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ウカミタマ ~地球奪還軍第00小隊~  作者: ろくよん
イチカ・アンチノミー
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無法者を捕まえろ

「なんだぁ? あのみずぼらしい戦車、逃げていくわ!」


 第00小隊がグラトニーの殲滅に向かっていく時間にさかのぼる。ホバータンクが遠くに走り去っていくのを無法者が見つめていた。

 乱射していた銃を下ろして、余裕そうな表情を浮かべている。


「私たちに恐れをなしたのか?」

「どうする? リーダー、追いかけるか」

「そりゃあそうさ! 飯も金目のもんも! なんなら武器だって奴らを倒せば手に入れられるのさ!」


 彼女たちにとって獲物が必死に逃げるように見えたのだろう、そのまま追いかけようとする。全力で走ることはせず、走り去っていった方向をジョギング感覚で走っている。

 そんな軽い気持ちで走っているのならおしゃべりだって止まらない。


「あいつ等は武器は強くても人間は打てないもんね!」

「でも私たちは撃てる! 度胸が違うからな!」

「人質にしてシティに殴り込んだらもっといいもの貰えるぞ!」

「化粧品が欲しいわ!」


 自分たちの方が上に見て、地球奪還軍を見下して、奴らの奪った物資で何をしようか妄想を始める無法者たち。

 先ほどまで同じ人間に銃をぶっ放していたとは思えない行動。

 グラトニーはびこる危険な地上であまりにも呑気にしている。これまで生き残ってこれたのが不思議なほど。

 彼女たち無法者の精神は常に無敵だ。

 自分たちはグラトニーがやってこようが生き残れる自信がある、必死に生き残っているのだから他人からものを奪っても問題ない。自分たちが生き残ることの方が大事で、むしろ無敵の力を授かった自分たちこそが生きるべきだと思っている。

 だから彼女たちの引き金は軽い。

 自分たち以外への存在は価値なんてないと思っている。

 そんな心が薄っぺらい連中。

 それが無法者という存在だ。


「ねえ、ちょっと待って」


 ホバータンクを追いかけている途中、無法者の一人が不思議そうに声を上げる。


「あれ? なんか人少なくない……?」

「え?」


 周囲を見渡しながら疑問に思ったことを告げる。

 仲間の人数が少ないような気がしたのだ。

 だが他の無法者はそんな馬鹿な、と鼻で笑う。


「何言ってんのよ? 今考えた怖い話?」

「いや、私たちは十人で行動しているじゃない。今数えたら九人……」

「またまた~ホラ吹いちゃって」

「グラトニーの方が怖いね~」

「冗談じゃないよ〜ホントだって」

「じゃあ数えてみれば?」

「一、二、三」


 仲間の人数を数えるリーダー格。


「四、五、六」


 よどみなく数えていく。


「七、八――あれ?」


 数え終えたら八人しかいなかった。

 仲間たちもそれを聞いて全員が人数を確認する。


「なわけ! 一、二、三、四、五、六、七……え?」


 さらに一人減った。


「どういうこと⁉」

「グラトニーがいるの⁉」

「嫌だ! 消えたくない!」


 残っている無法者たちが悲鳴を上げる。

 仲間が減っている。死体になったわけではない。存在そのものが消えているのだ。怪奇現象に見舞われて恐怖する。

 もしかしたら自分たちも、とそんな最悪な想像が頭の中に思い浮かぶ。全員が顔を青ざめて震える。


「ええい! 焦るな! 取り分が増えたと思えばいいじゃない!」

「そこでその発想が出るの、あなた終わっているわね」

「賢いといえ! 賢いと――」

 

 ――ガッ!


