表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウカミタマ ~地球奪還軍第00小隊~  作者: ろくよん
リオ・アヴェンジャー
25/102

洞窟の侵食樹破壊作戦 ②

 洞窟内での侵食樹を破壊するための戦闘を行っている最中に隊員たちが負傷してしまう。

 そのためすぐさま治療行為を行わなければならない。


「指揮官君! 今は姫路と富岡を治してあげて! 早くしないと私、自分を抑えらないわ!」

「で、できるだけ抑えてください!」

「わ、私はどうすれば⁉」

「平泉さんは近づいてきているグラトニーを倒してください!」

「ひ、一人で⁉」

「今、攻撃できるのあなたしかいないからね。治療が終わるまでの我慢よ」

「うぅ……わかりました! します! 指揮官さんの命令なら――あれ、弾でない……っ⁉」

「リロードしなさい」


 ビーム弾が出なくなって焦っているイチカに冷静な指摘。

 そんなやり取りをしている中、トラノスケは動かないハイドラグンに脳波を送る。そしてハイドラグンからビット兵器が噴出。それを自分の近くまで飛ばして、


「姫路さん、助けますね! ハイドラグンにはもう一つ、回復用のビット兵器がある!」


 エリナの体の周辺にヒールビットを展開。ビットから淡い翡翠の光がこの場を照らす。この光はウカリウムを使って作られたヒールライト。この光を浴びたウカミタマは自身の自然治癒力を高めることができる。

 さらにトラノスケは携帯していた回復薬(グミタイプ。携帯しやすいようにウカリウム治療薬をゼラチンで固めたもの)を食べさせた。

 二つの治療行為でエリナの体の傷が見る見るうちに治っていく。

 そして回復したエリナは目を開けて、


「姫路さん! 大丈夫ですか!」



「――キャアァァッ⁉ 男の人、嫌あッ⁉」



「…………」


 大きなケガがあらかた治った瞬間、トラノスケの顔を見て怯えて後ろに下がっていく。

 その反応にトラノスケは呆気にとられるが、


(ああ、姫路さんは男性が苦手だったな)


 苦手なのは覚えていたがここまで驚かれるとは思ってもみなかった。苦手どころか男性恐怖症に片足突っ込んでいないだろうか。

 だがエリナも指揮官であるトラノスケの顔を見て罪悪感を感じたのか、申し訳なさそうな表情へと変化していく。

 自分を治療してもらっているのに怯えるのは失礼だとエリナは思ったのだ。


「……ご、ごめんなさい……助けてもらったのに、こんな反応して……」

「いいですよ。ビビってしまうのは仕方ない。しばらくは身を守るためにこのシールドドームの中にいることになりますが……耐えられますか?」

「だ、大丈夫です……指揮官さんが必死になって私を助けてくれているのに、それを拒否するのは指揮官さんに失礼ですから」


 そう言って、なんかと落ち着こうと深呼吸を続けるエリナ。

 そして心を落ち着けて、


「あ、ありがとうございます……もう動けます。ちょっとふらふらしますけどね」

「姫路が動けるならもう大丈夫ね! もう我慢の限界! ほら、こっちよ! さっさと殺し合い! しましょうよ!」


 味方の怪我が治ってきたのを確認して敵の群れに突撃していくマリ。手に持ったビームソードでグラトニーたちを真っ二つにしていく。怪我をしているとは思えないほどに暴れまわっていった。


「ああ! ヴァイセンさんも⁉」

「富岡さん! すぐに治しますからね!」

(……念のためヴァイセンさんにはヒールドローンを飛ばしておこう)


