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ウカミタマ ~地球奪還軍第00小隊~  作者: ろくよん
イチカ・アンチノミー
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二つの脅威

 その後も集団のグラトニーを発見すれば戦って討伐していく。

 そうして地上エレベーター周辺のグラトニーの数を減らしていき、エレベーターの安全を守っていく。グラトニーの脅威が減れば防衛基地もより早く、より堅固に作られるだろう。

 ホバータンクを動かしながら、ドローンの反応を確認してはグラトニーがいるかどうかを確認する。


「久しぶりの実戦と考えれば、いい動きしているぜ、俺たち」

「ですね! 指揮官さまも皆さまもバンバングラトニーを倒しています!」

「し、指揮官さん。そろそろ基地に戻ってもいいかと……結構の数のグラトニーを討伐しましたし」

「そうだな。今日はもう基地に帰還するか。任務は達成できたし」

「私も賛成する。地上の活動は余裕を持って行動をしたほうがいい。その方が生存率を上げれる」


 イチカが基地に帰還することを提案して指揮官のトラノスケが頷く。他の隊員も否定せずにその提案を受け入れる。

 いくら地上エレベーター周辺だからといって、地上はグラトニーたちが蔓延る危険地帯。いつ大型のグラトニーや大群のグラトニーに出会ってしまってもおかしくはない。

 死が近くにある場所での活動は必要以上に冒険するべきではない。危険を冒すべきではない。

 冒険するなんて戦うときと任務を遂行する時だけで十分だ。


「じゃあ、戻るか」

「待て、トラノスケ。レーダーを見てくれ」


 基地に帰還しようとしたら、リオに止められる。


「なに?」


 レーダーに異常を発見したらしい。

 トラノスケはすぐに確認する。


「またドローンに反応あり。ちょっと待ってろ、調べてみる」

「グラトニーがいるの?」

「いや、別の反応だ。人間の反応だ」


 珍しい反応であった。

 索敵レーダーはグラトニーだけでなく、味方の地球奪還軍の隊員も索敵できる。人間も発見することができるのだ。

 だが、トラノスケは不思議に思った。

 通信を送ろうとしたが、返答が来ないどころか送れない。

 すなわち地球奪還軍の関係者ではないのだ、レーダーに映っている反応者は。


「ひょっとして、この辺に小型の地下シェルターが?」

「いや、レーダーだと高低差ほぼゼロ。地上にいるぜ」


 だからこそ、疑問に思う。

 レーダーで反応した人物は誰なのか。

 その姿を索敵ドローンで確認しようとして、


 ――ガキンッ!


 金属がぶつかり合った音がホバータンク内に響いた。


「な、何の音⁉」

「撃たれたのか⁉」


 慌てながらも、誰が打ってきたのかすぐさま索敵ドローンで調べる。

 グラトニーの反応はレーダーに無かった。だからグラトニーが奇襲してきたとは考えにくい。

 だとしたら誰が打ってきたのか。


「レーダーに反応があった人間か?」


 それしかないだろう。

 襲撃してきた犯人の姿を索敵ドローンがとらえた。


『皆! 獲物だ! 久しぶりの人間だ!』

『いい車乗っているな! こりゃいいもんたっぷり持ってるわ!』

『ヒャッハー! さっさと襲って殺して奪おうぜ!』


 なにかやたらと過激な格好としている人たちがこちらに向かって重火器をぶっ放している。

 全員真っ赤なヘルメットを装着して、ボロボロの服を来ている。

 そして全員、ライフルやサブマシンガンなどの実弾を発射する銃火器を装備していた。

 そんな危ない真っ赤なヘルメット団が第00小隊のホバータンク目掛けて発砲している。顔は見れないが、声色的に楽しんで銃をぶっ放している。


「…………なんだ、目に悪いヘルメットつけやがって」

「どれどれ……あー、なるほど。あれは無法者ね」

「珍しい、まだいたとは」

「無法者?」


 ろくでもない存在なのは名称で察したが、それでも聞かざるを得なかった。

 彼女たちがどんな存在なのか聞いてみると、


「地下の生活で罪を犯した奴や地上でグラトニーから隠れながら生活をおくったものたちが集まった集団よ」

「昔は結構いた。だがグラトニーたちに襲われて姿を消したり、私たち地球奪還軍が無力化させて牢屋にぶち込んだりもした。だからまだいたことに少し驚いた」

「でも、どうやって生き延びて」


 マリとリオは詳しく話していく。


「おそらく、彼女たち全員ウカミタマになったよ。珍しいことに地上にもウカリウム鉱石が出現することがあるの。彼女たち、運良く逃げた場所にウカリウムがあったのでしょうね」

