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ねこみみ悪役令嬢 転生×転生  作者: 毛玉
魔法少女編
4/22

第1話 はじめまして、わたしがプリマ―ピンクです!

『わたしの名前は花咲ここる!小学6年生になったばかりの女の子!だけど大変なの!変なバケモノ・ワルサースルがやってきて町中が大パニックになっちゃった!せっかく大好きな吉田くんと一緒のクラスになったのに、学校も壊されちゃうかも!?だけどそこに現れたのは空飛ぶ犬のぬいぐるみ?!え?!わたしの魂が魔法少女に選ばれた?!えーい!良く分かんないけどやるっきゃないか!新番組【魔法少女隊 プリマー3】は毎週日曜日午前八時…』



「いったいコレはなんなのかしら?」


 リオーネが不機嫌そうに息を吐き、一時停止を押したリモコンを目の前の天使ガブリィに投げた。


 どこまでも広がる真っ白な空間。

 そして(無理矢理用意させた)真っ赤なソファーに腰をおろす悪役令嬢。

 その正面上空には神様の私室と同じサイズの巨大モニタ―が浮いており、その下には天使ガブリィが正座させられていた。


「そこが次の転生先でさ。主人公の花咲ここると一緒に魔法少女になって世界を救って欲しいんだよね」

「イヤですわ」


 目も合わさず彼女は答えた。


 ヴィヴィオーナ家は代々悪役令嬢の家系である。

 しかも彼女の母から遡ること8世代も悪役令嬢を続けてきた、生粋のそれ。

 だが、そのせいで尋常ではない悪業(カルマ)が溜まってしまい、そんなヴィヴィオーナ家を見かねた神が浄化のチャンスを与えた……というのが神の弁だったが、ガブリィ含め他の天使たちも「気まぐれと趣味だろうなぁ」と結論付けていた。


 そして、その転生は本来魂と記憶しか持ち越せないはずなのだが……。


 ぴこぴこ。

 

 なぜか彼女の頭には猫耳が揺れていた。


「あのさぁ~早く悪業(カルマ)を浄化して元の世界に帰ろうよ」

「……はぁ。なら早くなさい」

「はいはい。えーと……今回は『協力する幸せを勉強してこい』らしいよ?」

「だから資料(それ)を早くおよこしなさい」


 ガブリィが豊かな胸をつぶしながら抱いていた大量の資料。


 それは【魔法少女隊 プリマ―3】全49話の解説本から、リオーネの次の転生先である【小原シズカ】を含め敵味方全キャラの初期設定なども載った完全設定資料集だった。

 当然これも神の私物である。

 ちなみにその次回転生先の【小原シズカ】のキャラ解説にはこう書かれていた。


 主人公・花咲ここるの同級生。そして敵組織のボス・ワルサー王の一人娘。

 白黒のゴスロリを好み、母親譲りのジト目と、腰まである紫のロングヘアーが自慢。

 第一話から一応クラスのモブとして登場。初めてのセリフは第二話。意味ありげな表情で「気を付けて帰ってね」という台詞は、SNS上でも大変話題になった。

 それから何度かワルサースルの幹部・サイレントに変身しプリマ―たちと敵対するも、第14話『めざめてその魂!誕生プリマ―パープル!』で三人目のプリマ―としてプリマ―3に加わる。


「あら、最終的に自分の父である国王を倒すのねぇ」

「倒すっていうか浄化なんだけど……やっぱり抵抗ある?」

「いえ、まったく。世の常ですもの」


 そう歯牙にもかけずに言い捨てた彼女に、ガブリィの背は震わせる。

 悪役令嬢リオーネの資料に充分目は通しており、そのような歪んだ思考も父自身の教育だと知ってはいたが……目の前で優雅に資料をめくりながら、一切の哀愁も感じさせずそう言える彼女の精神の異常性は、若い天使には刺激が強すぎたのだ。

 

 今回の転生先『魔法少女隊 プリマー3』は神様が気に入っている人間界のアニメの1つ。


 だが 、神様がコレを選んだ理由はもう一つある。


 前回の『ぼくの飼い猫は悪役令嬢?!~転生したら猫の魂と合体しましたけど、私一向にかまいませんわ~』では設定上、元の悪役令嬢の姿(+猫耳)に戻ることができた。

 だが今回のプリマ―3はそのような設定がなく、小学6年生の体のまま過ごすことになり、前回神様をイラつかせた原因である力技による解決をさせないためでもあった。


 なにより神は好きなアニメの映画化や他作品とのコラボによってその世界観を壊されるのを最も嫌っている。また設定資料集にあるストーリーのIF話や、ボツネタなどは大好物であることは天界でも広く知られている。


 そして……実はリオーネに渡された完全設定資料集には、神様自身が抜き取ったページがあった。


 そこはリオーネの転生先である【小原シズカ】が最終回直前で死ぬパターンについて、監督がインタビューに答えていたページだった。


──神様は「死ぬことから学ぶこともある」とか言ってたけど……神様ってバッドエンド好きだもんなぁ。どうなることやら。


 ガブリィがそんなことをぼんやり考えていると、既にリオーネは立ち上がっており例の穴に入ろうとしていた。


「え?!あの量をもう読みおわったの?!」

「私を誰だと思ってらっしゃるの?私は栄誉ある……」

「はいはい、ヴィヴィオーナ家の令嬢様だよね?」

「では」

「あ、あの!ちょっと……えっと……気を付けてね?」

「……えぇ」


 そしてリオーネはその真っ黒な穴に躊躇なく足を踏み入れた。

 まるで庭のバラの様子を見に行くかのようにごく自然に。

 

 そしてその転生ゲートが閉じるとガブリィはため息をついた。


 ガブリィは若いながらも既にたくさんの魂を天国に導いてきた。

 だが彼女が死者を迎えに行く直前、自分が死んだというショックに魂が耐えられず、壊れた魂が自ら地獄に迷い込んでしまうのを何度も見てきたのだ。


──あの子が……もしそうなっちゃったら早く迎えに行ってあげよう


 神に運命を弄ばれる彼女を憐れに思い、ガブリィはそう心に固く誓うのだった。

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