 ツムグはエリナの『無傷の祈り』ですぐに完治できる。ゆえにトラノスケはマリの怪我を心配してヒールドローンを飛ばした。

 そしてツムグの様子を確認してみると、もう傷は完璧に治っており、ツムグも目を覚ましてガバッと上半身を起こして、


「おお! 復活です! 姫路さん、指揮官さま! ありがとうございます! すぐにでもあのグラトニーどもを殲滅してみせましょう!」


 元気満タン。

 回復したツムグが立ち上がりすぐさま武器を構えたのであった。


「富岡さん、待ってください」


 再び戦いの場に踏み込もうとするツムグをエリナが止めに入って、


「キセキを使うべきではないでしょうか」

「え?」


 一旦思考が止まって、


「ええ⁉ 『キセキ』を持っているのか⁉」

「はい! 持っています!」


 自信満々に答えてきて、トラノスケは戸惑う。

 立派な武器を持っているのに、なぜそれを使ってこなかったのだろうと、そんな疑問が頭の中によぎったからだ。

 グラトニーの数と力は驚異であるため、キセキを使ったほうが勝てる確率もあがるというのに。


「……なぜ今まで使ってこなかったのですか?」

「お、怒っていますか?」

「いや、使ってないのは何かしてはいけない理由があったのかと」

「まだ指揮官さまから『キセキ』を使えと命令されていませんので!」

「…………そうか」


 どうやら、ツムグにとってキセキは指揮官の指示がなければ使おうという選択肢が沸いてこないらしい。

 それはともかく、ならば彼女に思う存分暴れてもらおうではないか。


「……この状況を『キセキ』を使って打破してくれ、富岡!」

「はい! 指揮官さまの命のままに!」

「あとついでにこれからの戦闘は積極的にキセキ使っていけ!」

「はい!」


 ツムグは指揮官の指示に頷き、武器をしまって目を閉じた。

 

「グラトニーの打破! それが指揮官さまの命令! 『断ち切れぬ糸(ザ・ボンド)』!」


 ツムグの瞳が翡翠に染まる。

 そして手を叩いて大きく左右に開くと赤い糸が現れて、それを動かして五本ほど並べて、それをグラトニーがいる周囲に飛ばした。

『ガガッ‼』

 その糸を見て逆に斬ってやろうとした人型のグラトニーが腕を振り下ろす。


 ――振り下ろされた腕が斬れてそのまま地面へと投げ捨てられた。


 さらに糸は止まることなくグラトニーたちの胴体を溶けたバターのようにさらっと通っていく。そしてそのまま胴体は五つの線が入ってそのままバラバラとなって地面に倒れたのであった。


『ギガガ⁉』

「こ、これは⁉ 富岡さん!」

「『断ち切れぬ糸』は壊れることなき糸! なぜなら触れたらどんなもので斬ってしまうからです! 切れ味が高いので味方を巻き込むこともあります! あとからみやすいです!」

