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ウカミタマ ~地球奪還軍第00小隊~  作者: ろくよん
リオ・アヴェンジャー
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中華乙女と第00小隊と問題

 グラトニーの討伐が終わり、周囲の安全を確認。

 そして遠くで戦っているリオ達と合流しようとホバータンクを走らせていく。


「ハイドラグン……よかった、あんま壊れてなくて」

「あまり気にしないと思うわ。武器は使い捨てよ。壊れる時は壊れるわ」

「初戦で壊したらさすがに申し訳ないですよ」


 ホバータンクのドローン置き場に鎮座しているハイドラグン。傷はついているが、侵食はされておらず、すこし操作に不備は出るが、それでも故障はしていない。すぐに基地に戻って整備してもらえればすぐに扱えることができるだろう。

 安堵しているトラノスケだが、内心では情けなさもあった。

 ドローンの扱いには自信があった。

 だがこのドローンの性能を全く引き出せることなく、操縦も拙い。先ほどの戦いで心を乱してドローンを墜落させてしまった。


(練習もしていたが……やはり実戦ではうまくいかないものだ)


 ハイドラグンをもっとうまく扱うことができれば、もっと隊員たちのサポートを行うことができるのに。

 そんなことを考えつつ、しばらくホバータンクを走らせていると、


「あっ、来たネ!」


 第00小隊のホバータンクを見て手を振る人が。おそらく彼女がこの小隊のリーダーなのだろう。

 セミロングの白髪に赤髪のエクステを左右に着けて、手を振ると同時に揺れている。

 トラノスケはホバータンクを停止させてマリ達共に外に出て彼女に挨拶をかわす。


「協力、感謝デス。ワタシ、第01小隊の副隊長、ワン・リーユェです。京都に留学してたら、日本でグラトニーと戦うことになってたヨ。こう見えて、軍が設立されたときからいる古株ネ」


 万璃月(ワン・リーユェ)が敬礼をして自己紹介を終える。


(名前的に中華の人か)


 通信での話し方で日本の人ではないとは思っていたため驚きはない。

 ニュー・キョートシティには日本人以外の人種の人は多くいる。

 京都で生活を決めた人、京都の学校に留学しに来た人、京都に働きに来た人、理由は様々だ。

 ちなみに海外の人がこの京都にいた一番の理由は旅行。京都が名観光地だからだろう。海外の人が京都の街並みを観光しに来るものも多い。その時にグラトニーが襲来して、観光客の人も地下のニュー・キョートシティまで避難したのである。

 とまあ、だから地球奪還軍に海外生まれの人がいてもそんなに不思議ではないのだ。トラノスケの元の職場でも研究生と働いていた海外の人もいた。むしろ思っている以上に地球奪還軍には海外の人が所属しているかもしれない。他の小隊のことはまだ詳しくないのではっきりと言えることではないが。


「コンゴトモヨロシクヨ」

「こちらこそよろしくお願いします。私は第00小隊の指揮官、松下トラノスケと言います」


 トラノスケもリーユェに挨拶を返した。

 そしていきなり頭を下げて、


「あの……すいません。隊長がいきなり入ってきて……自分の指揮のせいです」


 とりあえず、リオ達が乱入したことを謝った。

 あんなこと、普通に考えたらリオ達にビーム弾が当たって事故が起きてもおかしくない。一番焦ったのは第01小隊の人たちだろう。

 だがリーユェは首を振って、


「いや、アイツが悪いヨ。まったく、いつもあんなんね」

「いつも?」

「ああ、新人君だから知らないよね。すこし昔に色々あって――」

「なんだと! オレに文句あんのか⁉」


 荒々しい声が耳に入った。

 確認してみると、イチカが第01小隊の隊員の胸倉掴んで睨みつけていた。隊員は涙目で他の仲間に助けを求めている。

 いきなり他の部隊に殴り込みをかけている。

 他の隊員たちも驚いて思わず立ち止まって見ていた。

 あまりの喧嘩っ早い行動にトラノスケは頭を抱えながらも、すぐに止めに入った。


「いきなりかよ! おい、平泉! 落ち着け! 仲間相手に拳を向けるな!」

「そうね、隊員同士の喧嘩、御法度ヨ」

「落ち着けるかよ! こいつがこのオレをバカにしてきやがって!」

「だって、銃撃っている最中にグラトニーに突撃してきたから……」

「ああ⁉」

「あちらの隊員の言い分が正しいだろ。俺もひやひやしたぞ、お前らの乱入」


 隊員に殴りかかろうとしているイチカの腕をつかんで止めにかかる。ちなみにイチカの腕をがっちりと両手でつかんで止めている。それでも全力を込めないと止めれないあたり恐ろしいパワー。