「グペッ⁉」


 突然、右頬に鈍い痛みと衝撃が走った。

 そのまま地面をズサーと滑るように倒れる。衝撃が走った右頬に触れると、ヘルメットがへこんでいた。


「ヒィン⁉ だ、誰だ! いきなり殴ってきやがって!」

「リーダ!?」


 吹き飛ばされて困惑している仲間に近寄って怪我の状態を確認しようとする。


 ――その仲間が音も無く姿を消した。


 一人だけでない。


「えっ、どこに――」


 また一人消える。


「リーダー! 大丈夫――」


 また一人消える。


「み、皆――」


 また一人消えて、次々と仲間がこの場からいなくなり、残ったのはリーダー格ただ一人だった。


「キャアアアァァ!?」


 あり得ない

 この場にいるのは自分一人。

 仲間はもうどこにもいない。

 狂乱して、その震えた体を鎮めようと銃を乱射する。この不可思議で不気味な現象が消えてなくなれと心が叫びながら。


「危ない」


 すると何もない空間から突然、人間が姿を現す。

 リオだ。

 白い髪をなびかせて、自身に飛んできた弾丸に対して、


 ――シュシュシュッ!


 腕を素早く動かして指と指の間で挟み止める。無法者のアサルトライフルが止まるまで腕が何本もあると錯覚するほどの速度で動かし続けて止め続ける。

 やがて、アサルトライフルから弾の代わりにカチッっと弾切れの音が出された。


「なぜ日本にそんな旧型の量産型アサルトライフルがあるのかわからないが、いきなり発砲するな。当たったらどうする」

「お、お前! どうやって!」

「鍛えられたウカミタマならそれぐらい見える。それに、このボディスーツは防弾チョッキより頑丈よ。グラトニー相手には心もとないけど」


 グラトニーは実弾のアサルトライフルさえもちっぽけに見えてしまうほどの攻撃を仕掛けてくる。それに厳しい訓練で鍛え上げられたリオの肉体ならアサルトライフルでさえも掴んで止めれる。

 さらにこのボディスーツ。二十一世紀末の技術がふんだんに使われた特殊ボディスーツ。九十九パーセント衝撃を吸収してくれて、熱、電気、砂塵などと言ったものも遮断してくれる優れもの。

 グラトニーにはその機能はあまり発揮されないが、それでも動きやすくて身も守りやすいため全隊員が着用している。指揮官も。

 量産が難しいが、地球奪還軍の隊員全員の分を作れるぐらいの余裕はある。


「そっちじゃない! 仲間はどこにやった⁉」


 だが聞きたいのはそっちではなかった。

 仲間をどうやって消したかについてだ。

 無法者のリーダー格はおびえながらも確信する。

 先ほど起きた怪奇現象を引き起こしたのは間違いなくこのリオだと。

 だがどうやって引き起こしたのか。自分の知らない科学道具でも身に着けているのか。


「リオ、こっちは終わったわ」


 そんな疑念が脳裏の中を渦巻いている中、リオと一緒についてきたマリが姿を現す。

 そして再び無法者の視界に変化が現れる。

 リオ達の後ろには仲間である無法者たちが倒れていた。さらに遠くには自分たちが装備していた武装が置かれてある。銃も、ナイフも、ヘルメットも、全部だ。


 ――盗まれた。


 アイツらに武器を盗まれた。貴重な武器を奪われたことに怒りを抱くが、それ以上に神出鬼没の彼女たちに恐怖が上回っていて、それが体を縛り付ける。


「助かったわ。でも大丈夫? 銃器触れる時呼吸が荒かったような気がするけど」

「……銃は苦手なのよ。でも仕事だし」


 理屈は簡単だ。

 リオが『光射す道(ライトニングカレイド)』で自分とマリの姿を隠して無法者たちに近づいたのだ。

 光学迷彩である。

 無法者は騒がしく走っていたため近づくのは楽であった。そこから一人づつ静かに首を絞めて気を失わせる。首を絞めている間は光を屈折させてリオと首を絞めている相手の姿は見えない。一瞬で首を絞めて悲鳴を上げさせる暇なく気絶させていく。そしてマリは気絶した無法者の体を調べて武器を取り上げていく。