「なぜマイナスなところしかしゃべらない⁉」


 キセキの弱点ばかり口に出してきてツッコむトラノスケ。

 本来ならもっと自身の能力のアピールをするべきではないだろうか。

 だがその血に染まったかのように紅い糸の切れ味は凄まじいもの。糸に触れられるだけでグラトニーがバラバラになったのだ。確かにあの糸の近くにいるのは危険である。


「指揮官さん! ピストルでグラトニーたちの頭部を狙ってください! 確実に仕留めましょう!」

「わかりました!」


 トラノスケとエリナが腰にぶら下げていたビームピストルで斬り刻まれたグラトニーたちにとどめを刺す。

 あれだけバラバラになったのだ、当然身動きは取れない。訓練したばかりのトラノスケでも当てられる。そうしてグラトニーの数を減らしていく。


「おお! 状況打破! 大きなヤツを糸で斬ります!」


 本命のオオヨロイノムカデ分裂体に紅き糸を振り下ろす。鋭い刃の糸がオオヨロイノムカデの体を両断しようとギロチンのように降りてきた。

 だがその糸は堅固な外皮に阻まれて食い込むだけ。体そのものを斬ることはできなかった。


「斬れません! なんて硬い!」

「だけど、今はそれがベスト! 動きが止まった!」

「ナイスです!」


 斬ることはできなかったが相手の動きを止めることができた。『断ち切れぬ糸』自体、大物のグラトニーの動きを止めるほどのパワーを持っているのだ。


「……指揮官、サポートをし終えたか」


 二体のオオヨロイノムカデをひきつけていたリオ。味方が片方を止めたことを確認して、本体のオオヨロイノムカデにビーム弾をぶち込む。


「さあ、こっちだ。私はここにいるわよ」

『ギャギャギャ‼』


 本体だけを挑発してそのまま仲間たちから離れていく。分裂体と本体の距離を開かせるためだ。

 そしてツムグが歯を食いしばって分裂体のオオヨロイノムカデを止め続ける。


「むむむ……すごいパワーです!」

「おいおい、なんだよ! あのでけー奴は?」


 突然、荒々しい口調の声が耳に入った。


「――⁉ この声、平泉か⁉」


 振り返ってみるとイチカが獰猛な笑みを浮かべていた。髪と瞳の色も変わっている。

 いつもの怯えている彼女から凶暴な彼女へと変わっていた。


「『嵐気流(タービュランス)』‼」


 そして彼女が指を突き出して軽く振り下ろすと、周囲のグラトニーたちが地面にめり込む勢いで風に押さえつけられる。

 さらには分断したオオヨロイムカデもその風に逆らうことができずにその場に立ち止まらされてしまった。


「ほら、雑魚どもをひれ伏せてやったぜ。へっ、この程度の風圧で止まるなんて、やっぱ雑魚だ」

「平泉⁉ 頭大丈夫か⁉」

「オレがバカだって言っているのか⁉」

「自分の頭に触れてみたら指揮官君の言いたいことわかるわよ」

「ヴァイセンさん、いつの間に……」

「平泉、あなた私にも風ぶつけたでしょ。さすがに頭が来たわ、文句言いにきた」


 馬鹿にされたと思ったイチカ。ブチ切れてトラノスケにつかみかかろうとしたら、視界が真っ赤になった。

 手のひらで頭に触れて確認するとべったりと血液がついていた。

 イチカの頭部は出血していたのだ。


「あっ……うわ、血だらけだ。いつの間にこんな怪我を……?」

「気づいていなかったのか⁉」

「指揮官さまの言う通り、平泉さんの頭が危ないです!」

「どっちも?」

「死にてえのか富岡! ヴァイセン!」

「平泉さん! 早く治療しますね⁉」

「そんなことよりこんな怪我させやがったグラトニーどもを……」


 流血のせいか、それとも怒りのせいか、ともかく顔が真っ赤になるほど荒れているイチカ。今すぐにでも攻撃を仕掛けそうだ。

 しかし、しばらくして再び手のひらを見つめて、


「…………いや、さすがに頭部の出血は困るな。殴るのは無しだ」


 さすがに大怪我だと思ったのか、この場で風を操ることに専念することにしたイチカ。


「仕方ねえ、ヴァイセン、富岡! さっさとこの雑魚ども消し飛ばせ! 的当ては得意なんだろ?」

「はい! 訓練所のテストでいつも高得点です!」

「得意じゃないわ。でも――」


 ビームシールドをしまって、ビームソードの出力を上げた。

 守りはもういらない。

 動かない敵相手なら剣だけで十分なのだ。


「的斬りなら大の得意よ! 『疾くあれ、螺旋疾くあれ、螺旋(ブラウ・ブリッツ)』‼」


 眼を翡翠に光らせて体が青く光る。

 そして瞬きすると、ビームソードを持った彼女の姿が消えては現れて、消えては現れるを繰り返す。その度に空間にはビームソードの一閃がその場に残った。その刃の軌道はマリが姿を現すとともに生まれる。

