最終回 かがやけ!わたしたちの明日! その①
わたしの名前は花咲ここる。
すっごく楽しかった林間学校が終わって一週間。
あやみやシズカとも仲良くなれたし、橘先生もすっごく人気者になったんだけど……あれからシズカが学校に来なくなった。先生も連絡がつかないて困ってるって言ってた。
あと先生たちのウワサを聞いたんだけど、シズカの家に行ってみたらなーんにもない空き地で、家なんかなかったらしい。
「ふたりで探そ!」
そうあやみが言ってくれて毎日学校が終わったら探してる。
だけど……よく考えたらシズカのことをわたしたちは何にも知らない事に気づいた。あやみは「シズカは悪役令嬢ものが好き!」って言って本屋さんとかも探すけど、やっぱりいなかった。
ポメジロウには「シズカのことはあきらめて仲間のプリマ―を探すポメ!」なんて言ってくるのを無視してたら、へそを曲げて今日は学校についてこなかった。帰りに大好きなポテツを買って機嫌を直してもらおうかなぁ。
「な、なんだ?!あの空!」
授業中そんなことを考えていたら、吉田君が窓を指さして大声を出した。
急に暗くなったから私たちもそっちを見たんだけど……さっきまで抜けるような青空だったはずなのに、空が真っ黒。
真っ暗じゃなくって真っ黒。
まるで空に穴が空いちゃったみたいだった。
「みんな落ち着け!職員室に連絡が入ってないか確認してくる!」
そして橘先生が教室を出て行こうとしたとき……その真っ黒な空に、すぅーーっと赤い線が入った。
虹みたいにアーチを描いて西から東の地平線に。
「あ、あれは!!ワルサー空間だポメ!」
わたしの目の前に急にポメジロウが現れた。
「ここるなにそれ!?しゃべる子犬?!」
「てか空飛んでる!?」
「ちょっとポメジロウ!透明化の魔法はどうしたのよ?!」
「そ、それどころじゃないポメ!このままじゃこの町は……いや地球が滅んでしまうポメ!魔法少女もここる1人しかいないのにポメ!」
ポメジロウの顔が真っ青だ。こんなにあせっている顔は見たことがない。
気付くと空飛ぶ子犬でたクラスのみんなも、静まり返って息を飲んでいた。
そして他の教室から、特に下の階の下級生の教室から悲鳴があがった。
「と、とにかく時間がないポメ!みんなを避難させるポメ!!橘先生お願いするポメ!」
「なんだか分からんが分かった!みんな体育館に並んで進め!」
そして6年生全員が教室の前で列を作り、体育館に向かって歩き出す。
先週の林間学校の事件のおかげで橘先生のいう事をみんながすぐに聞いて、田中くんと中田くんも静かに体育館に向かっている。
けどわたしは気付いてしまった。
その赤い線がすこしずつ太くなっていってて、その向こうからすっごくイヤな感じがするのを。
「もう……なにもかも手遅れかもしれないポメ」
◆
真っ赤な空が特徴のワルサー空間。
常に真っ赤な空をコウモリが飛び、ときおり本編に一切絡んでこない竜が火を吹いて飛んでいる。
そこに浮かぶワルサー城。
そのデザインを担当したデザイナーは、ゴシック建築の教会を参考に城をデザインした。
左右対称に尖塔が並び、赤と紫だけで作られたステンドグラス。
汚れているのではなくそういうデザインだと全体的に赤茶けているワルサー城。
その気合の入りすぎた不気味さは多くの女児にトラウマを与え、多くの大人たちがその資料集に多くの金を落とした。
そしてガイコツをあしらった正門を潜り、本館の両開きのドアを開けると大広間。
そこは紫の絨毯が敷き詰められており中央には2階へ大階段。
手すりや壁には正門と同じくこれでもかとドクロがあしらわれている。
そして、二階に上がらす左に進むと鉄製の両開きのドア。
この城の扉は基本木製であり、その錆びつき重厚感のあるドアは城の中でもかなり浮いているのだが……そんな妙な存在であってもリオーネは気付かなかった。
なにしろココも神様が監督にオーダーし、急遽用意させたものだったからだ。
そしてその鉄扉の向こうは、ちょうど東京ドームの広さ(公式設定集『劇場版・きゅるっと♪プリマ―5~おこせ友情のきせき~』より参照)がある大倉庫。
よってここはプリマ―3ではなく、次作の、しかも劇場版の設定から引っ張ってきたものであり、神が元々そこにあったかのように認識を改変させたのだ。
そして、現在そこに1000体を超える怪人たちが詰めている。
『魔法少女隊 プリマ―3』からはワルサースル四天王。火のエンテンカマル、水のウォータース、風のウィンドール、岩のガンコードル。
『きゅるっと♪プリマ―5』からはヤバワルズ七天柱。爆炎のヤバクエン。水流のヤバスプラッシュ。風速のヤバイフウ。呪いのヤバジュ。闇のクラヤババ。氷結のヒヤヤバー。隕石のヤバラッカー。
『劇場版・きゅるっと♪プリマ―5~おこせ友情のきせき~』からは3破衆。怒りのオコルンボ。悲しみのカナシンボ。楽しみのラクンボ。
さらに各作品から通常回の敵や雑兵も集めれられ、指令室にいるヤミィからの出動命令を今か今かと待っている……のだが、怪人たちはヒマを持て余しすでに小競り合いも発生していた。
元々同じ作品の中でもケンカするような連中だ。
それがロクな説明もなく集められた上に、周りには知らない怪人もウヨウヨいる。
また、その説明にはプリマ―を倒すことが目的とはあったが、このような数に頼った戦法をとることに疑問を覚える者も少なからずいた。
「なぁ……あの赤いマルなんだろうな??」
「どれだよ?」
洗濯機型ワルサースル・ティッシューダが、計量カップの手で指した先には大倉庫の東の天井。
そこには乱暴にペンキで描かれた赤い大きなマルがあったのだ。
だが聞かれたコタツ型ワルサースル・ミカンデネルンダーは煩わしそうに「前からあったんじゃね?」と、隣に座るティッシューダの目も見ずに答えた。
彼らが出撃するのは倉庫奥の鋼鉄製の上下開きのハッチ。
その開門の指令を出す司令室には、リリーと小原シズカ小原シズカ……そしてもう一人。
ワルサー城から沸き立つ悪意は倉庫か司令室からか。
次回、【魔法少女編】最終回。




