夫!?」

「ああ……くそ、力が桁違いだ!」


おじさん魔王は高らかに笑う。

「ハハハ!この姿こそ、余の本性!酒と油物を好み、

腰痛と戦いながら前魔王を支配した最強の男だ!」

「いや、誇るなよそれ!」

「だが強い……っ!」


魔王の手から黒刀が現れ、

振り下ろすたびに床が割れ、衝撃が走る。

だがレンはそれをかわしながら、

冷静に声を張り上げた。


「 おじさんよ! 俺たちも後がねぇんだ!

 お前を倒して、この世界を救う!」

「……名乗ったのだから西川と呼べ!

 特攻だけに頼った未熟な剣技で勝てると思うなら

 かかってこい!

 お前の言う“おじさん”を本気で倒せるか

 試してみろォッ!」


光と闇が交錯する――


「勇者よ……俺の全力を受けてなお、生き残れるか!」

魔王に握り締められた剣が黒い稲妻を纏い、

轟音と共に床を砕く。

レンは剣を両手に構え直し、低く息を吐いた。

「ここで勝てなきゃ、全部終わる……行くぞ!」

二人の姿が弾かれたように激突する。

金属が火花を散らし、剣戟が幾度もぶつかり合う。

「ほう……早くも俺の剣筋を見切ってきたか!」

おじさん魔王は笑いながら、

黒刀を上段から何度も叩き込む。

その重さは岩をも砕く威力。

受けるたびにレンの腕は痺れ、骨が軋む。

「くっ……化け物じみた膂力だな!」


「当然だッ! この肉体は百戦錬磨、

幾千の魔物の魂を喰らいし究極の器よ!」

再び振り下ろされた黒剣を、レンは紙一重でかわす。

背後の大理石の柱が粉々に砕け散った。


リンカが叫ぶ。

「レン! もう防ぎきれないよ!」

「黙って見てろ! 今は俺しかいねぇ!」

額から汗を滴らせながらも、レンは聖剣に力を込める。

その刃が光を帯び始めた。


「……聖女と共に歩む勇者は、どんな敵にも屈しない!」

レンが突き出した聖光が黒炎を裂き、

魔王の胸をかすめた。

血が飛び散り、魔王がよろめく。


「ぐぬぅ……この俺に傷を……!」

「まだまだだ!聖光一閃っ!」

剣閃が走る。


だが魔王も負けじと黒刀を振り上げ、二人は互いの力を叩きつけ合う。

衝撃波が玉座の間全体を揺るがし、

壁が崩れ、炎が天井を舐めた。

戦いは、まさに人と怪物の純粋な力のぶつかり合いだった。


レンは距離を取ると再び立ち上がる。

リンカが素早く駆け寄って手を握った。

「リンカ……やるしかねぇ」

「わかってる、呼吸をあなたに合わせるわ!」

二人が祈るように剣を掲げた瞬間、

聖女の光が剣を包み、

紅蓮の炎となって燃え上がった。


「“聖炎剣”!」

剣が唸りを上げ、部屋全体を照らす。

おじさん魔王の目が細まり、唇が歪む。

巨大な炎の一撃に焼かれた魔王は膝を付き、

再生を試みる。

――だが、二つに裂かれた肉体は尚も燃え続けた。


「くっ、この姿に止めを刺せるかなぁ!」

身体を二つに割かれた魔王はさらに形を変え、

リンカの姿を模して両膝をつき、神に祈りを捧げる。

「隙だらけなんだよっ!」

レンは迷いなく、擬態した魔王の頭部を

 一閃で切り裂いた。

「ノアが言っていたんだ。魔王の姿を信じるなってな!」


「すばらしい一撃だったわ。

 あなたとの関係を考え直したくなるくらい」

リンカは引きつった笑みを浮かべた。


「あり得ねーだろっ、聖女ごと叩き切るなんてよぉ。

 頭湧いてんじゃねぇか?」

二つになった魔王から粘液が飛び出し、口の形を作る。

「お前もだよ、聖女が止めなくてどうすんだよっ、

 台無しじゃねーか」


「うぼぁああ!!」

魔王の口から巨大な黒弾が発射される。

その瞬間、魔王の肉体は今度こそ崩れ去った。


【魔王の虚死砲】

魔王の呪い(極大)

魔王因子(呪いで衰弱した者を次世代の魔王とする)

威力拡散(刺激を与えると暴発。四方に拡散する)


残り1話となりました。

最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです!


ぜひ評価・いいね、お願いします。

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