 これで無力化していったのだ。

 自分たちより人数が上でも、焦ることなく的確に無力化していく。

 下手に真正面から戦って万が一負傷する可能性があると考えると、こういったキセキを使った不意打ちをかけるほうが安全なのである。

 暴れ回っている無法者相手だからこそ無法な手段で倒すべきである。


「さて、残りはコイツね」

「諦めろ。抵抗しなければ痛い目には合わない」


 残ったリーダー格を仕留めようとリオとマリが近づいていく。

 たった一人になった無法者は恐怖のまま後退るが、それでも二人から逃げられることなんてできない。


「ひ、ひどい……こ、ここまでボコボコにしてくるなんて! 鬼よ! この悪魔! 地上で生きるために頑張っている私たちに……」

「他人を襲うことが頑張るという行為なのか?」

「どうせ翡翠の力を持っていない奴らなんてすぐ死ぬわ。だから、選ばれた私たちが物資をゴミにならないように使ってあげているの! そのほうが死んだ奴らも喜ぶでしょうね!」


 ――ボゴッ‼


 マリの拳が無法者のリーダーの頬に再び抉りこんだ。ヘルメットを軽々と壊しながら。

 無法者の自分勝手な開き直りに拳に力がこもった一撃。怒りのストレートだ。


「ウゲッ⁉」


 そして地面をスーパーポールのように跳ねながら転がっていく。しばらくすると止まり、白目をむいて傷だらけ。ノックアウトだ。


「罪を犯した人間の言葉って支離滅裂ね」

「いえ、違うわ。ただ自分に都合のいい言葉を並べているのよ」


 気分が悪くなる相手だ。グラトニーを相手にしている気がしてくる。


「全員気絶させたが、どうするの?」

「トラノスケ達が心配だが……かといってコイツらから目を離すのもな」


 再起不能にさせたが、これからが大変だ。

 この無法者たちが目を覚まして逃げてしまわないように見張るしかない。だがトラノスケたちの方もグラトニーとの戦いがどうなっているのか気になる。

 二人は不安に悩まされながらな次の行動について考える。


「あっ、もう終わってたんだ」


「「――⁉」


 声がして振り向く。

 意識を取り戻したのか、思って警戒しながら武器を構えようとしたが、


「あら、お仲間さんだったのね」


 彼女の着ている服装、地球奪還軍の戦闘用ボディスーツと肩の第02小隊のマークを見て警戒を解く。 


「僕も全力でここに来たけど、やっぱ仕事速いね。君たち」

「やはり、あなたでしたか。第02小隊の隊長は」


 リオが見知った風に話しかける。

 基本人見知りのリオが平常心のまま話しかけれる相手、すなわち親しい関係のある者である。

 黒髪のショートに黒ぶちメガネから黒い眼がのぞかせる。ボディスーツの上に厚い生地の黒いコートを着こなして、


「そんな固い態度取らなくても。僕と君はそんな仲だったかい? 一応同期じゃないか、リオン君」

「ええ、まあ……」


 緊張感もなく、のほほんとした態度でリオに話しかける。

 決して名前を間違えているわけではない。彼女は仲が親しい人に対しては愛称で呼ぶのだ。

 リオからしてみれば久しぶりに顔を見て話す相手であった。少し緊張する。


「でも嬉しいよ。話してくれて。ほら、ちょっと前だとすぐ僕から距離取ったじゃんね」

「……それは」


 まだグラトニーに復讐の念を強く抱いていたころ、その時リオは彼女からアキラと同じように距離を取っていた。

 彼女の実力を知っていたから。アキラに匹敵する実力者の持ち主で、そんな強者とともにいると自分の弱さを突きつけられるような気がして、あまり関わりたくなかった。

 だが今は違う。

 自分の弱さを受け入れ、より強くなるために他者との関わりを断つことを止めた。

 だからこそ、あの時冷たい態度を取っていたことに罪悪感を抱いていた。

 だが第02小隊の隊長は気にしていない様子で、


「いいのよ。僕さ、君にゲーム機をせがまれたとき、嬉しかったんだよ。ゲー友が増えたってこともあるけど。ほら、友達が元気になってくれた。それってとても嬉しいことなんだよ。君、いい指揮官に出会えたみたいだね」