 他のウカミタマでもここまで力があるものはいない。

 そして必死に止めている最中のトラノスケにツムグがダッシュで近づいてきて、


「指揮官さま! どうでしたか! 命令通り、隊長さんの後についていきました!」


 目を輝かせながらトラノスケに褒めて褒めてオーラを出している。自分、頑張ったのだからたくさん褒めて、そんな表情を浮かべている。

 まるでかまってほしい小型犬だ。


「……後で注意したいことがあるからな」

「え⁉」


 しょぼんと落ち込むツムグ。

 不思議と罪悪感が生まれるが、きちんと言わないとまたやらかしてしまいそうなので、そうならないために注意しておくことにする。

 指揮官として大事な仕事だ。


「指揮官」


 ツムグと話しているとリオがやってきて、


「索敵」

「お前、空気読めよ」


 索敵の要求。

 もう次の獲物を探している。

 大丈夫だったか、とかの仲間への心配や、グラトニーを討伐したか、などの確認が先ではないのか。トラノスケはとっても心配していた。勝手な行動をしたとはいえ、グラトニーが相手なら生き残ってくれと願っていた。

 ひょっとしたらリオはグラトニー討伐だけ脳にインプットされたサイボーグか何かかもしれない。そう思っても仕方ないほどグラトニーを滅ぼしたがっている。

 リオはトラノスケが抱いた心配とかよりもグラトニーを殲滅する方が大事のようだ。


「大変そうネ、松下指揮官」


 リーユェも思わず同情の言葉。


「ははは……問題ないですよ。彼女たちは強いですから」

「指揮官」

「わかった! するって!」


 睨まれてすぐさま索敵ドローンを空に飛ばして周囲を確認するトラノスケ。

 ここら周辺のグラトニーは自分たちで倒した。

 だからもういないと思って調べていると。


(……ん?)


 レーダー画面に反応あり。

 見ると新たなグラトニーがいる。動きはふらふらとしているため、こちらには気づいていない様子。


(……どうしよ)


 伝えるまたリオたちは勝手に行ってしまう。断言してもいい、絶対にグラトニーを討伐しに行く。今までの行動を見てトラノスケは確信していた。

 だからこそ不安。

 いくら実力があっても、それでも勝手に行動して戦いに行くのは危険だ。

 だがしかし、


(でも俺達の使命はグラトニーの討伐! グラトニーが近くにいるなら戦うのが仕事だ! それに、第01小隊もいる。彼女たちと協力すれば……)


