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ウカミタマ ~地球奪還軍第00小隊~  作者: ろくよん
リオ・アヴェンジャー
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新しい小隊との出会い

 服装を整えて深呼吸して息を整える。

 案内してくれたアキラと別れて、自分の部隊である00小隊の隊員たちと出会うために寮へと向かった。

 自分が指揮官として共にグラトニーと戦う隊員たち。これから長い付き合いになる。というか短い付き合いなんて死んで別れるぐらいだ。そんなことになってはいけない。


(ちゃんとしないとな……)


 いくら自分が指揮官の立場とは言え、戦場では彼女たち隊員の方が先輩であり、多くのグラトニーを討伐してきた実力者。

 失礼な態度を取るわけにはいかない。初対面の印象が最悪だった場合、作戦の士気にも影響が出る。

 宇宙からの侵略者、グラトニーを相手にするのだ。こちらも小隊のメンバーと力を合わせて戦う。ならば不信感を得られないようにきちんと挨拶をしなければ。チーム内に不和を生み出してはならない。

 扉の前で深呼吸して落ち着く。

 普通のあいさつを心がけて。


「……よし!」


 扉の横にある手のひらが書かれたガラスの板に手を置き扉を開く。そして中には入って、


「え?」

「……ん?」


 女性の声が聞こえた。


(あっ……)


 そこには見知った人物がいた。

 トラノスケが地上エレベーターでグラトニーに襲われたとき、空からやってきて自分たちを助けてくれた白髪の隊員だ。

 彼女は自分が指揮する小隊の隊員なのか――普通の状況ならそう考えていただろう。

 

 ――目の前にいる隊員は着替えの途中か、下着姿でいた。


「…………」

「…………」


 この場に静寂が支配する。両者は立ち止まったまま見つめあっていた。アクシデントに二人とも思考が追いついていない。

 そして両者の顔が赤くなっていって、


「…………っ⁉」

「うあああぁぁぁっ⁉ ごめんなさいっ‼」

 頭を下げて謝り、後ろに向く。女性の体をこれ以上見ないためだ。


「……あなたいったい……その服、指揮官の?」

「は、はい……そうです」


 すごく声が冷たい。顔が赤いのは羞恥と怒りだ。

 そりゃそうだ。誰だって見知らぬ異性に見られたらそんな感情を抱く。

 確かに自分を助けてくれた彼女に会いたいとは思っていた。感謝の言葉を言いたいとも思っていた。

 だがこのような状況に会いたいとは一片たりとも思っていない。


「その……怒ってますよね」

「ええ、あなたが指揮官じゃなかったら本気で殴っていたわ」


 ウカミタマに本気で殴られたら死ぬ。頭が血肉で弾ける。

 自分が今すべきこと、トラノスケは必死に考えて、


「す……すみませんでした‼」


 謝ってこの部屋から出ることだ。

 まずは白髪の隊員が着替えを終えることを待つのが先であろう。


――ドン‼


「うわっ⁉」


 とにかく急いでこの部屋から出ようとしたら、誰かにぶつかってそのまましりもちをつく。

 視線を上げると青髪の女性がいた。どうやら彼女にぶつかってしまったようだ。


(たしか、この人! 前に大型の狼グラトニーをぶった斬っていた……)


 ここにも命の恩人が。

 とりあえずぶつかってしまったことを謝らなければ。


「ご、ごめんなさい!」

「うるさいと思ってここにきたけど……白神、あなた男連れてきたの? そんな大胆なことする娘だったなんて」

「違う。勝手に入ってきた」

「ようは事故ってわけね。ねえ、あなた指揮官でしょ」

「は、はい」


 すると青髪の隊員がしゃがみ込んで鼻がぶつかりそうなぐらい顔を近づけて、まるで品定めするかのような視線を向けて、


「へー……」

「な、なんでしょうか?」

「ふーん……なかなかイケてる顔ね」

「へ?」


 すると手のひらでトラノスケの頬を撫で、そこから胸元、お腹へと手を下ろしていき、


「体つきもいいし、こっちの方も……期待できそう。ねえ、今夜私の部屋に来ない?」

「……は、はぁ⁉」

「安心して、とっても楽しいことだから。ね?」

「ヴァイセン。黙れ」

「いいじゃない。軍に入ってこういうこと、してなかったし。新人の指揮官相手なら問題ないでしょ」

「知らない」


 この部屋の空気が変わったような気がする。

 冷たい雰囲気から刃が飛び交う鋭い雰囲気に。どっちにしてもこの場に居続けることのが心に来ることに変わりはない。

 どうやって止めようかと思っても、色々なことが起きすぎてパニック状態のトラノスケは言葉を発することができず、ただこの場をどうにか収めてほしいと願うばかりである。

 だがそんな願いは、


「あー、皆さん! そろそろ指揮官がきま……」

「あら~」

「むっ⁉」


 このロビーに新しい隊員が来たことでダメだったことを察してしまう。

 下着姿の白髪の女性、そして色っぽい大人の女性が座り込んでいる男に向けて大胆な行為をしている。

 その光景を見て、深緑色の髪をした女性隊員が、


「キャアアア! と、とうとうヴァイセンさんが男を部屋に連れてきましたっ! 白神さんものってます! うわぁぁぁっ!」

「あらあら〜、三人であんなことしてたんですか? 仲良しですね~」

「なんと! 新しい指揮官様がもうきましたか! はやく挨拶しにいかなければ!」


 三者三様大暴れ。

 収集つかなくなってきた。

 この状況にトラノスケは頭を抱える。


「あなた、いきなり人気者ね」

「……指揮官」

「ご、ごめんなさい」

「……とにかく部屋から出て」

「あなたも指揮官が来るって言うのに普通ロビーで着替える? 自分の部屋で着替えればいいのに」

「訓練で汗かいたから」

「部屋にもどったら? 私はこの子たち落ち着かせておくから」

「……わかった」


 白神と呼ばれた隊員は自分の部屋に戻り、


「ほらほら、かわいい新人指揮官君のご到着よ。皆、静かになって」

「可愛い! のでしょうか! かっこよく見えます! 男性にはその誉め言葉のほうがいいと言われました!」

「あ、あわわわ……」

「平泉ちゃん、まだ動揺してますね~」


(俺……やっていけるのかな?)


 とりあえず宿舎を出ながら、自分の失態に不安を抱くトラノスケであった。

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