第3話 林間学校で仲間発見!えぇ?!あなたがプリマ―レッドなの?! その①
わたしの名前は花咲ここる。
魔法少女隊のプリマ―ピンクとして、昨日も信号機型ワルサースル・レッドワタルンダーをやっつけたんだ!もちろん町であばれていたからというのも理由だけど、今日の林間学校をつぶされたらイヤだってとも思ったから!
「いや~今日も良い天気ポメねぇ~」
そのバスが待ってる学校に行く途中、ポメジロウがふよふよと飛びながらわたしに声をかけてきた。
「もー!ポメジロウ!他の人にみつかったら捕まって動物園に入れられちゃうよ?」
「なんども言ってるポメ。ポメは透明化してるから他の子たちには見えないんだポメ~」
「あ、そうだった!」
「ここるは忘れっぽいポメねぇ~魔法少女として覚醒しそうな子は、ピンチにならないとポメレーダーが反応しないことも忘れてないポメ?」
「そ、それは覚えてるもん!あーーはやく仲間みつからないかなぁ!」
昨日のレッドワタルンダーはとっても強かった。
わたしの光魔法で最後は元のサラリーマンにもどしてあげられたけれど、いつまでもひとりで戦うのは……正直ちょっとこわい。
だからはやく仲間を見つけようとしてるんだけど今のところ収穫はゼロ。
だけど!くよくよてしたって仕方がない!元気だけがわたしのとりえだもん!だから林間学校に向かうバスの中でも明るく楽しく元気に過ごそうと思っていたんだけど……
「ほーーほっほほ!こちらのカードを置いて良くって?UNOですわ!」
シズカがわたしよりもハンパなく元気だった。
わたしもバス用にトランプを用意してたんだけど、昨日の戦いで疲れて寝ちゃってたら……とんでもないUNOの盛り上がりでいま目を覚ました。
んん~~転校してきたときは誰ともしゃべらなくて、すっごくクールな感じがしたんだけどなぁ。
「あらシズカさん?ワタクシはさきほどスキップを置きましたわよ?よってアナタは1つ飛ばし!その宣言は無効ですのことですわよ!」
「あやみ。私をマネるならもっと練習してからになさい」
「ご、ごめん」
「で・す・が!私がUNOを宣言し、みなの注目が私に集まったとき……素早くスキップを放り込む手腕。実に素晴らしい悪役令嬢っぷりでしたわ。そして私がいまそれを指摘したところで証拠もなし……じつに見事です!褒美をさしあげましょう!」
そしてシズカが手を二回たたくと、なぜか吉田くんがシズカのリュックからお菓子袋を取り出し宝条さんに渡した。
「この中から好きなのをお選びなさい」
「ありがとうございます!シズカ様!」
宝条さんもすごく楽しそうだ……あとなんで吉田くんは一緒にカードをやってないのに楽しそうなんだろう。顔は赤いけどシズカのことを好きとかそういうカンジじゃ絶対ないのはなんとなく分かる。
「ほら。ここるもやらなくって?このカードゲームは人の性格がすぐ分かる素晴らしいものですわよ?」
「ただのUNOでしょ?!」
「あら?やりませんの?ここるは負けるのが怖いのかしら?ならばリンカンガッコウまでの道のりを、勝負の場に立つことさえ出来なかった情けない自分を抱えて過ごすと良いですわ」
「ぬぬぬぬぬ!わたしやる!宝条さん!わたしと組んでシズカをやっつけようよ!」
「え……?」
「弱者は群れるもの。ですが今後、数の強さを自分の強さと勘違いなさらないことですわ。おつむの足らないアナタはすぐに勘違いしてしまいそうですもの」
「「ただのUNOでしょ?!」」
わたしと宝条さんがハモった。そして目を合わせて笑ってしまった。
だけど、結果はわたしたちの全敗。
だって「本気を出しますわよ」なんて言ったシズカが、知らないうちにカードを取り替えてたり抜き取ってたりするんだもん!ずるばっか!
でもわたしと宝条さん、それにシズカはカレー作りの同じチームだったから、バスが到着する前に仲良くなれて良かった。
あっ!ひょっとしてシズカもコレをねらってたのかな?!
「じゃあ罰ゲームは、そのカレー作りとやらをお二人に任せますわ。私疲れてしまいましたので」
うぅ~……違ったかもしれない。
「あ…あの~ここる?」
そして林間学校に到着。さっそく川の近くでカレー作りが始まった。
宣言通りにシズカが丸太のベンチに座って、二人で野菜を切っていると宝条さんがわたしに話しかけてきた。
「昨日のことなんだけど……よ、吉田くんのことで色々言っちゃってごめんね?」
「べ、べ、べつにいいよ!気にしてない!」
「う、うん……それでもゴメンね」
それから宝条さんはだまって人参を切り始めた。
ほんとに気にしなくて良かったんだけどなぁ……でも、わたしだって逆の立場だったらちょっと気まずいかも。
「わぁ!人参切るの上手だね?」
「う、うん!お母さんにならってきたんだ!乱切りっていうんだよ!」
「へぇ!わたしにも教えて!」
「もちろん!こうやって転がしながらやるんだよ!」
だからなんとなく宝条さんのことが分かった気がした。
陸上部で足が速くって、ちょっと乱暴なところがあるけど、それはたぶんちょっとした照れ隠しなんだろうな……あ~宝条さんがプリマ―だったら良いのになぁ。
だからポメジロウにプリマ―の適性があるか調べて欲しいのに、ポメジロウはサービスエリアでバスに乗り遅れてタクシーでこっちに向かってところなんだよね……もーあいつったら。
「あ、あのさシズカも言ってたけど、宝条さんって……吉田くんのことを?」
「わ、私はべつに………ってもうムリだよね?はいはい認める!ってかもう宝条さんじゃなくってあやみでいいよ?よろしくね。ここる!」
「うん!」
「ちょっと手を止めないでくださる?私を空腹のまま待たせるなど、”ゲルカ王の腕は三本もない”のですよ?」
「「ゲル……?」」
「こほんっ……とにかく早くなさい。あと、私のこともシズカで良くってよ?ここる」
シズカはときどき先生も知らないむずかしいたとえ話?をする。
あと、このクラスは不思議とシズカが中心にまとまっている気がする。
吉田くんだけはシズカにキツく当たられると顔を赤くするようになっちゃったけど……あれはなんなんだろう?
それとなく「シズカのこと、どう思ってるの?」なんて聞いてみたら「シ、シズカ様をどうこう思うなんてめっそうもない!俺………いや、ワタクシはながめているだけで充分でございます」なんて言ってたから好きとは別だと思うけど。
そういうのも私が大人になったら分かるのかな?