 第01小隊の様子を確認してみると、怪我をしている人はいるものの重傷者はいない。負傷者は仲間の隊員に治療してもらっていて、まだ戦えると闘争心をみなぎらせている。

 彼女たちは戦闘が行えないほどの損害は受けていない。

 ならば第01小隊と組めば、まだ残っているグラトニーにも対応できる。戦力は十分であろう。

 ならばここはグラトニーの居場所を教えても問題ないはず。


「どうだった?」

「いました」


 しつこく聞いてくるリオにグラトニーは存在すると伝えると、


「教えろ」


 即答でそう返してきた。


「直球だな、おい。だか待て、今から第01小隊の副隊長と話し合って作戦を決めるから――」

「早く教えなさい」

「まだ敵いるのか⁉ テメー、サッサと言えよ!」

「指揮官さま! 次の指示を! 次のグラトニーの場所を! 隊長と一緒に倒してきます!」

「ああ、待てって!」


 ぐいぐいとトラノスケに迫ってくる三人。強烈な殺意と闘争心と尊敬のまなざしが同時にトラノスケに襲い掛かってくる。

 早く教えなければ今すぐにでも殴ってきそうな気がするほどの迫力がある。それほどグラトニーと早く戦いたいのだろう。

 だが教えたらまた勝手に行くだろう。

 だから冷静にさせて第01小隊のメンバーと話し合いをしたいのだが、


「早く!」


 そうはいかないらしい。

 リオがイラついてきている。トラノスケの方も正直どうすればいいか頭を悩ませていた。


「ああ、松下指揮官さん、これよ」

「これは?」


 なにかスイッチが突いたリモコンを突然渡された。


「ホバータンクの引き出しにあったものよ。下に小さいボタンあるでしょ、それの一、二、三、押すよ」


 いつ取ってきたんだと、これ何のボタンだ、という二つの疑問を抱くも、そんなこと無視してリーユェが淡々とボタンの説明をし始める。トラノスケはそれに従って操作する。


「……はい」

「そんなことしてないで、さっさと教えなさい」

「そして上の大きなボタンを強く押すよ」

「こうですか?」


 リオの命令を無視して、リーユェの指示に従ってボタンを押した。


 ――ビリビリビリリリッ!


「グッ⁉」

「ギャァァァァァ⁉」

「シビビビッ⁉」


 三人の首輪から警戒音が鳴ると同時に、体が大きく震える。そして地面に倒れ伏した。


「は?」

 

 突然の出来事に困惑の声しか上げられなった。

 リオ達が震えたと思ったら、地面に倒れていた。

 あまりの出来事に目を疑う。


「いつ見ても震えるわ」

「あれ、外傷は残らないから治療も行えないんですよね……」


 マリとエリナがビビった表情で三人組を見下ろしていた。どうやら彼女たちはリオ達三人の身に何が起こったのかを理解しているようだ。

 だが彼女たちの表情を見る限り、ろくなことではないことが察せられる。


「え⁉ なに⁉ すごい悲鳴上げて倒れたけど⁉」

「それ、電流装置ネ」

「はっ?」


 予想外の答えにトラノスケは唖然とする。

 じゃあ今彼女たちには電気が体全体に流れているというのか。


「ボタンをぽちっと押せば首輪から高圧電流流れる。ウカミタマでも気絶してしまうぐらいのハイパワー、気絶するの当然ヨ」

「そんなものを俺に押させたんですか⁉」


 そりゃ彼女たちがあんなふうになるわけだ。

 今も地面に倒れてピクピクと体が震えている。

 あまりの痺れっぷりにトラノスケは罪悪感を抱くが、リーユェは気にするなと言わんばかりにトラノスケの方に手を置いて、


「でも、そうしないと止まらないよ。あの三人組」

「それはそうですが……非人道的と言いますか。というかなんでそんなものをつけているのですか? 第01小隊の人達はつけていないし……」

「……ひょっとして第00小隊のメンバーの経歴知らない?」

「え?」

「そっか、君新人だもんね。そりゃ知らない。軍の皆は知っているけど」

「それ、どういう……」

「人の過去、ペラペラしゃべるのいけないネ。あの首輪、第00小隊には着用が義務づけられてる。その理由、たぶん指揮官室のパソコンのファイルに入っているから自分の目で確かめるネ」


 この任務の前にもツカサにそう言われたことを思い出した。


「なにか嫌な予感しかしないのですが……」

「まあでも見るよ。あと残りのグラトニーはワタシたちがやるよ。松下指揮官は彼女たち連れて基地に帰るネ」

「いいんですか?」

「今回は討伐と実戦訓練をしにきた。他のメンバーたちも戦闘慣れしてもらわないといけない。腕つけないと生き残れないヨ。だから帰っても大丈夫」

「そうですか……わかりました」


 リーユェとの共同戦線は行われず、トラノスケたちは今日の任務を終えることとなった。グラトニーは討伐することができた。怪我人はいない。電流で倒れている人はいるが。

 ホバータンクにリオ達を乗せて基地へと戻っていく。


(なんだろう……自分の小隊に不安が……)


 実力は間違いなくある。あの数のグラトニーを一方的に倒していったのはこの目で見た。彼女たちの戦闘能力は凄まじいものであるのはゆるぎない。

 だが今回の問題行為と他の小隊のあの反応。そこに不安を抱く。

 第00小隊には何か自分が知らないことがあるのだと確信した。

「あの首輪、ちなみに昔は……おっと話すべき内容じゃないね」

「もっと物騒なもの仕掛けられていたのです⁉」

「あーあれね、睡眠薬ネ。よく寝れるよ、うん」

(電流よりは物騒ではないような……まあ危ないものではあるが)

「まあ、睡眠薬もあの首輪の中にあるんだけどネ」

「適当ですね」

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