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ウカミタマ ~地球奪還軍第00小隊~  作者: ろくよん
リオ・アヴェンジャー
18/63

話を始めよう ①

「第00小隊の命運を俺にかかっているか。新人にしてはキツイことやらされているぜ」


 総司令官との会話も終えて翌日、第00小隊の宿舎にいた。

 表情はすぐれない。


「俺、まだ新人だぜ? 過去に軍人経験もない、ただドローンを扱うのが上手な元社会人なのによ」


 自分の任された仕事にため息をつく。

 あとひと月、第00小隊に残り、彼女たちのメンタルケアをしながらグラトニー討伐の任務をやれ、まとめるとこういうことだ。

 新人にはあまりにも重い任務だ。ただでさえグラトニーと戦くことに神経を使うのに。

 やはり上官が相手とは言え、無理ですと断ればよかったのか。

 そう思っていたトラノスケであったが、


「……過去になにかあったからって他人に迷惑かけていいわけないが……彼女たちは俺を救ってくれたんだよな」


 まだ物流センターで働いていた時に初めて出会った彼女たちのことを思い浮かべる。

 グラトニーに襲われて、その時にやってきて一方的にグラトニーを屠って自分の命を救ってくれた、あの時の彼女たちの活躍が脳裏によみがえった。

 いろいろと問題起こしているかもしれないが、

「それでも見ず知らずの他人を助ける正義の心を持っている……」


 トラノスケは彼女たちに対してそう思っているのだ。

 だから……。


「悩んでいても仕方ない。もう一回注意しておくか。今度は個人的に。さすがに次も他の小隊に迷惑かけたら俺も我慢できん」


 彼女たちと話し合うことを決めたトラノスケ。

 同じようなことが起きたら、申し訳なさと怒りが心の中で湧き上がってくるだろう。本気で小隊のメンバーに怒鳴ってしまうかもしれない。

 指揮官としてはやっていけないことを注意することは大事な仕事ではあるが、侵略者のグラトニーを相手にして一々隊員に怒るのは面倒事が起きそうで嫌だ。

 そうならないようにあらかじめ注意しておくのが大事であろう。

 他の小隊二混乱を招くのは利敵行為だ。

 そう思ったトラノスケは指揮官室から出て小隊のメンバーに会おうとする。


(…………宿舎に今誰もいないのか)


 調べてみるに、どうやら隊員たちはこの基地内のどこかへ行っている。

 仕方ない。

 隊員たちを探すことにした。


 訓練場に足を運んでみることにしたトラノスケ。

 その場所は自身の身体能力を鍛えるためのトレーニングジム、ビーム重火器での射撃練習所、限りなく実戦に近い仮想練習を行うことができるVRシミュレーションシステムなど、他にも地球奪還軍の科学技術力によって作られてた様々なトレーニングマシンがこの場所に配置されていた。

 そこで地球奪還軍の隊員たちは日々、己の実力を鍛えてグラトニーとの戦闘に備えているのだ。


「フーっ! 今日も絶好調! MVP三連続ゲット! こういう時はロボット物の3D格闘ゲームで大暴れね!」


(あれ、ゲームで遊んでいるのか)


 まあ、中にはVRシミュレーションシステムを使ってフルダイブゲームをしている女性隊員もいるが、それに関してはこの施設を管理している人にちゃんと許可を貰えばできるので問題なしである。

 それはそれとして、トラノスケの目的は第00小隊のメンバーとの話し合いである。

 訓練所にいないかどうか確認していると、


「――シッ!」


 いた。

 半透明のドームの中でリオが訓練をしている。

 全方向からレーザーがリオへと向かってくる。

 それらの攻撃は体や手足をわずかにそらしてかわしていく。

 そして弾幕のように飛んできたレーザーに対しては空中に飛んで、アクロバティックに回避していった。

 このマシンは全方向からの射撃攻撃を避ける『全方向回避訓練ドーム』である。

 ありとあらゆる場所から非殺傷のビームが飛んでくる。それをとにかくよけ続ける。

 これによって前、横、後ろ、さらに上空や地面からの攻撃を回避する能力を鍛える。そのための訓練マシンだ。


「すげー動き……重り持っているのは武器の代わりかな」

  そしてリオがビームを最小限の動きで避ける。無駄のなく迅速な回避。

 しかも両手には五十キロの重りを握りしめている。

 おそらく武器を持った状態で回避訓練をしているのだろう。


「――いや待てよ、ビーム兵器は軽量化が進んで、どの兵器もそんなに重くないぞ⁉」


 ビーム兵器の開発によって科学が発展し、ビーム弾の重火器はそのビームの熱に耐えられるようにするための合金や特殊塗料などが開発され、それと同時に金属の軽量化も進んでいった。