「そして力を得て増長して、他の地下シェルターを襲って食料やら武器を強奪している」

「おいおい……人間が人間を襲うっていうのかよ。そんなことやっている場合か?」

「力がある自分は何してもいい。そう思っているのでしょう。ムカつくが」


 マリが銃口を向けてきている無法者に吐き捨てるようにそういい切った。


「こんな世の中です。悪いことしても裁かれかない、そんなことを思いながら他人を傷つけているのかもしれません」

「これじゃあグラトニーと変わらねえな」


 根っこから悪に染まってしまった集団。

 それが無法者。

 他人の食糧どこか命さえも罪悪感なく奪っていくその姿は、自分たちの星を侵略してきたグラトニーとそう変わらない。

 そんな奴らにトラノスケは怒りを抱いた。

 人間同士で争っている場合なのか、と。

 平気で同じ人間相手に暴力をぶつけてきやがって、と。


「ど、どうしましょうか……」

「地上を彷徨う無法者を捕らえるのも地球奪還軍の仕事よ。放っておくと他の小隊にも被害がいくかもしれないから」

「そうか」


 マリの言葉にトラノスケは頷いた。

 ああいった暴れん坊を無力化して捕獲するのも地球奪還軍の仕事である。放置していたら他に被害者が出るかもしれない。さらには地球奪還軍が仕事の最中に乱入でもしてきたら、乱戦になって混乱を招いてしまう。

 だからこそ、事故の元となる無法者は捕まえて連行するに限る。

 どうやって無法者を捕まえるか、策を考えていると、再びホバータンク内に大きな音が。


「ひゃあ⁉」

「また撃ってきたわ」

『ほらほら! 早く出てきなよ! 食料と金目のモノ持ってきてさ! 命だけは助けてやらないことはないよ!』

『いい男がいるなら遊んであげるわ! 殺すなんてことしないから!』

『壊すぜ壊すぜ! ヒャッハー!』

「思考だけグラトニーに侵食されてんのか、アイツら……!」


 弾切れ気にせず撃ってくる無法者たちに段々と腹が立ってくる。

 兵器を簡単にぶっ放すその精神は暴力をすることに快感を感じる邪悪なる犯罪者そのものだ。

 何としてでも、奴らを止めなければならない。

 そう思っていると、トラノスケはドローンのカメラに映った映像を見て、


「なあ、ドローンで確認してみたんだがよ。ひょっとして、奴らの武器じゃあホバータンクにダメージ与えることできないんじゃあないか?」

「指揮官君、冷静ね。まあ、その通りだけど」

「このホバータンクって装甲車ですけど、普通の戦車より頑丈ですからね」

「実弾なら無傷だろうな」


 ホバータンクは二十一世紀末の技術で作られた、グラトニーが侵略する前までは戦場の最前線で活躍していた機体だ。

 実弾をもろともせず、ビーム兵器も一定の威力は防げた代物。

 だから普通の銃火器では傷一つ付けることも難しい。

 そのため、ホバータンクの中にいるトラノスケたちも冷静である。


「「「「「「…………」」」」」」


 第00小隊、全員黙る。

 ここにいれば安全。

 だとすれば、


「弾切れになるまで待つか」

「そうね。それが一番安全よ」

「無駄に戦って弾丸を打ち込まれるのは勘弁ですからね……」

「緊迫した空気が一瞬でなくなりましたね~」


 あれだけ考えなしに銃を撃ちまくっているのだ。

 すぐに弾切れになるだろう。

 ならホバータンクの中でじっくり待ちつつ、上空から見つからないように索敵ドローンで無法者たちの行動を見逃さないように確認し続ければいい。

 そうすれば安全に対処することができるだろう。


 ――ビィー! ビィー!