 彼女と刃の一閃が映し出されたとき、グラトニーたちの体は見るも無残に斬り刻まれている。

 その攻撃にグラトニーたちは見るどころか反応することすらできず、ただ体が斬られていく。

 音速を超える速度で移動しながら斬っているのだ。

 青き閃光が刃となって敵を縦横無尽に斬り裂いている。

 音速をも超えたマリを止める者は誰もいない。


「逃げないと、間に合わないわよ! 『残光空裂刃(ざんこうくうれつじん)』!」


 斬り刻まれたグラトニーにとどめの最大出力の巨大ビームソードで薙ぎ払い。

 ビームの刃が大太刀をも超えて巨人が握りしめるようなほど伸びていく。それを横なぎで一閃すれば、グラトニーも閃光のようにこの場から消滅していった。


「ワッハー! これはすごくすごいです! 敵が一瞬にして消えていきます!」


 マリの目にも止まらぬ斬撃に関心しながらグラトニーたちを打ち抜くツムグ。しばらくするとグラトニーの数も激減していく。

 イチカ、マリ、ツムグの三人の連携攻撃に一気に殲滅へと追いやった。


「治りました!」


 そしてイチカの怪我もエリナの『無傷の祈り』で完治する。


「よっしゃ! あのでか物は俺が潰す!」

「平泉さん! 他の二人がすぐに来る! 合流して攻めてください!」

「……はいはい、今回だけは聞いてやるよ」


 トラノスケの指示に面倒くさそうな態度を取りながらもいうことを聞くイチカ。


「指揮官君! 雑魚どもは全部蹴散らしたわ!」


 そしてマリとヴァイセンがやってきて三人で


「オラッ! 落ちろ!」


 イチカがオオヨロイノムカデの腹部に拳を全力で振り上げる。フルパワーで殴られたオオヨロイノムカデは空に浮かんで、もう一撃とイチカが両手を真上で合わせて振り下ろし、ダブルスレッジハンマーだ。