 さらにいえば、実弾兵器でもその合金の研究によって軽量化が進んでいる。アサルトライフルだって子供が持ち上げられるほどに軽々と持ち上げられるぐらいにはなっているのだ。

 重量がある火器は実弾兵器の中でも巨大なロケットランチャーやミニガンと言ったもの程度。

 だがリオが使うのはサブマシンガン。重火器の中でも軽い方。

 しかし、リオはそんなことなんて知らないと言わんばかりに、両手に超重量の重しを握りしめながら訓練に励んでいた。


(マジで化け物……そりゃあんな無茶な訓練をこなせるなら強いわけだ)


 トラノスケも五十キロを片手で持ち上げることならできる。強化人間手術のおかげだ。

 だがその重りを両手に持って、あそこまで激しく飛んでくる光線をアクロバットに避けるのは無理だ。

 驚異的な身体能力だけならウカミタマの身体能力で説明がつくが、重りを持った状態での空中のバランス感覚、全方向に目を向けているかのような察知能力、これらはウカミタマの力関係ない。

 彼女の純粋なる鍛え上げられた能力だ。

 そしてしばらくするとリオがドームから出てきて重りをもとの棚に置いて水分補給を行っていた。

 あれだけ激しく行った訓練、汗はかいているが息はわずかに乱れた程度。まだまだ激しく動ける。体力も化け物じみたものである。


「まだ、レベルを上げれる」

(マジかよ)


 まだ訓練レベルが低いというのか。

 信じられないことを言っているリオに驚きながらも、


「お疲れ、白神さん」


 訓練が終わったところを見越して、リオに声をかけにいく。

 すると声をかけられたリオはいつも通りの無表情な顔でトラノスケを見つめて、


「…………なに?」

「いや、昨日の任務のことで話が――」

「それは後にして」


 拒否された。しかも話の途中で。


「後にしてって、おい」

「まだ、自主訓練の時間が残っている。それが終わった後なら聞くわ」

「ちょ、待てって! 話ぐらい聞いてくれても――」


 話を聞いてほしいと頼み込もうとしたその時、リオの右腕がトラノスケの首に近い胸元に伸ばして、服を握りしめてこちらへと無理矢理トラノスケ引っ張る。


「なっ!?」


 眼前まで顔が近づく。

 いい顔しているな、なんて場違いな考えを思い浮かべるがその瞬間に浮遊感がトラノスケの体に襲い掛かった。


「……邪魔」


 イラつきながらそう言ってトラノスケの両脇下に手を当てて持ち上げる。先ほどの浮遊感は持ち上げられたときに起こったものだ。そして体を90度左に回転させて優しく下ろした。

 ウカミタマの力なら男性ぐらい片手でも楽勝だ。


「訓練の邪魔はしないで」


 そういって他の場所まで歩いていき、さっきとは違うトレーニングを始めた。


「…………なんでわざわざ優しく持ち上げてどかした?」


 中途半端な優しさに怒りよりも困惑のほうが勝った。 

「しかしVRシミュレーションシステムのフルダイブゲームか。グラトニーが来る前はちょっとお高いゲーム機だったな。俺も持っていたけど。それがまたできるとなると嬉しいな」

「おっと、新人指揮官さん興味津々だね! ゲームカタログ見る? あなたのしたいゲームが見つかるかも!」

「ありがとうござい――おい待ってくれ! フルダイブゲームの歴史の中でも名作のゲームばっかじゃないか! しかも、ソフト数も多い……!」

「おっ、あなたゲーマー?」 

「ソロでも、皆でも、ファンタジー農業恋愛ゲームの『ルーン牧場ストーリー』に二対二の3Dシューティングのパワースーツ格闘ゲームの『インフィニティ・ウィングス』、空と海と大地をかける実際のレースを体験、『Gーゼロ・カート』! 

「なら休みの日はここにきてやっていきなよ! 地球奪還軍はゲーマー多いからさ! 一月、ぽっきり五百円だよ、お得お得!」

(やるな……訓練施設! 隊員のやる気上げもばっちりってわけか……ッ!)

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