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ウカミタマ ~地球奪還軍第00小隊~  作者: ろくよん
イチカ・アンチノミー
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任務達成への軌跡

 イチカとラァ・ネイドンが戦っている中、トラノスケたちは灰結晶の大地を駆けていた。

 目的地は同志、カズキが率いている部隊がいるところ。

 スターヴハンガのラァ・ネイドンが現れた、ならばそれに対してどう対処するか。その作戦を決めるためだ。


「小笠原指揮官!」

「松下指揮官! 無事か!」

「ああ、こっちに被害はない!」


 合流することができた。

 他の隊員はグラトニーの襲撃を警戒して防衛態勢を取らせている。


「だが、平泉隊員が一人で勝手に……」

「ああ、さっき寺山隊員からの通信で平泉隊員の声が聞こえた。すでに戦っている」

「速いな……大丈夫なのか?」


 心配に胸が積もる気分になるトラノスケ。

 イチカの強さは知っている。

 しかしスターヴハンガはぶっ飛んだ存在だ。それはビィ・フェルノとの戦いで嫌というほど思い知らされた。あの時の戦いを思い出そうとすると体に穴を開けられた痛みが蘇ってくる。

 だからこそイチカが生き残っているか心配になってくるのだ。


「彼女のことも心配だが、私たちがするべき目標を定めた方がいい」

「……そうだな。迅速に行動するべきだ」

「松下指揮官、私たちの目標は変わらない。目的は二つだ」


 一つ。


「スターヴハンガのラァ・ネイドンを討伐すること」


 二つ。


「侵食樹の破壊をすること」


 その二つ。

 どちらも危険な任務であることは変わりない。凶暴なグラトニーがいるのは確定している。

 だが一つ目のラァ・ネイドンの討伐はより難しい。

 あの大規模な竜巻をいとも簡単に起こせるグラトニーだ。油断すれば一瞬で風に巻き込まれてサイコロステーキのようにバラバラの肉塊へと姿を変えるだろう。

 だがトラノスケはどの任務を遂行するかはすでに決まっていた。


「なら、俺の部隊がスターヴハンガを討伐しに行く」


 迷いなく言い切った。


「……危険だぞ」

「でも、イチカが戦っている。自分の小隊が戦っているんだ、ならば自分も戦わなければ」


 それに、


「ハイドラグンのスピードなら空を飛ぶグラトニー相手でも十分に戦える」


 音速を超えるハイドラグン。

 トラノスケの相棒であるこのドローンならラァ・ネイドン相手にも戦えることができる。戦闘力の差は圧倒的であろうが、トラノスケから攻撃を仕掛けてダメージを与えることはできるのだ。

 ならばトラノスケはラァ・ネイドンを相手にする部隊の指揮官に相応しい。


「……確かに、私より君の方がラァ・ネイドンを相手にできるか」

「ああ」

「死ぬなよ。前みたいに生き残ってくれ」

「全員、生きて帰ってくるよ」


 カズキも説明を聞いて、トラノスケに託すように胸元に拳を当てた。勝ってくれ、その熱い思いが機械の腕から伝わってくる。

 トラノスケの心に闘志が沸き上がった。


「で、どうやって戦う?」

「スターヴハンガはまさに災害の化け物だ。数で攻めるのは得策じゃない。少数精鋭がいい」

「しかも、奴の主戦場は空だ。空中でも戦える隊員が望ましい」


 ラァ・ネイドン相手には数の暴力は行えない。

 実力の差というものもあるが、一番の理由はラァ・ネイドンが生み出す黒い竜巻。数の差をものともしない圧倒的な広範囲攻撃。隊員の数を増やすということはラァ・ネイドンにとっての的が大きくなるということ。

 しかも奴は空に浮かんで戦っている。

 となれば実力がありつつ、空でも戦闘が可能な隊員を連れて行くのがいい。


「ならば私が戦うべきだ」

「リオ!」


 第00小隊の隊長、リオが名乗り出る。


「私にはジェットブーツで空を浮かべる。まあ空を留まることは難しいが、それでも私のキセキ、『光刺す道(ライトニングカレイド)』ならばどれだけ素早く飛翔しようが当てることができる」