『ギギギギッ⁉』


 地面にたたきつけられたオオヨロイノムカデは腹部をさらけ出してしまう。

 足がじたばた動いて身動きに取れそうにない。

 外皮から灰結晶弾を発射していたので、これでは発射もできない。

 こうなったらもう勝負は決まったようなものである。


「こ、拳だけでひっくり返した……」

「なんだ、亀みたいなヤツだぜ。外皮がなけりゃあこんなにも脆いか!」 

「そうか! ヴァイセンさん! 富岡さん! あのグラトニーの中身は柔い! 攻めるならそこです!」


 すぐさま味方にオオヨロイノムカデの弱点を伝える。


「なるほど、ならあの足を一本一本斬る必要もないってことね」

「わかりました! 指揮官さま!」

「あと平泉! これを受け取れ!」


 トラノスケが腰につけていたビームナイフを投げ渡す。

 それを受け取ったイチカがいじくってビームの刃を出す。それを見たイチカは獰猛な笑みを浮かべてじたばたしているオオヨロイノムカデに目を向けた。


「はっ、いいプレゼントだ。お返しにこのムカデヤローの死体を献上してやるよ!」

「いらないな。討伐したという結果だけでいい」

「そうかい! なら嬉しがって受け取りな!」

『ギャギャギャギャァァァ⁉』


 あとは楽だった。

 身動きが取れないオオヨロイノムカデの弱点である腹部にビームの弾丸と刃をあびせ続ける。

 さっきまで灰結晶弾の弾幕を一方的に受け続けた第00小隊、今度はこちらと言わんばかりに攻撃をし続けた。

 オオヨロイノムカデが断末魔を上げるのも時間の問題であろう。


「あっちも立て直せたか」


 リオがトラノスケたちを見て、


『ガガガガッ‼』

「そろそろ決着をつけよう」


 第00小隊の回復と活躍を確認して、すぐに視線を目の前の獲物に向ける。

 リオがアクロバットに空中移動しながら弾幕をよけ、回避しながらのビーム弾。微々ながらもオオヨロイノムカデにダメージを与え続けていた。


『ガガガガガガガッ‼』


 だがそれにイラついたのか、オオヨロイノムカデが雄叫びを上げた。

 関節から分断する。すなわち胴体部分は関節の分だけ分断できるということ。

 そして今リオが戦っているオオヨロイノムカデの本体の後ろには胴体が四つある。

 頭入れて計五体。それが分断して灰結晶弾を撃ちながらリオに迫ってきた。


「奥の手か⁉」


 一つ一つが意志を持っているかのように移動して、リオを取り囲むように陣形を取る。そこから灰結晶弾をこれでもかとぶち込んできた。


「発狂でもしたか! クッ‼」


 全方向から鋭くとがった灰結晶弾包囲網。

 それをなんかと必死に避け続けるリオ。それでも弾の密度はすさまじい。

 どれだけジェットブーツで素早く移動しても灰結晶弾が彼女の体に傷をつけていく。


「白神さん⁉ まずい! ヒールドローンで」

「安心しろ、『光刺す道(ライトニングカレイド)』!」


 心配になったトラノスケを無視して、リオの目が翡翠に光った。

 そしてそのまま引き金を強く引き、


「舞って散れ! 『ミリオンバレッツ』!」


 リオの周囲にビーム弾が回るように軌道を描き始め、灰結晶弾がその光にぶつかって溶けて消えていく。己の肉を貫こうとする弾丸を消しながらそのビーム弾はオオヨロイノムカデたちの体に当たっていく。

 ビーム弾はオオヨロイノムカデの弱点である外皮のない腹部に命中していく。光を操れるリオならオオヨロイノムカデのビームを防げる外皮を無視できる。

 回転して舞えば舞うほどビームが共に彼女と踊る。そして踊る光はグラトニーの体を抉っていき、分裂した体を消滅させていく。

 そして残った光の全てを本体の頭部に向かわせた。


『ガガッ⁉ ガッ⁉』


 放ったビーム弾が無数の矢の雨となってオオヨロイノムカデの頭部に降り注ぐ。

 あまりに密度と数に外皮が、顎が、牙が、焼けて溶けていく。

 顔も見るも無残に穴が開いていく。


『ガガァッ⁉ ギギギャ‼』


 だがまだ止まらない。

 ダメージを受け続けた本体であるオオヨロイノムカデの頭部が最後の力を振り絞って、回転しながら最後の飛びつきをかましてきた。

 だがリオはそれを見て冷静に、


「本命は、これだ」


 突如、両手に持っていたサブマシンガンを手放した。

 そして背負っているビームスナイパーライフルに持ち替えて、


『――フルチャージ!』


 その機会音声と共に引き金を引いた。

 そしてオオヨロイノムカデに一筋の大きな光の線が貫いた。


『ガ――』


 中心からビームの一撃を喰らったオオヨロイノムカデは絶命の声を上げることなく灰となりそのまま消し飛ばされる。


「もう、いないか」


 巨大グラトニーの消滅を確認したリオ。

 この広間に静寂が満ち始めた。


「ひ、一人で⁉ 倒し切った⁉」

「ちっ、獲物独り占めか。まっ、オレがケガしてなかったら横取りしてたがよ」

「私も戦ってみたかったわ」

「み、皆さん。先ほどまでピンチだったんですよ!」

「指揮官。すぐに索敵しろ」

「わ、わかった!」


 そう言われてすぐさまハイドラグンの索敵レーダーを起動。どうやらレーダー機能は壊れていなかった。ヘルメット内の画面を確認して、


「いない! 反応は侵食樹だけ! グラトニーは完全消滅だ」


 レーダーに一つしか反応なし。

 すなわちこの洞窟内に自分たちを襲うグラトニーは消えたということ。

 それを聞いたリオは侵食樹に近づいていく。


「やはり、私が持っていて正解だったな」


 腰につけていた大口径のマグナムを取り出す。

 ウカリウム濃縮弾薬が入ったマグナムだ。

 銃口を侵食樹の根元にこすりつけて引き金を引く。

 この広場の誰もが思わず耳を塞いでしまうほどの大きな発射音が鳴り響いた。

 そしてリオがマグナムを腰にしまって、その場から離れると、侵食樹の体にヒビが、そして翡翠の光が漏れる。その輝きが大きくなっていくと同時にヒビも大きくなっていく。

 それは侵食樹の断末魔のようであった。

 己の存在が消滅することへの証明。

 そしてその光がより強くなり、侵食樹が灰のようになっていって、


「これでミッションコンプリートだ」


 最後にツインサブマシンガンのチャージショットを朽ちていく侵食樹に叩き込み、この一撃によって侵食樹が消滅した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