 ホバータンクで待機しておこうとしたら、異常事態の警報が鳴る。


「今度は何だ⁉」


 次々とやってくるアクシデントに荒げた声を上げる。


「レーダーに無数の反応! 全てグラトニーだ!」

「なに⁉」


 カメラで映された映像を確認してみると、大群のグラトニーが第00小隊の乗っているホバータンクへと迷いなく向かってきている。


「ハイスピードでこちらにくるぞ!」

「でもなぜ? どうやってここに……」

「ひょっとして、あの無法者が暴れて銃を撃ちまくるから、その音を聞きつけてやってきたのかも」

「…………作戦会議だ!」


 どうやら、かなり厄介なことに巻き込まれそうだ、と第00小隊の全員は思った。


「どうしますか! 指揮官さま! 無法者は見捨ててグラトニーを討伐するべきでしょうか!」

「それは不味い。いくら悪事を働く無法者といってもグラトニーに殺されるのは駄目だ。人の罪は人に裁かれるべきだ」

「見逃しても後味悪い。ならば両方同時に戦うべきか……」

「この人数で戦力分けるのですか? そ、それはまずいんじゃあ……」

「私は別にいいけど。ソッチのほうが激しく燃え上がりそうだし」

「数が数ですからね、別れるのはグラトニーと戦う人に大きく負担がかかってしまいますよ。怪我も増えたら……いけません」


 普通に考えれば、無法者は放っておいてグラトニーに専念するべきである。

 しかし、奴らを放っておいてグラトニーに襲われるところを見逃すのは精神的に来るものがあるし、逃げられたら逃げられたで、また襲われたら大変だ。

 二つの驚異の前にトラノスケたちが頭を悩ませる。


『第00小隊か? 返答を頼む』


 突然通信が入った。

 誰からか確認するために通信をつなげる。


「はい! こちら第00小隊指揮官! 松下トラノスケです! そちらは?」

『こちら、第02小隊指揮官、小笠原カズキ! まさか偶然、あの第00小隊と出会うとは』

「第02小隊!」


 地球奪還軍の仲間がやってきた。


「地球奪還軍の中でも屈指の戦闘集団の第02小隊か」

「知っているのか、リオ!」

「地球奪還軍の中で一番成果を出している小隊といえば、第01小隊か第02小隊と言われている。そして集団としての戦闘力なら第02小隊が上だ。これまで多くのグラトニーや侵食樹の破壊をこなしてきた。戦力においてこれほどまで頼りになる小隊はいない」


 そこまで評価させるほどの実力派の小隊なのか。

 ならば、このグラトニーの集団も対処できるであろう。精神に余裕が生まれる。

 しかし、なぜこの場に第02小隊がやってきたのか。


(ひょっとしたら、地上エレベーター付近にいたのか?)


 それだったら納得できる。

 銃の音を聞いたり、グラトニーを索敵してきてくれたのかもしれない。


「救援に?」

『いや、さっき言った通り、偶然だ。基地に帰還中にグラトニーとお前たちを見つけてな。共同戦線と行こう』


 どうやら、任務を終えて基地に戻っている最中に、グラトニーの群れと第00小隊のホバータンクを見つけた、と言うこと。


(これは第00小隊としての本来の役目を果たす時か)


 第00小隊は他の小隊と連携して戦力を強化するのが目的の小隊。

 戦力が来てくれた。

 これならば第02小隊と協力して無法者とグラトニーを同時に相手できる。


「わかりました! だがこちらにも無法者を捕らえなければなりません!」

『まだ地上にいたのか。わかった。隊長をそちらに行かせよう』

「隊長を?」


 小隊の隊長、すなわち一番の実力者が無法物を捕まえにいく。

 しかし、屈指の実力者なら無法者より脅威であるグラトニーと戦うべきなのではないか。その方が安定してグラトニーとの戦いに臨めるはず。


『隊長さんは、犯人を捕まえるならうってつけなのさ。ではこちらも戦闘準備に入る。少し待ってくれ』

「ちょ、ちょっと!」


 第02小隊、指揮官の小笠原カズキがトラノスケの返答を聞かずに通信を切る。

 どうやら第02小隊の隊長は人間を相手にすることが得意なタイプだと思われる。相手の指揮官がそう判断して送ってきたのだ。ならばその判断を信じよう。


「第02小隊の隊長……か」

「知っているのか、リオ?」

「ああ、何せ地球奪還軍が設立された頃に入隊して、今まで生き残ってきた屈指の実力者だ。アキラさんの戦友だから顔も何度か合わせたことある」

「そうなのか」


 リオもお墨付きの人物。しかもあのアキラと共にグラトニーを戦い抜いた人物。

 それほどまでの実力者だというのか。


「だから、心配する必要はない。彼女は強い」

「ならば、その隊長と共に無法者を捕まる部隊とグラトニーと戦う部隊に分かれよう。第02小隊が来てくれたんだ。いけるぜ」

「ならば、無法者は私に任せてくれ」


 二つの敵と戦うため、戦力を分けようとする。するとリオは無法者を相手にすると一番に名乗り上げた。


「一応聞くが、大丈夫か? 相手は武器持っているぜ」

「人間相手なら、この中で私が一番得意だ。それに、スターヴハンガの相手をするよりかは楽だろう」

「確かに。わかった。念の為、マリさんも一緒に」

「グラトニーと戦えないのね。まあ、指揮官君の指示に従うわ」


 無法者を相手にすることに不満そうにするも、指揮には従うマリ。

 この二人で無法者を無力化させる。


「そして残りのイチカ、ツムグ、エリナさんは第02小隊のメンバーと共に大群のグラトニーを殲滅しに行く!」

「や、やっぱり大変な目に……いや、仲間が多いなら問題ないはず……」

「イチカさん! 指揮官さまの指示に嫌な顔をしないでください! あっ、指揮官さま! やってみせますよ!」

「怪我人も多くなりそうですね……そうさせないためにママ、頑張りますよ! 作戦が終わったらみんなにいい子いい子しますからね~」

「だってさ、リオ」

「い、いらない」


 作戦は決まった。

 なんか最後閉まらなかったが、とにかくみんなのやる気は十分だ。

 問題はない。


「第02小隊と共にグラトニーと無法者を無力化する! 皆、作戦開始だ!」

「「ええ!」」

「「「はい!」」」


 休養明けの任務はまだ続く。

 激闘がやってくるのなら、それを勝ちきるだけだ。

 ストックがなくなり、仕事も忙しくなってきます。

 不定期な更新が続きます。できれば一週間に最低一話は投稿したいです。

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