導く者たちの実力を見て
緊急で地上でのグラトニー討伐に向かうこととなった第00小隊。
リオ達はすぐさま準備に取り掛かる。
宿舎の中にある自分たちの武器やサポート用道具を保管している大型ケースの前に立ち、ガラスの液晶に触れて武器を選択する。
「指揮官さまへのアピールタイムですね!」
「どうでもいい。さっさとグラトニーを殺しにいく」
選択を終えると彼女たちがそして上着を脱いで、個室に入る。そして地面に書かれたわっかの中央に立つと、そのわっかが宙に浮き、足元から彼女たちの身を守る特殊ボディスーツが装着されていく。
そしてその個室から出るとケースの扉が開いて自分が装備する武器が現れた。
「狭い場所、苦手なのよね。いつもなれないわ」
「じ、自分たちで着るより早くすみますから……」
各隊員、武器を手に取り準備万端。
地上用エレベーターに乗って、
「さあ皆さん! 指揮官さんに心配されないために一生懸命頑張りましょうね~」
「全員乗ったな。では地上へ向かう」
グラトニーたちがいる地上へとエレベーターが起動して上昇していった。
一方、宿舎に残されたトラノスケは不安の表情で空中液晶に映る隊員たちを見ていた。
「よく見ろと言われたが……本当にこの場に残っていいのか?」
隊員たちだけ行かせて自分はのこのことこの場所で残っていていいものか。そんなことを考えていると、ガンドレッドから再び声が。
『彼女たちが心配か?』
「か、賀茂上司令官」
『心配なのはわかる。だがそれでも今は見に徹するべきだ。君が地上に出てもやることはあまりない』
「……わかりました」
『新人の隊員が無茶をするもんじゃない。こちらも今日入隊したばかりの指揮官を死者にするわけにはいかないのでな』
賀茂上の言葉に頷いて液晶に視線を戻した。
(隊員の皆の無事を信じるしかないか)
「それに――彼女たちの実力ならば楽に討伐できるだろう」
自信満々に賀茂上はそう告げた。トラノスケを安心させるように。
地上エレベーターに乗って地上にいるグラトニーを討伐しに行く第00小隊の隊員たち。手にはそれぞれの武器が。
「各隊員! 準備はいい?」
「だ、大丈夫です!」
「問題なし! であります!」
「こっちも。早く戦いたくて体がうずうずしているわ!」
「戦闘も治療も準備できていますよ」
エレベーター内、隊員たち、武装の確認。戦闘準備が全員できていることを確認して、
「戦闘は個人の判断で任せる! 第00小隊! 出るぞ!」
「いつも通りってわけね!」
「わかりました!」
エレベーターの扉が開いた瞬間に走り出す。
ターゲットは近くにいる。
六本の足で地面を徘徊しながらエレベーター付近に向かっているグラトニーを見つけた。
「蜘蛛のタイプ、『タランチュラ』か」
「見た目は機械みたいですねえ」
「ほ、他の小隊は?」
「他の場所で戦っているんでしょ。心配しないの」
「一気に片を付ける」
走りながら前にいるグラトニーに発砲。全力で走行しながらも的確に狙いを定めて、引き金を引く。ビームの弾幕は目の前にタランチュラに命中。それも多くの敵に無数の風穴を開けていった。
『ギシャアア‼』
目の前から襲ってくるビームの弾幕に恐れながらも、胴体についている法大のようなものから灰の結晶を弾丸として飛ばして反抗してくる。まるでクモが糸を飛ばしているような感じで結晶を飛ばしてくる。
「――芸がないな」
鋭くとがった灰結晶をリオはジャンプしてかわしつつ空中で回転しながら射撃。激しく動いているものの狙いは外さず敵の体中心に当てていった。どんな体勢でもリオは針の糸を通すかのように正確に相手に風穴を開けていく。
曲芸じみた動きから放たれる射撃にグラトニーは対応できず、一方的な攻撃でリオは敵を殲滅していく。
「あ、当たって!」
「さっさと倒していきましょう!」
イチカとツムグもリオに続こうとビーム弾を発射。イチカはアサルトビームライフルで相手に標準を合わせて引き金を引き、ツムグはビームピストルで的確に敵の中心を狙って撃つ。彼女たちの攻撃でリオの周囲の敵を減らしてサポートしていった。