「ええ、姉さんのような、とっても頼りになる指揮官よ」

「わお、ひょっとしてお熱い関係? 恋人とか? はたまた色々省略して夫婦になっちゃったり?」

「ぶっ⁉」


 突然ぶっこまれた。リオは思わず息を強く吐き出して顔を真っ赤にする。


「そ、そんな関係では!」

「そうなのよ。リオったら休暇中、指揮官君と部屋で二人っきりになって……」

「そんなエロゲ展開まで⁉」

「マリ!」


 マリまで悪乗りしてくる。


「そ、それは! 一緒にゲームをして一方的にハメられたから文句を言って――」

「はめられた⁉」

「一方的に⁉ 大胆な指揮官君!」

「まったく……ぼったくり永久コンボはわからない方が悪いのに……本気になって判定の強い技ばかり押し付けてきて……負けた私が悪いけど」

(あっ、これ格ゲーの話だ)

(両方共容赦ないわね)


 結構情けないプレイングを互いにしていることが、仲が良いのだなというのはわかる。


「……第一、私には釣り合わないでしょ」


 誰にも聞こえないぐらいかすかに呟いた。

 その言葉を聞いたのか聞こえなかったのか、それはわからないが、マリは第02小隊の隊長と向き合う。


「で、ひさしぶりね、第02小隊隊長、萩アスカ。無事に元気そうで何より」


 声をかけ返された萩飛鳥。

 彼女が地中奪還軍、第02小隊隊長である。

 グラトニー殲滅において多大な成果を残している第02小隊。

 その中で隊長を務めているということは小隊の中でトップの実力者の証明である。先ほどまで和気あいあいと話していた雰囲気から一転、仕事人のように静かな冷たい態度へと変わる。


「君もね。マリンさん。君たちの手助けにホバータンクを全速力で飛ばしてもらってきたよ」

「だけど、こっちはもう終わったわ。あとはこの無法者たちをどうするかだけど」

「なら隊長としての仕事をしないとね」 

「そっちのホバータンクに入れておくのか?」

「いや、まさか! 暴れられたりでもしたら対処困るよ」


 目を覚ましてホバータンクの中で万が一でも逆襲されたら大変だ。

 もっともアスカからしてみれば、あの程度の無法者なんて歯向かってきてもすぐに倒せるのだが、操縦者に被害が出るのは嫌だ。

 じゃあどうすればいいか。それ考えているのがリオとマリ、二人であったが、

 

「隊長なら僕のキセキ、知っているはずだよね」

 

 萩アスカの横の何もない空間が一瞬歪む。するとそこからアタッシュケースが現れた。

 純白の生地に様々な模様の缶バッチがいたるところに隙間なくつけられている。そして一つだけアニメのキャラクターが精密にかかれた物がある。他のと比べてピカピカだ。

 このアタッシュケースこそがアスカのキセキの一片。

 開くとまぶしい光を放っているが、中身は何もない。

 一見すればアレンジを加えられたアタッシュケースではあるが……。


「さあ、無法者はどんどんしまっちゃおうねえ。二人も手伝ってよ」

「隊長! 急いで皆さんと合流しましょう!」

「んや? なにかあったのかな」


 無法者を連れて行こうとしたら、アスカが乗ってきた装甲車型ホバータンクの操縦者から通信がつながる。緊迫じみた声で焦っているが伝わってくる。


「なに?」

「モモカ副隊長が第00小隊の平泉隊員とにらみ合ってます! 一触即発です!」

「…………」


 手で顔を覆って、天を見上げる。

 その様子を見てリオは困惑し、


「アスカ、何があったの?」

「君たちと僕たちの小隊でレスバが起きてる。モモ君とイチカがね」

「「「…………」


 操縦者が焦る理由がわかった。

 三人は互いにしばらく見つめあって、そして溜息を吐いた。

「ほ〜ら! アンチェインお得意のナイフさばきだ! 中攻撃をぶつけるぞ!」

「なんで格闘技のゲームでナイフ使う奴がいるのよ!」

「アウトローだからな! ほら! ナイフ突き出しガードさせてプラス4フレーム! 最強だ! 画面端だと無敵だ!」

「こんなの勝てる試合じゃないわ! トラノスケ、卑劣よ!」

「無法な攻撃をしてきたのはそっちだろ?」

「それはお前が対処を知らないのが悪いのよ!」


 ――休暇中、第00小隊の指揮官と隊長の壮絶な会話である。

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