 リオの得意なハイスピードでの空中戦。

 そして光を屈折させる『光刺す道(ライトニングカレイド)』ならばラァ・ネイドンの飛翔にも対応できる。


「それに……お前はスターヴハンガと戦うのだ。私を置いていかないでくれ」

「リオ……」

「個人的な我儘……それでもお前と戦いたいのよ」

「いや、助かるぜ。リオがいれば百人力だ」


 あそこまで連れて行ってほしいと願うのだ、連れて行かない理由はない。

 戦闘だって頼りになる第00小隊の隊長だ。


「それならばわたしも行きましょう。空は飛べませんが狙撃で援護はできますよ~」

「エリナさん!」

「スターヴハンガとの戦いは無傷ですみません。絶対に治しますからね」

「頼りになる!」


 エリナもトラノスケについていく。

 彼女が持つ、『無傷の祈り(メメントララバイ)』ならば狙撃で味方の回復ができる。エリナがいればスターヴハンガとの戦いでも死ぬ確率が低くなるだろう。

 回復の支援兵がいればそれだけで生存率が上がるのだ。


「となるとマリさんとツムグは侵食樹の破壊に専念した方がいいか」

「そうね。どれだけ速くても空は飛べないもの」

「お役に立てず、申し訳ありません……」

「いや、侵食樹の破壊も大事な任務だ。ツムグならぶっ壊せるよな?」

「――はい! もちろんです!」

「スターヴハンガとの戦いはまた今度ね。楽しみにしていたけど」

「最初はスターヴハンガとの戦いに消極的だったけど、今はすごい好戦的になったな」

「死線を潜り抜けたから、かしら」


 マリとツムグはカズキの部隊に入って共に侵食樹の破壊に行くことになる。

 トラノスケの指示に従うことを最優先にしているツムグを他の部隊に入れるのは少し不安ではあるが、マリがいるのなら大丈夫であろう。大事な時は真剣になるだろうし。


「小笠原指揮官、マリさんとツムグは頼りになる隊員です。彼女たちなら一瞬で侵食樹を破壊できますよ」

「頼りにしている。ならこちらはソウォンと狙撃が得意な隊員をそちらの部隊に入れよう。

「そうこなくっちゃ! アスカやモモカだって戦っているもの。アタシが出ないなんてことはないわ!」


 待ってましたと言わんばかりに声を上げる。

 隊長たちが強敵と戦っているのに自分だけのけ者にされているのがちょっとムカついていたソウォン。

 だからスターヴハンガ討伐の部隊に入れることに喜んでいた。

 ラァ・ネイドンを討ち取ってエースとしてふさわしい活躍を残すために。


「よし、俺たちはスターヴハンガであるラァ・ネイドンを討伐しに行く! ついでにイチカを手助けにな」

「スターヴハンガの戦いなら私に任せてほしい。伊達に死にかけても、生き残れてこれたわけではない」

「まっ、頼りにしているわよ。指揮官と隊長」

「こっちもな」

「皆さん、ケガをしたらわたしに言ってくださいね! すぐに治しますから!」

「「「はい!」」」


 トラノスケの部隊に弱気になっている隊員はいない。

 この闘志さえ消えなければ、スターヴハンガ相手にも勝ちきれるはずだ。


(前は退けることしかできなかったが……今回は違うぜ、スターヴハンガ!)


 必ず勝って生き残る。

 指揮官としての使命を燃やしトラノスケは、イチカとラァ・ネイドンがたたかっているばしょまで部隊を連れて向かうのであった。





「まっ、よろしくね。安心して、さすがに他の小隊の指示は聞くわよ」

「指揮官さま、大丈夫なのでしょうか……心配ですね……やっぱりコッソリついていって」

「やめろ」


 やっぱり不安になってきたカズキ指揮官である。


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