「平泉さん! 半分しか当たっていませんよ!」
「み、皆さんがほぼ十割当てるのが異常なんですよ! いくら武器に射撃サポートシステムが搭載されているからって……」
「あんなに敵がいるから当てれます!」
さらにツムグは腰から小さい棒のようなものを取り出す。すると短いビームの刃、ビームナイフだ。
「敵を倒す! グラトニーを倒す! 指揮官さまの命令は絶対! なので倒れてください!」
ビームピストルでタランチュラの手足を撃ち抜きながら、ビームナイフで頭に突き刺してトドメを刺す。それを迅速に行い、確実に葬っていった。
「な、なんでそんな簡単に接近戦できるですか……怖いでしょう!」
「細切れです!」
「ヒュー、やるわね。さあ、かかってきなさい! すぐに眠らせてあげるから!」
周りの活躍にマリも高揚し、左手に翡翠色の半透明の盾を展開、右手に短い棒を持って強く握りしめると高熱の刃が現れる。
ビームシールドとビームソードだ。
「――どきな!」
ビームシールドで敵陣に突っ込んで、そのまま回転切り。周囲のグラトニーを真っ二つにした後、遠くにいるタランチュラ目掛けて、
「燃えろ!」
チャージしたビームソードでの突き出し。すると刃からビームの斬撃が飛び出して数体のグラトニーたちを貫通していく。ビームソードというビーム兵器だからこそできる剣の射撃。
それらを飛ばしていって瞬く間にタランチュラの息の根を止めていく。
『ギシャ!』
だがやられてばかりではいられないグラトニー集団。
距離を取って灰結晶の射撃弾幕を形成しようとする。
「――わたしもいますよ~」
だがその前に、一筋の光がグラトニーたちの体を削っていった。
エレベーターの入り口からしゃがんで射撃体勢を取っているエリナ。彼女がいる場所は地上エレベーターの屋上。スコープ越しに相手に狙いを定めている。手に持っているビームスナイパーライフルの引き金を引いて高熱の光線が次々とグラトニーたちを貫いていく。
「今回はケガしている人はいませんね。なら狙撃に集中できますよ」
味方の様子を確認しながら敵をどんどん射抜いていく。
第00小隊が次々とグラトニーたちを蹴散らしていき、
『――こちら、第04小隊隊長。周囲のグラトニーの反応なし。応援、感謝します』
違う部隊の隊長が第00小隊にそう言ってきた。
グラトニーとの戦闘は終わったようだ。
「殲滅、確認」
「よ、よかった……生き残れた……」
「指揮官さまの命令通り! 終わらせましたよ! 見てましたか!」
「もう終わり? 不完全燃焼ね」
「皆さん、ケガなく終われてよかったです~」
結果を見れば、あまりにも一方的な戦い。いや、これは戦いではない。虐殺と言っていい。
それほどまで第00小隊がグラトニーを鮮やかに討伐していった。驚異の侵略者を一方的に屠っている。
「す、すごい! 圧倒的じゃないか!」
トラノスケも彼女たちの活躍に心の中に合った不安はもう消えていた。
(そういや、前の時だって白神も一人で大量のグラトニー相手にして一方的な戦いをしていた。この小隊のメンバーは皆実力が高いメンツ!)
この第00小隊は少数精鋭のメンバーなのか。
それなら少ないメンバーなのも納得できる。
「任務、完了。指揮官、不安は消えた?」
ガンドレッドの通信端末からリオの声が聞こえた。
寅之助は素直に思ったことを答えた。
「あー、消えてはないかも」
「…………なぜ?」
「自分が皆をうまく指揮できるかどうか、そういう不安ですよ」
「大丈夫。不安だったら何も指示を出さなくていい。私一人でやる」
「いや、小隊なんだから……」
「問題ない」
実力は間違いなくある。だがやっぱりこの小隊を導いていけるかどうか不安が強くなっていった。
「兄さん、今日指揮官になったけど大丈夫だった?」
「普通に大変だ。訓練だけでなく女性隊員にも気を使わないといけないから」
「ふーん……大人の女性に囲まれて羨ましい~」
「お前、職場で自分の作業場で、自分以外イケメンかハンサムの男性で囲まれたらどうよ」
「ごめん、それすごい気を使う。兄さん大変だね」